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第2章 Sランク成り上がり編

第38話 Bランク試験

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 幾日か時間は過ぎ、今日はBランク試験の日だ。
 朝の冒険者ギルドに行くとティルダが居た。

「ティルダ、おはよう。依頼か何かを探しているのか」
「へへーんだ、私はBランク試験を受けるのよ」
「俺と一緒だ」
「そうなの、今日はライバルね」
「お手柔らかに頼むよ」



 依頼を見て少し暇を潰していると、ギルド職員と思われる男が声を張り上げた。

「Bランク試験のやつはこっちに来い」

 俺は言われた通りにゴーレムを五体引き連れ合流した。



「試験官のブラハードだ。注意事項を言う。聞き流すと死ぬからな耳をかっぽじってよく聞け。これからオークの領域でソロで魔獣と戦ってもらう。敵わない時にはギブアップしろ。魔獣を倒せたら戻ってきて真偽官と面接だ」

 なるほど、真偽官が出てくるのか。
 犯罪暦などを調べるのだろうな。

「よし、くじを引け。その順番通りに出てきた魔獣と戦ってもらう」

 俺は棒を引き、書いてある数字を読むと、四の数字が書いてある。
 死の数字だとライタがつぶやく。
 今日は何時もより慎重にいく事にしよう。



「俺が一番だ」

 見るからに駆け出し冒険者の少年が嬉しそうに試験官に告げた。

「拙者が二番でござるな」

 二番手は幾つも傷のある鎧で馬鹿でかい大剣を背負った戦士だった。

「私が三番ね」

 ティルダが自信ありそうに名乗り出た。

「俺が最後だ」

 そう言って俺はくじを試験官に渡した。

「それでは、急ぐぞ。あまり時間を掛けると日が暮れちまう」

 試験官に促され俺達はオークの領域に向かって出発した。
 元ゴブリン森、今は開拓地を抜けオークの領域に入る。



 魔力視が魔獣を捉える。
 この反応は大物だな。
 一番手は駆け出し少年だが、大丈夫だろうか。

 ゆったりと歩み出たのはソードタイガーだった。

「おい、一番手の少年。出番だ」

 試験官がそう言うと少年は後ずさって俺達の後ろに隠れた。

「無理、無理、ギブアップします」
「しょうがねぇな。手本を見せてやる。筋力強化、俊足」

 試験官は手に持った剣であっと言う間にソードタイガーの首を切り裂いた。
 おー、一撃だ。
 試験官は元Aランクなんだろうな。



 俺達は更にオークの領域を進む。
 今度の反応は複数だな。

 出てきた魔獣の群れはウインドウルフだった。

「やれるか? やれるなら、とっとと行け」
「行くでござる」

 戦士は群れのど真ん中に突っ込んで行った。
 撃たれるウインドウルフの風魔法をヒラヒラとかわしながら大剣を振るう。

 徐々にウインドウルフは減って行った。
 半数がやられると捨て台詞を吐く様に遠吠えを上げ引き上げて行く。

「よくやった、合格だ」
「かたじけない」



 今度、魔獣が出てくるとティルダの番だ。
 楽な魔獣が出てくるといいな。

 次の魔獣は大物だ魔力視で捉えるより早く接近が分かった。
 この足音はオークだ。

 オークは大剣を手に持っていた。
 オークが持つと大剣も普通の剣のサイズに見える。

「よし、お嬢ちゃん行きな」
「はい、やります。俊足、斬撃強化」

 スキルを掛けてティルダはオークに突っ込む。
 オークは大剣をなぎ払うが俊足を掛けているティルダは余裕でかわしてみせた。

「魔力放出!」

 ティルダの魔導剣は炎を吹き出しオークのスネを一撃で断ち切った。
 足を一本、断たれたオークは転がる。
 すかさず、ティルダは頭に止めの剣を突き入れた。

「見事だ。合格」
「やったよ。これでBランクなのね」

 試験官の声にティルダは尻尾をピンと立てた。



 次はいよいよ俺の出番だ。

 魔力視に捉えたのはのろのろと進む速度からスチールビートルと推測した。
 こいつは何回かやったから余裕だ。

 出てきた姿はやっぱりスチールビートルだった。

「ゴーレム使い、出番だ。出来なければギブアップするんだな」
「大丈夫です」

 ゴーレムに強打スキルを使わせ、足の関節を狙う。
 剣はパキと乾いた音を立て足を砕いた。

 一分も経たない内に止めを刺す事が出来た。
 はっきり言って楽勝だ。

「合格だ。五体のゴーレムを操るだけでも凄いが、スチールビートルの足をスキル無しで砕くとはな」

 スキルを使っているよとは言わない。
 切り札は秘密にしないとな。

「ありがとう」



 俺達は不合格になった一名を除いて意気揚々と冒険者ギルドに引き上げた。
 さて、面接だ。
 会議室に案内されそこには男が二人いた。

「では始める」
「よろしくお願いします」

「真偽鑑定、犯罪を犯した事は?」
「ありません」

 真偽官がもう一人の男に小さな声で結果を告げると男はなにやら紙に書き込んだ。

「真偽鑑定、闇ギルドに所属した事は?」
「ありません」

「真偽鑑定、これから犯罪を犯す予定は?」
「ありません」

「結果は合格だ。ギルドカードを更新しておくように」



 俺は窓口でギルドカードを渡し、更新を待った。

「フィル君、おめでとう」

 フェミリさんが俺の所に来てギルドカードを差し出し祝ってくれた。

「ありがとう、それで少し相談が」
「何かな」
「諜報に使えそうなスキルを見たいんだ」
「見てどうするの」
「使えそうだったら、そのスキルを持っている人を探して仕事を頼む」

 俺が覚えるとは言わない。
 スキルを覚えられるのは秘密だ。

「犯罪でなければ協力もできるけど」
「ある犯罪の証拠を集めたい。だけど、その行為はどうだろう。俺は許されると思うが」
「うーん、ギルドとしては微妙ね。手伝ってあげたいけど、スキルを見せてあげる事しかできないようだわ」
「それで充分だ」
「じゃあ、ついて来て」



 ギルドの奥に案内され、そこにフェミリさんの他に覆面をした二人の男が入って来た。

「今空いている諜報員はこの二人だけよ」
「自己紹介はしない。俺達はギルドの諜報員だからな。忙しいので手早く行く、集音。このスキルは音を集める」

 空気の振動を魔力で捉えるのか。
 録音の簡易魔道具にも必要だったから手間が省けた。

「俺のは、吸着」

 もう一人の男がスキルを発動させ、つかまる所のない壁をスルスルと上がって行く。
 こちらは魔力を使い、物と物をくっ付ける力に変換している。
 便利そうなスキルだ。

「ありがとう参考になった」
「気をつけてね」
「俺も死にたくはない」

 さてと、あとは吸光を覚えれば簡易魔道具はできそうだ。
 ギルドの資料室で吸光を調べる。
 ひなたぼっこが好きな老人がよく覚えると書いてあった。
 老人の伝手は思いつかない。
 まてよ、リンナなら薬を扱っているから老人にも伝手があるんじゃないか。
 明日、工房に顔を出してみよう。
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