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第2章 Sランク成り上がり編

第31話 薬草人工栽培を依頼

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 馬車を走らせる事、八時間あまり着いたフェリライト村は相変わらず片田舎の雰囲気を漂わせていた。
 広場に停車すると、村人が寄ってくる。

「ポーション下さい」
「ごめんね、行商じゃないのよ」

 マリリがポーションを買いに来た子どもに謝っていた。

「行商の数が最近減ったから、喜んで出てきたのに」
「ここら辺も魔獣が多くなったのかな」

 俺は村人に話し掛ける。

「そうなんだよ。怪我をした行商の人もいるらしい」

 魔獣の数が増えているんだろうな。
 たぶん魔力が濃くなったのだと思う。
 一地域の問題ではなく世界規模だとすると大問題だな。
 超越者はどう考えているのだろう。
 一人のゴーレム使いの考える問題ではない気がする。



 村人が散ったので、村長宅に挨拶に行く。

「ルパートさん、いらっしゃいますか」
「みなさん、よくおいでになりました」

 マリリの声にルパートが奥から出て来て答える。

「お久しぶりです」
「フィルさんだったかな、いらっしゃい。後の方は初めてですな」
「セシリーンだ。よろしく頼む」
「初めまして、チェルといいます」



「今日は商売の話でお伺いしました」
「ほう、商売ですか」

 挨拶も終わり、マリリとルパートの商談が始まった。

「薬草を育ててみませんか」
「薬草は栽培出来ないと聞いていますが」
「その事は解決済みです」
「本当ですか。それなら、小規模なら試すのはありでしょうな」

 細かい条件等の刷り合わせが始まり、なんとか畑一枚で試して貰える事になった。



「ろくなおもてなしも出来ませんが泊まっていって下さい」

 その一言で俺達一行は村長宅へ泊まる事した。

 食卓を村長四人と俺達四人で囲む。
 決まり文句を唱えて食事を始めた。

「今日新しくみえたお二方は何をしておられる方なのかな」

 ルパートがセシリーンとチェルに話し掛けた。

「聖騎士を賜っている」
「ゴーレム使いです」



「聖騎士がお見えになられるとは光栄ですな」
「そんなに大層なものでもないのだが」
「ご謙遜を。枢機卿でも断罪する権利をお持ちとか」
「それは確かにあるが簡単には使えない権利だ」

 良い機会だ超越者について聞いてみよう。

「超越者様について聞きたいんだが」
「何を聞きたい」
「普段どんな事をしているのだとか。目的だとか」
「教会内の噂では禁忌を犯した者がいると察知して情報をもたらすと聞いた。そして、何かを探していると言われているな」

 禁忌を察知するのはスキルに何か細工がしてあるのだろう。
 探すって何を、ライタじゃないよな。
 ライタならこの前、会った時に把握したはずだ。
 貴重な物でも探しているのかな。

「禁忌を犯した事が罪にならないのはおかしいと思わないか」
「私もそう思うが、一説によれば禁忌は警告なのだと」

 警告するぐらいならスキルの不具合を直せと言いたい。
 スキルの不具合を直さない事に意味があったりして。
 まさかな、情報がもう少し揃ったら考えてみよう。



「僕、聖騎士がどれだけ強いのか見てみたい」

 孫のパリオが口を開いた。

「武は誇る為にあるのではなく弱者を守る為にあるのだ」
「なんか、かっくいい」

「孫がすみません」
「子供は生意気ぐらいがちょうどいい」

 女同士の方が会話が弾むのか、村長夫人と孫娘とマリリとチェルは料理の話で盛り上がっていた。
 俺が冒険譚をいくつか披露して夕食は終わった。



 真夜中、カンカンと言う鐘の音で目が覚める。
 火事なのかな。

 着替えて部屋から出ると丁度みんなも部屋から出てきたところだった。

「魔獣の氾濫です」

 ルパートが俺達に向かって言った。

「マリリさん、出来るかどうか分からないけど、迎撃しましょう」
「そうね。セシリーンとチェルもお願い」
「了解した」
「分かりました」



 俺達が家から出て照明スキルを使うと周りは狼型の魔獣で一杯だった。
 とりあえず、水魔法の粘着を試す。
 水魔法に足を取られ、魔獣の動きは止まる。
 遠距離攻撃は持ってないみたいで、反撃は無い。

 銃魔法で殺しながら前進する。
 チェルとセシリーンは渡しておいた火球カードで攻撃した。
 村に塀とかがあればな防衛も楽なのに。
 そして、魔力視が一際大きな魔力を捉える。

 そちらに向かうと3メートラぐらいの狼型魔獣がいた。
 そいつは水魔法の粘着を振り切り縦横無尽に動き回る。
 水魔法は効き目がないのでやめた。
 それでも遠距離攻撃がなければこっちの勝ちだな。
 接近してきたので土魔法でブロック。
 魔獣は一声吠えると、爪に魔力が集まるのが見えた。
 爪は土魔法を半ば切り裂く。
 止まったところをゴーレムのパイルバンカーが炸裂、魔獣は息絶えた。
 この魔獣がボスだったのだろう。
 他の魔獣は少し経つと引き上げていった。



「この火球カードは便利だな。どこで手に入れた」

 セシリーンが話し掛けてきた。

「懇意にしてる職人が作ったんだよ」
「教会に収めてみないか」

 前は魔道具作る時に禁忌使って作っていた。
 けど、今は回路魔法だから売っても問題ないだろう。
 教会なら変な事には使わないと思う。

「商業ギルドに睨まれないのならマリリを通してなら売るよ」
「分かった。マリリと商談すればいいんだな」



 村の中は騒然としていて、安否を確かめる住人などが出歩いている。
 そして、ルパートは結局朝まで戻ってこなかった。

「おつかれ様」

 俺は帰って来たルパートに声を掛けた。

「被害が建物と家畜だけでよかったよ」
「こんなことは度々あるのか」
「いや、初めてだよ」
「今後は塀や柵を作ったほうが良いのでは」
「そうだね、そうするよ。こうなると薬草の栽培が上手くいかないとかなり苦しい事になりそうだ」



 俺は雑草を畑に植える度に魔力ゴーレムを使い薬草に変異させていった。

「ほう、話半分に来てみたが。本当に薬草が植えてあるな」
「あなたは」

 俺は薬草の目利きが出来るであろう老人に話し掛けた。

「みんなは薬草取り名人って呼んじょる」

「この辺りでも薬草は生えるのか?」
「ああ生えるぞ。価値の低い一種類だけだがな」

「それにしてはよくこの畑の薬草が分かったな」
「昔な、薬草採取で生計を立てとった」
「冒険者だったのか」
「若気の至りじゃ」



 考えてみればポーション職人以外にも薬草を採る人がいてもおかしくない。
 薬草の管理に二三人そういう人が必要だろう。
 なぜなら、ライタの知識によれば、雑草のたぐいは一年中種をつける物が多い。
 薬草が種をつけて、畑にいつしか雑草が紛れ込む可能性は大だ。
 その時に目利きが出来る人間がいると便利だと思う。
 老人を顧問に据えるようにルパートに進言しておいた。

 そして、村での仕事を終え、俺達は帰路についた。
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