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第2章 Sランク成り上がり編

第34話 ゴーレム勝負

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 冒険者ギルドに行き伝言の件を確認するとまだ受け取っていないようだった。
 何してるんだティルダの奴。
 禁忌を踏んで粉々になったりしてないよな。
 気がかりなんでスラムに寄ったが、スラムの方にもここ最近顔を出していないみたいだ。
 きっと大丈夫。
 こういう時は何かしていた方が気がまぎれる。

 元ゴブリンの森、今は開拓の真っ最中の広場でスキルのテストをする事にした。
 まずは、魔力操作を使い反発スキルを再現してみると無事に獲得。
 超越者に言う事には魔力を感じなければ大丈夫みたいなので、そこを意識しながら魔力視を使った。

 反発でゴーレムのパワーアップを試そう。
 魔獣の魔力が残っている魔石を変形させて腕輪と足輪を作り、ゴーレムに装着して、反発スキルで動かそうとしたが結果は散々。
 幾分スピードとパワーが増したが、誤差の範囲だ。
 ゴーレムに直接使わせて防御力を高めた方が良いな。

 ゴーレムにスキルを使わせ、魔獣の魔力が入った魔石を投げる。
 魔石は柔らかく当たり、衝突の音も立てずに落ちた。
 スピードを遅くさせずに防御力アップは嬉しい。

 ゴーレムの強化は素材でも出来るけど値段がなぁ。
 有名なのだとミスリルゴーレムとオリハルコンゴーレムだけどもの凄い値段なんだよ。
 特にオリハルコンゴーレムはその金があれば城が建つと言われている。
 当分はトレントゴーレムで我慢だな。

 次は貫通スキルだな。
 魔力操作を使い剣に貫通の魔力を纏わせる。
 転がっていた切り株に突き入れると剣は10センツほど刺さった。

 よし、せっかくだから、加速砲の強化だ。
 貫通スキルを加速砲の弾丸に掛けるぞ。
 魔力ゴーレムを並べまだ伐採されてない木に向かって加速砲を撃つ。
 木をくりぬきながら砲弾は進み見えなくなった。
 やばい、進路上に人がいたりしないだろうな。
 これは完全に奥の手だな。
 切り札として温存しておこう。



 冒険者ギルドに顔を出し、フェミリさんの窓口に行き話し掛ける。

「俺が出した伝言なんだけど、相手には受け取ってもらえたのかな」
「いま調べるわ」

 フェミリさんは席を離れて調べに向かった。
 しばらくして帰ってきて口を開く。

「受け取ったわよ」
「よっしゃあ」

 思わずガッツポーズを取ってしまった。

「恋文でも伝言したの」
「いや、そんなのじゃ」

「隠さなくても」
「もういいよそういう事でも。ところで、何か情報がある?」

「毒使いのね。最後のは毒ポーションだったわ」
「へぇ、毒のポーションも作れるんだ」
「薬師ギルドでは禁止されているわ。もちろん、この国の法律でもね」
「闇ギルドらしいな」

「作った人間は捕まえたから安心して」
「仕事が早いんだな」

「そうね、ギルドの諜報員は優秀だから。いきなりだけど、あなたBランク試験を受けなさい」
「依頼ほとんど受けてないけどいいの」
「良いのよ、Fランクで試験を受けにくる者もいるわ」

「何で俺に勧めたの」
「Bランクは盗賊討伐とかの仕事も回ってくるから、殺人の許可証みたいなものね」
「俺が毒使いを殺したのでそうなったと」
「罪状鑑定をどうやってすり抜けているのか分からないけど、Bランクになりなさい」
「分かった。試験、受けるよ」
「予約を入れておくわよ」
「了解」



「お前が凄腕のゴーレム使いか。俺と勝負しろ」

 いきなり後ろから声を掛けられた。

「いきなりだな。勝負してなんの得が」

 俺は振り返り言った。
 そこには二十代ぐらいの若い男が立っていた。
 男は明るい茶色の髪で格好はすらっとして、もてそうな顔つきだ。

「俺の名はケネス、Aランクだ。ゴーレム使いでは一番の腕だ。俺に勝てればゴーレムマスターの称号を譲ろう」

 自分で一番だと言っているよ。
 自意識過剰な人かな。
 確かに後ろに引き連れたゴーレムのあの輝きはミスリルだろうけど。
 どうなんだろうね。
 それにゴーレムマスターの称号なんていらないな。

「勝負をやらないと、どうなるんだ」
「その時は勝負するまでつきまとってやる」

 うわ、めんどくさいのに捕まったな。
 しょうがない、一度だけ勝負してやるか。

「一度だけだぞ。勝っても負けても再戦はなしだ」
「南の草原で一時間後だ。準備万端で来い」

 俺はトレントゴーレム五体をお供に勝負の場に向かった。
 南門から出た所で冒険者の人だかりが見える。
 暇な冒険者が観戦に集まったようだ。

「逃げずに来るとは大した度胸だ。ほめてやる」
「さっさと始めるぞ」

 俺はめんどくさくなり、うんざりした口調で言った。



 門から少し離れた所に移動して、勝負の舞台は整った。

「いいな、術者は狙わないゴーレムとゴーレムの勝負だ。始め!」

 ギャラリーから冒険者が一人、進み出て声を発した。

 さて、どんなミスリルゴーレムはどんな感じなのだろう。
 初手はゆずってやろう。

 ミスリルゴーレムは片手を突き出すと火球を放った。
 えっ、魔法。魔法もありなの。
 それならと魔力ゴーレムに土魔法を使わせ火球を防いだ。
 土魔法の盾に当たり火球は轟音を響かせた。

「なんで、トレントゴーレムが魔法を使える!?」

 ケネスは非常に驚き怒鳴った。

「使えるものは使えるんだ」

 俺は冷静に返した。

 ミスリルゴーレムは次々に火球を放つ。
 お返しにこちらも火球を放った。
 五対一なのに火球はミスリルゴーレムにかすりもしない。
 一番の腕と言うだけの事はある。

「おかしいだろ。五倍の魔力消費なのに、こちらが先に魔力がなくなるなんて」
「さて、どうしてでしょうね」



「くそう、こうなれば接近戦だ」

 ミスリルゴーレムはミスリルの剣を構えトレントゴーレムに迫った。
 動きはトレントゴーレムより遅いな。
 貫通のスキルを掛けた鋼鉄の剣をトレントゴーレムはミスリルゴーレムに突き入れた。
 かわされたが一体はかわせても五体の包囲攻撃からは逃れられないだろう。

 ミスリルゴーレムは散々にスキルの掛かった鋼鉄の剣を突き入れられ動かなくなった。

「勝負あり。フィルの勝ちだ」

 冒険者の群集がざわめいた。

「なんで、鋼鉄の剣がミスリルに刺さるんだ」
「ああ見えて、特殊な加工がしてある」

「俺はあきらめん。ゴーレムマスターの称号は一時預けておくが。次に会った時は取り返してやる」

「おい、おい、約束が違うぞ」
「俺は承諾していない。南の草原でと言っただけだ」
「手を抜いて負けてもつきまとわれそうだ。分かった勝負してやる。但し、月に一回だ」
「分かった」

 今回の勝負で分かったのは魔導金属を使えばゴーレムも魔法を使えるって事だ。
 まあ、俺には必要ないけど。
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