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第1章 禁忌活用編

第14話 疑惑の渦中

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 今日も元気に樵稼業だ。
 一回木を倒すと三十匹ぐらいのゴブリンが現れていたのが、今日は百匹だ。

 こんなにどこに隠れていた。
 百匹の群れの中に大きい固体が何匹かいる。
 普通のゴブリンは俺の胸ぐらいだが、こいつらは俺と同じぐらいの背丈だ。
 上位種という奴かな。
 いつも通りゴーレムで群れを削りにかかる。
 大きいゴーレムは号令を出し、群れが一つの生き物のように襲い掛かってきた。

 不味いな、俺の周りにゴーレムを固めて防御の体制をとる。
 ゴブリンの棍棒でガンガンとゴーレムが叩かれた。
 ゴーレムは剣で反撃するが、数が多くて手に負えない。
 しょうがない奥の手を出すか

 魔法の使い方は幾つか考えた。
 その内の一つがこれ1メートラの水球で窒息させるだ。
 利点はゴーレムが窒息しない為、気兼ねなく魔法を行使出来る。
 水球はゆらゆらと飛び、ゴーレムを攻撃していたゴブリンを包み窒息させる。



 半数を仕留めた時に上位種が声を上げ、なんとゴブリンは全速力で逃げ出す。
 逃げる頭があったんだな。
 追い討ちに銃魔法を撃つが当らないので連射する。
 バババババっと連続音がして、結構な数を仕留める事に成功した。
 連射は強い。

 それから、木を倒してもゴブリンは現れなくなった。
 どこかで作戦会議でもしているのだろうか。
 まあ良い、木を持ち帰られれば満足だ。



 材木屋で職人が冒険者ギルドの人間が話しをしたいと言っていたと俺に伝えた。
 なんだろう。

 冒険者ギルドに顔を出すと、俺を登録してくれたフェミリの窓口が丁度空いていた。

「あの、ギルドから話があるって聞いたんだけど」
「フィル君ね。派手にやっているみたいじゃない有名よ」
「えっ、何の事です」
「ゴブリンの森を破壊しているそうじゃない。二つ名ついているわよ。開拓破壊魔さん」

 何か物騒で格好悪い二つ名だ。
 あんまり嬉しくない。

「それで、話って?」
「あなたをギルドは支援する事にしたわ」
「支援って何を?」
「木の運び出しをギルドが請け負うって事。一日伐採すれば10ポイントのDランク指名依頼付よ」

 Dランク依頼って事は順調に行けばCランクまでは上がるな。

「えっと、やります」
「明日、朝にギルドに来て。運搬の冒険者と顔合わせをするわ」
「分かった」

「ちなみに興味から聞くのだけど、一日、魔法を撃ちっ放しで大丈夫な魔力量って幾つ?」

 何で一日中って、知っているんだ。
 まあ、冒険者には何回か会ったな。

「54です。秘術使って遣り繰りってところ」
「なるほど、手の内は明かせないって事ね。何か買って欲しいな」
「いきなり催促って」

「あのね、上級冒険者は窓口の女の子に付け届けを欠かさないわ」
「どういう事」
「情報が生死を分ける事があるの。受付嬢を敵に回すと大変よ」
『俺も職場の女の子にホワイトデーをケチったら酷い目にあった。女は恐い』

 ライタもそう言っているし、ここは素直に頷くべきだろう。

「分かったよ。何か買ってきます。ちなみに相場は?」

「あなた、Eランクだから。そうね、人気のぬいぐるみを受付嬢全員に買ってきて貰いましょうか」
「人気のぬいぐるみって?」
「ゴーレム使いが好きなポーズに変えてくれる物よ」

 それって、ルシアラの店の奴じゃ。
 ぬいぐるみ、売れてるんだな。

「分かった。買ってくるよ」
「よろしく、二十三人分よ。それから、伝言が来ているわ」

 何だろう、マリリかな。
 伝言の紙を裏返す。
 聖騎士セシリーン、知らない人だ。
 会いたい、宿で待つとあった。
 もしかして、スカウトかな。



 セシリーンを尋ねる。
 セシリーンは白銀の鎧を着て剣と短剣を腰に吊るしていた。
 金髪の髪で精悍な顔つきがとても聖騎士らしい。
 俺より年上だな。
 男性だと言われて紹介されれば信じてしまいそうな中性的な感じだ。

 話はスカウトじゃなかった。
 ニエルの事を聞かれただけ。
 たぶん、獣が遺体を掘り起こしたのだろう。
 田舎だから、死体が出て大騒ぎって事だと思う。



 ルシアラの店は新顔が何人かいて、繁盛しているみたいだ。
 俺をテーブルに案内するとお茶を出してくれた。

 ルシアラが奥の方から、眠たげな顔をして出て来る。

「おっ、フィルじゃねぇか。店が忙しいので手伝いに来てくれたのか」
「ぬいぐるみを二十三個ほしい」

「まだ、売り始めて二日だけど、もの凄く評判良くってよ。在庫は無い」
「そんな、材料だけでも売ってくれよ」
「それなら、大丈夫だ。それでな、真似する店がもう出ている。なんとか、ならないか」
「工夫はどうしたの」
「その場で作るのと、名前入りはやってない。それもすぐ真似されそうだからタイミングを見ている」

「そうなると、売り方としては二通りだ。安く売るか、高く売るか」
「安い方は分かる。材料の仕入れなんかで工夫するんだろ。高い方はどうやるんだ」
「デザイナーを雇って、洗練されたデザインの物を良い材料で作るんだ。通し番号を一個づつ打つのも良いかな。番号で管理して修理にも応じる」

「貴族相手に商売するのはどうもな」
「なら、大量仕入れで原価を安くして、なんとかするんだな」
「それしか無いか。女のゴーレム使いを十人ほど雇ったんだ。情が湧いてな。仕事が少しでも長続きするようにしてやりたい」
「また何か考えておくよ」
「頼むぜ」

 材料を貰い店を後にした。
 明日からはギルドの協力の下、樵だな。

Side:セシリーン

 宿に男が尋ねてきた。

「俺がフィルだけど。伝言を見たよ」

 この男がフィルか。
 第一印象は白だな。

「貴殿がそうか、フェリライト村近くの街道で遺体を見つけてな。ちなみに殺人を犯した事は?」

「無い無い」
「罪状鑑定を掛けてもいいか?」

「良いよ。ちなみに何を調べているの」
「罪状鑑定。調べているのは機密に当たる」

 反応なしか。
 これで振り出しになるのなら、手掛かりが何か欲しい。

「俺はどうだった」
「問題ないようだ。ニエルさんが亡くなった時に変わった事が無かったか」
「なんにも無かったよ」

 今、一瞬目が泳いだ。
 何か隠しているように見えた。
 犯人を知っているのかも知れない。
 禁忌の事を聞いたら口を噤んでしまう可能性があるな。
 なら、泳がせて犯人に忠告に行く所を捕らえるのが得策だろう。

「そうか、もう行って良いぞ」



 数日後。
 冒険者に化けて監視していた部下から話を聞く。

「報告します。魔獣退治で十体ものゴーレムを同時に操っていました。ゴーレム一体一体が別々の動きです。異常です、ありえません。それと、一日中、魔法を撃ってました」

 ゴーレムは二体ぐらいなら何とか思考が追いつくが、十体別々は人間には無理だろう。
 魔力量の方は才能が飛び抜けていればありえるかも知れないが。
 普通に考えれば禁忌を犯したマッドサイエンティストから成果を受け取っているな。
 尋問に掛けよう。
 真偽官を呼ぶべきだな。

Side out
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