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第3章 貴族活躍編

第64話 ユフィアもらわれる

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 孤児院に行くとモリーが一人土いじりをしている。
 らしくないな。
 元気に遊びまわってるイメージだったんだが。

「よう元気か」
「うん、元気だよ」

 答えるモリーの顔はさえない。

「ちっとも元気そうじゃないんだが」
「ユフィアがね。養子に引き取られたの。でも手紙がこないの」
「じゃあ、様子を見に行けば良い。王都に居るんだろ」
「駄目なの。もらわれた先はお屋敷で門番に追い返されるから」
「そうなのか。俺が調べてやろうか」
「お願い」

 俺はモリーから聞いてもらった家の調査を開始した。
 やった事はゴリオットの店で評判を聞いたたけだが。

 分かったのはもらった家は男爵家で貴族派に属しているそうだ。
 とりあえず所悪い評判はない。
 近々伯爵子息の婚約者候補を決めるパーティが開かれるとかでそこに出席するらしい。

「聞いてきたぞ。パーティに行くかもしれないから、モリーも行ってみるか」
「行く、行く、ゴブリンの群れ突っ切ってでも行く」



 パーティの日になりモリーを着飾らせてパーティに馬車で乗りつけた。

「招待状を拝見します。サンダー準男爵ですか。お連れの方は?」
「妹だよ」
「失礼いたしました。お入り下さい」



 会場に入りユフィア探す。
 人ごみで探すのは大変だが、魔力視を使えば色で探せる。
 ユフィアの色である桃色の魔力を見つけた。

 中年の夫婦に連れられユフィアは笑っている。
 とりあえず幸せそうだな。

 モリーを見ると泣きそうな目でユフィアを見ていた。

「話し掛けないのか」
「うん、もう良いの」
「そうか」

 俺は料理のコーナーに行き、料理を味わう。

「そんなにがっくりするなよ。手紙が来ないのだって手違いって事もあるだろう」
「……」



 ユフィアを連れていた父親が俺の前に現れ挨拶を述べる。

「サンダー準男爵ではありませんか。ロディス男爵です。一度あなたと話したかったのです」
「そうか。連れがユフィアに手紙をだしたけど返事がこない。何か知っているか」

 なんとなくロディス男爵に胡散臭い物を感じて返答がぶっきらぼうになってしまった。

「孤児だった過去など捨て去った方が良いと思いませんか」
「俺はそうは思わないが。過去なんてもんはいつか追いかけてくるもんだ。俺は奴隷だった事も恥だと思っていない」
「とにかく貴族には対面が必要なのです。あなたとは意見が合いそうにありませんな」
「話はそれだけか」
「あなたが良ければユフィアを妻にと思ったのですが、どうやら見込み違いらしいですな」

 俺への取り込み工作なのかな。
 貴族派の陰謀が疑われる。
 ユフィアが人質って事はないだろうな。



 ロディス男爵が去るのを見てモリーに声を掛ける。

「俺は少しやることができた。料理は喉を通らないかもしれないが、暇を潰しておいてくれ」
「うん」

 俺は迷彩スキルを発動してロディス男爵の後をつける。
 ロディス男爵は人気のない場所に行き、給仕の男と何か喋っている。
 近寄り会話を聞く。

「ふっ、サンダー準男爵も大した事がないな。てっきり謀がもれたのか思ったぞ」
「では手はず通りにという事で」
「わしの手駒のユフィアが子息の服にジュースを掛ける」
「ではその隙に毒を」
「ああ、絶対に王子を暗殺するのだ」

 馬鹿だな謀は今漏れた。
 ロディス男爵が捕まるとユフィアが心配だな。
 犯人を取り押さえて、ユフィアの連座を阻止する手だろう

 俺は迷彩を掛けたままユフィアに近づき持っていたジュース凍らせた。
 ユフィアは何も知らずに子息の所に近づいて行く。
 たぶん、交際するきっかけを掴むのは普通の事では駄目、インパクトが大事だから服にジュースを溢してやりなさいなんて言われているのだろうな。
 ユフィアはつまづく振りをしてジュースの入ったグラスを傾けた。
 しかし、凍ったジュースは服に掛からない。

 俺は先ほどの給仕が小瓶を取り出したのを見て手を捻り上げた。

「暗殺者だ」

 急に現れた俺を見て王子の護衛が殺気立つ。
 護衛は俺に武器を向ける。

「違う違う、この瓶を持った男が暗殺者だ」
「構わない。両方捕まえろ」

 王子が命令を下し、俺と男は逮捕された。



 伯爵家の部屋に通され五人の護衛の囲まれる。

「さて、聞かせてもらおうか」

 護衛の隊長らしき人に凄みを効かせて言われた。

「えーと、その前に連れの女の子を孤児院まで送ってやってくれ」
「その女の子も確保しろ」

 護衛が一人部屋を出て行った。
 あー、モリーすまん。

「早く知っている事を喋れ」
「事の始まりは孤児院の女の子が引き取られて音信不通になったんだ。それで親のロディス男爵に不信を覚えて後をつけた」
「黒幕はロディス男爵なんだな」
「その通りだ。ロディス男爵の引き取った女の子を今回の手柄に免じて処分なしとか出来ないだろうか」
「その辺は王子に具申しておこう」

「すいません。連れの女の子が暴れて捕まりません」

 さっき出て行った護衛が戻り、隊長に報告した。

「仕方ないな。説得してくれ。変な事をするなよ」
「分かってる」

 俺が現場に行くと、モリーはアザや引っかき傷をこしらえていた。
 テーブルでゴーレムを作り奮闘しているようだ。
 ゴーレムの武器はテーブルの足だ。

 護衛は剣を抜いていない。
 気を使ってくれたのだな。

「モリー、良いんだ。大人しく捕まってくれ」
「この人達、悪いやつらじゃないの」
「悪い奴はもう捕まった」
「兵隊さん、ごめん」

 モリーも無事捕まり、俺達はその日のうちに釈放された。



 ロディス男爵は全て白状した。
 今回の件はユフィアが捕まった場合は俺の関与をほのめかす予定だったらしい。
 ロディス男爵より上の黒幕は捕まっていない。
 なぜなら暗殺の計画は覆面をした貴族派の集まりで言い渡されたものだそうだ。
 誰の発案か分かっていない。
 敵も用心深いものだ。

 孤児院がやっている店に数日後行くと。

「いらっしゃいませ」

 ユフィアが元気に売り子をしていた。

「ユフィア、養子の件、残念だったな」
「いいの、なんとなく愛されていなのは分かっていたから。縁がなかったと諦める」
「孤児院のみんなはこの先、俺が養子の先を手配するように院長に言っておいた。だから、今回のような事はもう起きないと思う」

 モリーはというとそこら中に絆創膏を貼って元気に料理を担当していた。
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