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第1章 禁忌活用編

第25話 アジト襲撃

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「みんな集まったわね。始めるわよ。自分の名前が書いてある所に集まって」

 フェミリが説明を始めた。
 俺の場所はと、あった、Dグループだ。

「えー、皆さんはとある拠点を襲撃してもらいます。付いてきて下さい」

 ギルド職員に従って後を付いていく。



「坊主、ゴーレムを五体も操るとは凄いな」

 同じグループの盾を持った歴戦の盾士っぽい人が話しかけてきた。

「いろいろ工夫しているんだよ」

「聞いたか。これから行くアジトは毒使いがいるらしい」

 きっとあの刺客に違いない。

「そんな情報どこで」

「このグループのリーダーとは古い付き合いだから特別に教えてもらったぜ」
「毒使い、厄介だな」
「ギルドで解毒剤を用意しているって話だから、心配するな」
「万が一って事もあるから」
「そうだな、それくらい慎重な方が長生き出来るってもんだ」

 アジトは驚いた事に高級住宅地にあった。
 リーダーの剣士が門番を殴り昏倒させ豪邸に踏み込む。
 うむも言わせず殴って解決か、随分と荒っぽいな。

 家に入った瞬間、玄関ホールで人がバタバタと倒れる。
 中は魔道具の灯りに照らされ明るい。

「いひひひ。毒を喰らわないと思ったら、あなたでしたか」

 俺を襲って来た刺客の姿がそこにはあった。
 刺客は薄い布を目に巻いている。
 フラッシュ魔法対策だろう。
 刺客には陽炎のような気体が纏わり付いていた。

「同じ手は食わない」

 風魔法の空気タンクは機能しているようだ。


「ではこんな手はどうです」

 刺客は毒がついたであろうナイフを投げてくる。
 当然土魔法でブロックした。

 今度は吹き矢を吹いてくる。
 土魔法でブロックした。

 ウッドゴーレム二体を捕縛に向かわせる。

「ぬ、しぶといですね」

 刺客は瓶をゴーレムにぶつけるとゴーレムはなんと溶けて動かなくなった。
 でも、魔力ゴーレムが健在ならウッドゴーレムの二体ぐらい別に構わない。

 焦った様子のない俺を見て刺客は瓶をまた取り出して俺に向かって投げた。
 やらせるかよ。

 ライタに指示して念動で投げられた瓶を投げ返してやった。
 間抜けな事に刺客は自分の毒を浴び、刺客は懐から薬を出して飲み干す。

「中々やります。お次は、いひひひ」

 魔力ゴーレムをこそっと刺客に近寄らせる。
 雷魔法を食らわせる為だ。

「んっ、何か居ますね」

 魔力ゴーレムに刺客が瓶を投げ、当然のごとく瓶はすり抜けた。

「見破られた。何でだ」

「いひひひ、特別に教えて上げましょう。毒霧が揺らいだのですよ」
「もしかして、その毒は魔力がこもっているのか」
「よく分かりましたね。どうやらこの何かは毒が効かないようです。引き時という事ですかね」

「逃がすかよ」

 水魔法の粘着を展開したいところだが、後から来た人間が必死に倒れた人達を救助しているので出来ない。
 銃魔法だと殺してしまう可能性がある。
 銃魔法で気絶させるなんてライタも無理だと言っていた。

 魔力ゴーレム全てを向かわし壁に追い詰めると刺客は壁に瓶を投げる。
 壁は溶けその穴から刺客は逃げて行く。

「私はナドルです。またの対戦をお待ちしております。いひひひ……」

 毒使いとはこれっきりにしたいが、どうもまた会う気がする。



 解毒剤をホールに踏み込まなかった人と手分けして飲ます。
 飲ます用の漏斗まで用意してあるとは用意が良い。
 男同士で口移しなんて見るのもやるのも勘弁して欲しいから良かった。

「油断したぜ。坊主は強いんだな」

 麻痺から回復した盾士が言った。

「あいつとは前にもやりあったから対策はしてた」
「準備は大事だな。もうドジは踏まないぜ」



 部屋を次々と制圧して、メンバーと最奥の部屋に踏み込む。
 あの話し掛けて来た盾士がくの字に曲がった盾と共に飛んで来た。
 そしてその先にはマッチョな男が仁王立ちしている。
 その後ろにはテーブルを横倒しにされ、その影に人がちらほらと見えた。
 その取り巻きと思われる連中は兄貴頑張ってくだせぇなどと声を張り上げている。

 剣士が男に切りかかるが拳で弾かれ、胸に一発パンチを食らう。
 金属の鎧は凹んでいた。

「ぬるいな、遅すぎる」

 魔法使いが火球を撃つがこれも手で払いのけられる。

「俺を討ち取りたかったら、魔法使いもどきじゃなくて、本物を連れて来い」

 武道家がガントレットで殴るが、拳を合わされ砕かれた。

「柔な拳しやがって、俺を満足させられる奴は居ないのか」

 取り巻きが歓声を上げる。

 うわ、これ無敵だろう。
 でも、いっちょ試してみますか。

 魔力ゴーレムをこそっと男に近づけ雷魔法を一発撃つ。
 男は白眼をむいて崩れ落ちた。

「嘘ですよね、兄貴。兄貴が負けるなんて……」

 取り巻きはポカンとそれを眺めていた。
 そして、次々に男達は逮捕されていく。

 ギルドの職員と思われる人が書類を押収していった。
 終わったのか、あっけないな。



「ご苦労様」

 いつの間にかフェミリが現場に来て俺達に声を掛けた。

「ところで、剛腕のドガーをやったのは誰かしら」
「フェミリさん、知らない間に倒れたんですよ」

 一緒に来たメンバーの一人が説明した。
 知らない間に倒れたって事はマッチョ男の事か。
 今更、名乗り出るのも何か格好悪い気がした。
 とぼけておこう。

 どうやら此処は闇ギルドの重要拠点だったらしい。
 色々な証拠が出たようだ。

 その中に俺が裏の賞金首になった書類があった。
 金貨三十枚が俺の命の値段だ。
 安いのか高いのか分からないが厄介な事になった。



「なぁライタ。俺はどうしたら良い」
『強くなるしか無いだろう。漫画では敵を倒すと更に強い敵が現れ、最後のボスを倒すとハッピーエンドだ』
「そうだね、賞金になってやる訳にはいかない」

『とりあえずはウッドゴーレムの強化だな。それから、スキル集めだな。手札は多い方が良い』
「それしかないか」

『それとこの街を出た方がいいかも。人との繋がりが出来れば出来るほど弱点になるような気がする』
「うーん、定住は無理って事か」
『人質にするにしても離れていれば脅迫もしずらいと思う。助けに駆けつけられない欠点もあるけど』
「よく考えてみるよ」



 この街の闇ギルドは支部の一つにすぎない。
 当分、俺に平和な日々は訪れないみたいだ。
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