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第7章 魔王大戦編

第369話 新人勧誘と、ロムと、飛び出す絵本

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「魔法おもしろ研究会に入りませんか」

 声を上げるとチラシを貰っていく人はいるが、入りたいという人はいない。
 自分なりの面白い魔法を研究しろと言われても困るよな。
 生活に便利な魔法や、戦いに役立つ魔法とかなら、研究しがいもあるのだろう。
 面白い魔法を研究してどうなるって言われそうだ。

 それと、前会長のエミッタがやらかした伝説が残っている。
 アキシャルを追いかけ回したストーカーの服をエミッタが爆発で吹き飛ばしたとか。
 何が気にくわなかったのか偉人の銅像を爆破したりとか。
 とにかく伝説がたくさんあって、枚挙にいとまがない。

 余りに暇なので本を読んでいたところ、俺の前に人が立った。
 本から視線を上に向けるとロムの笑顔があった。
 ロムは本売りの少年だ。
 この間、瀕死のところを助けたばかりだ。

「よう親友」
「ここに来たってことは学園に入ったのか?」
「まあな。本を読んで知識だけはある」
「目的はここの蔵書か?」
「そうだ。ここの図書館には入りたかった」

「ついてたな。魔戦士との戦いで本は無事だったみたいだ」
「知ってる。だから入った。ところでアスロンの野郎はぶっ殺したか?」
「まだだ、人間を容易くは殺せない。特に貴族ともなればな」
「めんどくさいことだ」
「物語みたいには上手くはいかないさ。それよりおも研に入るか?」
「義務とかなければ入る」
「とりあえずはないな。課題みたいなのを振ったりはするが、拒否しても除名はしない」
「そうかなら、いいぞ」

「みんなを紹介しよう」

 みんなを呼び集めた。

「ロムはマイラを知っているな。こっちの彼女はリニア、でもってベークと、ラチェッタと、コネクタとベス兄妹だ」
「よろしく。ロムだ。希少本を持っていたら見せてほしい」

 みんなもよろしくと言い、希少本は持っていないと一同に言った。

「なければ作る」

 マイラがそう言いだした。
 エミッタみたいなことを言うな。

「となると魔法の本だな」

 俺がそう言うと皆が頷いた。

「常々考えていたことがある」

 ベークに何か考えがあるらしい。

「言ってみろ」
「炎を出すコンロの魔法とか魔道具とかあるよな。炎を妖精の形に出来ないのかと。で小さい子が手を出して火傷すると思ったから、幻か光で良いんじゃないかと。妖精のランタンとか作ったら良いなと」
「ほうそれで」
「幻で物語をつづれないかなと」

「ええと飛び出す絵本か」
「まさにそれ。良いネーミングだ」

 飛び出す絵本は前世の言葉だけどな。
 新人勧誘もそっちのけで魔道具を作る。

 ロム監修で飛び出す絵本が完成した。
 本を開くと幻が飛び出した。
 それには音声も付いている。

 内容は。
 私は、テスラ。
 弟はリテル。

 お母さんが病気で今日も森で薬草摘み。
 森は鬱蒼と茂り不気味だ。
 でも負けてはいられない。

「おねぇちゃん、もう帰ろうよ」
「我慢しなさい。薬草が無ければお母さんの病気も良くならないし、明日のパンも買えないの」
「でもでも」

「沢山薬草が摘めたら、飴玉を買ってあげる」
「ほんとう」
「だからしっかり薬草を探すのよ」
「うん」

 森はどんどん深くなり、ホーホーという不気味な声も聞こえてくる。
 引き返したい。
 でも。

「ひっ」

 弟のリテルが怯えた声を出した。
 みると、怪我をした大きな狼が横たわっている。

「怪我をしているみたい」
「グルルル」
「血止めの薬草なら持っているよ」

 弟のリテルがそう言います。
 そうね、可哀想だから助けてあげましょうか。

「動かないでね」

 血止めの薬草を傷口に貼ります。

「ヴー」
「ごめん、痛かった」
「グル」

 ほどなくして、傷口に薬草を貼り終えました。

「さあ、道草する余裕はないわ。どんどん摘んで帰りましょう」
「うん」

 籠は薬草で一杯になった。
 その時、森の奥で何かが光ったような気がした。
 なんでしょう。
 行ってみると七色に輝く花が咲いている。

 手を伸ばして摘んだ。

「小娘、その薬草を寄越せ」

 目つきの悪い男の人が出て来て私を脅した。

「嫌よ」
「そうだ。ねえちゃんが、先に摘んだんだ」

「こうなれば」

 男は持っている剣を抜いて、斬りかかる。
 音が止ってスローモーションになった。

 そして、血しぶきが。
 あの狼さんが、庇ってくれたみたい。
 狼さんは爪の一振りで、男の剣は折れた。
 男は真っ青になって逃げ出した。

「狼さん」

 狼さんが助かるにはこれしかない。
 七色の花を、狼さんの口の中に入れたところ、狼さんは光り輝き、傷が癒えていた。
 良かった。

「おねぇちゃん。あの薬草をお母さんに食べさせたら、病気も治るんじゃない」

 七色に輝く花を食べた母さんの病気が治った。
 めでたしめでたし。

 オーソドックスな物語だ。
 ちょっと血が出るのが物騒で異世界らしい。
 中世の童話とかも残酷だった。
 靴が合わないからと言って足を切り落とした話など色々とある。

「ベークアンドリッツ商会で扱わせてほしい」
「物語ならいくらでも知っているぜ。別の本も作ろう」

 ベークにロムがそう持ち掛けた。
 飛び出す絵本はきっと売れるに違いない。
 二人の好きにするさ。
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