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第1章 禁忌活用編

第23話 囮

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 家は目立たないが治安の良さそうな区域に建っていて、部屋には家具が揃っている。
 さてと、迎え撃つため罠とかを庭に設置した方がいいのかな。

「ライタ、どうするべきなのかな」
『俺も殺し屋を迎え撃った経験はないから、アドバイスは出来ないな。並列システムを寝てても維持出来るなら、俺が一晩中起きててやるよ』

 それは試した事がないな。
 今夜、寝るときに試してみよう。
 もし、寝ててもスキルがつかえるのなら、魔力視はこんな状況ではうってつけだな。
 なにせ、目を瞑っていても周りの状況が分かるのだから。

 今夜は殺し屋はこないだろう。
 いくらなんでも情報収集する為に一日ぐらいは掛けると思いたい。
 少し不安を抱え眠りについた。



『おい、起きろ! 起きろって!!』
「えっ、殺し屋が来たの」

『見張られてる。家の近くで動かない反応がある』
「闇ギルドなめてたよ。まさか、初日にくるなんて」

 打って出るしかないよな。
 灯りを持たずに庭にでる。
 反応のあった場所に行くと物置があった。
 これ来た時に物を入れようとしたら、扉が開かなかった奴だ。

 魔力視ではまだ中に人が居る。

『たぶん、中の人は闇ギルドじゃないと思うぞ。ノックしてみろ』

 ライタに言われた通りにノックすると、横の壁が開いて男が出てきた。
 男は黒い服に黒いスボンを穿き、頭を短く刈って黒い帽子を被っている。
 夜だと相当見えずらい。
 照明のスキルで辺りを照らす。

 男の顔はこれといって特徴が無い。
 武器は手に持っていなかった。



「灯りを消せ。良く分かったな」
「勘が鋭いので」

「うすうす気づいていると思うが俺は冒険者ギルドから派遣された者だ」
 男の言う事を信じて、俺は照明のスキルを切った。
「護衛ですか」

「いや、闇ギルドが襲ってきた場合に後をつけるのが俺の役目だ」

 俺は囮なんだな。
 冒険者は自己責任だから、仕方が無いのか。
 自分の撒いた種だし文句は言えない。

「仕事の邪魔して悪かったな。俺はもう寝るよ」
「魔力に回復と安らぎを」

 無表情な見張り男のおやすみの決まり文句を聞きながら考える。
 見張りの男は眠りが永眠でも気にしないのだろう。
 冒険者ギルドを頼ったのが正解だったのか少し疑問に思えてきた。



 いつの間にか眠りつき、いつの間にか朝になっている。
 ちっとも寝た気がしないけど、今日は囮の役目を果たそうと思う。
 冒険者ギルドの思惑に乗るのは癪だが。
 というか篭ってるのは性に合わない。
 闇ギルドが襲撃を掛けてくれれば事態の解決が早まるような気がする。



 攻略途中のダンジョンに出かけた。
 ダンジョン攻略は順調に進んだが、八階で思わぬ強敵に出会う。
 それは鱗の肌を持ち、防御体勢をとると丸まる性質を持つ、デリートアルマジロだった。
 こいつはCランク魔獣だったと記憶している。
 デリートの名前の由来は魔法を魔法防御というスキルで消し去ってしまうからだ。

 相性が少し悪いと思う。
 ウッドゴーレムは前衛としてはDランクぐらいの腕前しかないので、硬い鱗の皮膚に鋼鉄製の剣は弾かれる。
 かといって魔力ゴーレムに魔法を使わせても消されてしまう。
 攻撃方法は2.5メートラの体を丸まらせ体当たりするという物で、それ自体は大したことがない。
 たまに頭を出して噛み付いてくるが、それもゴーレムにとっては脅威にはならないから、どうしても千日手になる。

 しょうがないので魔力ゴーレムに魔法を撃たせまくった。
 相手の魔力切れを狙ったのだ。
 なんとか三十発程でデリートアルマジロの魔力は切れ、風の刃が食い込み致命傷を与えた。

 今回は相手の攻撃力やスピードが殆んど無かったからなんとかなったけど、何かこれの対策を考えないといけないな。
 それで考えたのが、銃魔法の弾を土魔法でなく、魔法では無い金属の弾にするというものだった。

 工房に行って金属を色々分けて貰い弾丸を作る。
 そして、草原で試射を行い、ダンジョンに向かう。
 さあ、リベンジだ。



 デリートアルマジロの出る部屋に行き、デリートアルマジロが出てくるのを今か今かと待つ。
 出てきた魔獣はアシッドアントとデリートアルマジロの二体だった。
 アシッドアントを風の刃であっさり片付ける。

 銃魔法の筒にスリットが開き、ウッドゴーレムが鉄製の弾を込めた。
 スリットが閉じ、パンという音と共にデリートアルマジロの体に穴が開く。
 五発も食らわせると頭を出したので撃ち抜いた。

 着ぐるみゴーレムとウッドゴーレムを組ませるのに意味が出てきたな。
 実体の無い魔力ゴーレムは弾を銃魔法に込められない。
 念動とか使えば出来るかと言えば出来るけど、遅くてまだるっこしい。
 ウッドゴーレムは装填装置兼務だな。
 連射が出来ないのが欠点だけど魔力防御限定だから良いだろう。

 剣帯と弾丸の入ったポーチはウッドゴーレムの必需品になりそうだ。



 魔力視で部屋の外を見ると、昨日の物置と同じ反応があった。
 あれ、部屋に入る時に誰も居なかったはずだ。
 あの人が暗殺者だったらと思ったらぞっとした。
 たぶん目に見えないようにするスキルを使っているのだろう。
 これからは、魔力視でちょくちょく周りを観察しよう。

 部屋から出て、魔力反応が出ている所に近づく。

「ギルドから来た人だよね。分かってるよ」
「何故分かった?」

 目の前が歪み、黒い服を着た男の形を取って、尋ねてきた。

「スキルで分かるんだ」
「そうか、なるべく声を掛けないで欲しい」
「ちょっと興味があったので」
「たぶんこの後調べると思うから言っとくが、俺のスキルは迷彩だ。魔獣だとミラージュスネーク辺りが有名だな」
「ご親切にどうも。もう声を掛けないよ」

 男はまた見えなくなった。



 ダンジョンの狩りを終え、家に帰り夜になる。
 寝る前に魔力視で確認すると家の周りに沢山の魔力反応があった。
 闇ギルド、意外と優秀だな。
 良く考えたら、冒険者ギルドから情報が漏れている、もしくは意図的に流したのだろう。

 俺はそっと裏口から出て迷彩スキルを使う。
 勿論このスキルは昼間にダンジョンでギルドの男から魔力走査して覚えたものだ。
 本当はデリートアルマジロの魔法防御が欲しかった。
 だけど、魔力走査は射程が2メートラにも満たないので魔獣に近寄るのが恐い。
 そんな訳でダンジョンで八つ当たり気味に迷彩スキルの仕組みを盗んだ。
 迷彩スキルは魔力で光りを捻じ曲げて見えなくするスキルだった。

 襲撃に来た男達は俺の事が見えてない。
 後ろからそっと近づき、数人を雷魔法で眠らせた。
 男が幾人か倒れたので辺りは騒然となる。

 集団の密集地にフラッシュ魔法をぶち込んでやった。
 阿鼻叫喚となった所で水魔法の粘着を展開して動けなくしてから、魔力ゴーレムに雷魔法を使わせ全員眠らせる。
 物置をノックして後片付けよろしくと声を掛けた。

 家に入りしばらくすると、新たに魔力反応が幾つかあって、次々に男達を運んでいったみたいだ。
 魔力反応が物置の一つだけになり、ライタに後を任せて眠りに入った。
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