上 下
95 / 120
第4章 樹聖エルフ王国編

第95話 再突入

しおりを挟む
 ジェネラルアントが出てきた所を探せばいいのだから、大きいハズレの木を探せば良い。

「リンナ、ハズレの木を探してくれ。特大のだ」
「ちょっと待って」

 リンナは樹にするすると登ると辺りを見回した。
 下りて来て指を差した。

「この方向に500メートラ行った所よ」
「そうか、よく遠くのハズレの木が分かるな」
「樹は葉の濃淡と枝のつき方が種類によって違う。そこで見分けるのよ。葉の形は遠くでは分からないから」
「薬師ならではの技って事か」
「ええ、子供のころ沢山、修行したわ」

 リンナの案内で到着した木は幹回り20メートラはあった。
 これなら大きい巣に繋がっていそうだ。

 風魔法で幹に穴を開け中に入る。
 蓋をしている根っこ部分の境目にナイフを入れ蓋をゴーレムに持ち上げさせた。

「さあ行くよ」
「ええ」

 縄梯子を垂らし穴に突入した。
 穴に入るとむっとする熱気とキノコの香りがする。
 照明を点けて下り坂を進んだ。

 キノコの生え方が尋常ではないほど多い。
 行けども行けどもキノコの通路だ。
 もの凄い数のミリタリーアントがいることが予想される。

 出会うワーカーアントを始末しながら、どのくらい下に下りただろう。
 開けた空間に出た。
 そこはまるで水晶の宮殿だった。
 照明の灯りを反射してキラキラと光る。
 その光が変化した。

 見ると2メートラ程の水晶で出来た甲虫がいる。
 こいつもミリタリーアントと共生しているのか。

 後からくる兵士の為に倒す事にする。
 まずは死魔法だ。

 魔力ゴーレムが飛んで行って弾かれた。
 ジェネラルアントだけの得意技って訳じゃないのか。

「リンナ、離れてて」

 そう言って俺は銃魔法を放った。
 弾丸は体表で弾かれて跳弾になる。

 次に風魔法を放った。
 風魔法は甲虫の体表で消えた。
 この感じは魔力結晶だな。
 こいつの餌は魔力結晶か。

 こうなったらスライムゴーレムを纏わり着かせ物理で止めを刺すしかないな。
 桶を出してスライムゴーレムを出撃させる。
 トレントゴーレムや魔力結晶ゴーレムも同時に出撃させた。
 甲虫は風魔法を使うようだ。
 トレントゴーレムが一瞬で細切れになる。
 仕方ないトレントゴーレムは下げよう。

 スライムゴーレムは切り裂かれても水みたいな物だから致命傷にはならない。
 魔力結晶ゴーレムには魔法は通用しない。
 スライムゴーレムがとりついて甲虫は段々と動きが鈍くなる。
 魔力結晶ゴーレムの一撃が関節を砕いた。

 それからは一方的だった。
 外殻の隙間に剣を差し込まれて最後は首を落とす事に成功した。

 これだけ水晶があるのなら、魔力結晶を増産する手だよな。
 おっ、ソルジャーアントの団体が来たな。
 ワーカーアントを殺しすぎたか。

 ソルジャーアントに混じって胴体が樽みたいで口が尖っている奴がいる。
 吸血してくるのかな。
 魔力結晶ゴーレムで押し寄せてくるソルジャーアントの相手をする。
 口の尖った奴が液体を飛ばしてきた。
 そうか、後衛か。
 シューターアントと呼ぼう。

 驚いた事に魔力結晶が溶け出した。
 これは不味いな。

 俺はその場にある普通の水晶でゴーレムを作り出して次々に送り出した。
 持久戦なら魔力が無限に使える俺の敵じゃない。
 魔力ゴーレムが土魔法で盾を作って護衛。
 銃魔法も活躍。
 程なくしてソルジャーアントとシューターアントの一団は地に伏した。



「リンナ、急いでいる所、悪いな。この水晶を採掘する」
「私もどうしたいかその間に考える」
「まだ女王の部屋まで先は長いと思う。沢山、考えると良いよ」
「聞いて。今回の件は生存競争なの。そこに人間らしい思惑など無いわ。だから、ヴァレ兄はそれに巻き込まれたってのは分かるのよ。でも、ミリタリーアントさえ居なければっていうのも思ってしまうわ」
「難しいな。自然を相手にするのは」
「自然災害でヴァレ兄が亡くなってもきっと自然災害を憎んだと思うわ」
「それは仕方ないよ」
「折り合いをつけるべきなのかも」
「俺はヴァレオさんの嘘つきのレッテルを剥がせたら良いと思うよ。命を賭けて警告したのに嘘つき呼ばわりは許せない」

「それはもちろん許せない。でもミリタリーアントがもっと許せない」

 採取しながら話はループする。
 リンナは何故かソルジャーアントを捌いて内臓を採取している。
 その手つきはぎこちない。
 リンナは折り合いをつけるのを戸惑っているようだ。
 俺にもっと人生経験があればな。
 俺としてはミリタリーアントを殺すのを生き甲斐にする人生でも良いと思ってしまう。
 ただ虚しいだろうなとは思う。
 ミリタリーアントを許したらどうなるのかは分からない。
 どちらにしろリンナが答えを出すべきだ。

 足音がして灯りが水晶をきらめかせる。
 兵士の一団が入って来た。

「お前達どこの隊だ」

 兵士が問い掛けて来た。

「俺達は冒険者だ」
「ゴーレム使いとはちょうど良い。この先に冒険者が捕らわれている。救出に協力しろ」
「どういう状況だ」
「部屋を一つ制圧したのだが。そこに仮死状態の魔獣と冒険者が詰め込まれていた」
「俺は何を手伝えば良い」
「ゴーレムで人々を地上に運んでくれ」
「分かったよ。ゴーレムを沢山作るから少し待ってくれ」

 水晶を魔力結晶に加工して、ゴーレムを百体補充。

「凄いなこんなに沢山のゴーレムを一度に操れるとは。有名なのか」
「国ではSランクだ」
「流石だな。頼んだぞ」
「おう」

 救出の準備は整った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...