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第6章 特使編

第358話 選挙と、反乱と、リッツの求婚

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 首都での選挙が始まった。
 俺にはあまり関係ないから、安心して見てられる。
 女性候補が落選してもそれはそれ。
 とにかく責任を取ってくれる存在ができればそれでいい。
 今までだと交渉するのに、戦士会議で発言しないといけなかったからな。
 これだけでも大きな進歩になると思う。

 男性候補はモンスターの狩りでアピールしたが、女性候補はモンスターの狩りはもちろんのこと果物採取も大規模に行った。
 肉だけじゃ確かに飽きるから、果物は嬉しかったはず。
 果物を貰っていく首都の民は笑顔だった。

 結果が出て当選した候補が続々と議員になる。

 多数の女性候補が当選して議員になった。
 おっ、トップ当選はリッツじゃないか。
 ということはリッツは魔法学園を辞めるか休学するつもりだな。

「リッツ、ソレノさんは諦めるのか?」
「いや、ディッブに呼び寄せる。こここそが俺の居場所だ」
「そう決断したなら別にいいけど」

「同志、別れるのは寂しいな」
「同志、生きてさえいれば、必ず会えるさ」

 盛大に死亡フラグが立った気がする。

「テクン!」

 イーサが叫んでる。
 イーサの票数をみると落選したようだ。

「お前達のせいだ。お前達が来てから全て上手くいかない」

 イーサがリッツに向かって喚きたてた。

「俺の人気を嫉妬しているのか。全ては人としての魅力だよ」

 リッツ、お前がそれを言うのか。
 まあ、助平だけどリッツは善人だな。

 イーサは何も言わず去って行った。
 そして当選の宴会となって、宴もたけなわになっていた時に街に火の手が上がった。

「スイコイリリニラミ!」
「リッツ、何だって?」

「反乱らしい。イーサが反乱を起こしたようだ」
「筆頭当選議員の出番だな。蹴散らして来い」
「もちろん」

 リッツは光り輝き駆け出していった。
 そして、ドカンドカンと戦闘音が聞こえた。

 ほどなくして火も消え、縛ったイーサをリッツが連れてきた。

「嫌だ。死にたくない。助けてくれ。何でもする」

 イーサは泣いて懇願してる。
 さあ、リッツはどうするかな。

「議員権限で死刑を言い渡す」

 ほう、リッツが死刑を選択するとはな。

「リッツ、どういう理由で死刑にしようと思った?」
「こいつの仲間がロータリの殺し屋を手引きしたのはイーサだと言っていた。犠牲者も出ているしスライダー王国の法でも死刑だ」
「リッツがそう判断したならそれでいい」

「首を刎ねろ」
「許してくれ。うわー」

 ディッブ人は血を見て盛り上がった。
 戦闘民族も良い所だ。

「リッツ、私と勝負してくれ」

 真剣な顔でトレンがリッツに決闘を申し込んだ。

「俺はトレンに向ける拳を持たない。でも訓練なら付き合う」
「それで良い」

 リッツとトレンが闘技場で対峙する。
 開始の合図がミカカ語で発せられた。
 光り輝くリッツ。
 トレンも光輝いた。
 だがトレンの光の方が弱い。
 トレンの攻撃はことごとく空振り。

 リッツはトレンに抱きついた。

「トレン、結婚してくれ」

 その言葉を聞いたディッブ人女性から落胆の声が漏れる。
 リッツの光は急速に失われていった。

 トレンはリッツを振りほどいて、投げを極めた。
 そして、馬乗りになってリッツにキスを。
 トレンの返事は聞かなくても分かっている。

 リッツらしい終わり方だな。

「ソレノをお嫁に出さないといけなくなりましたね。まあ本人の意向を確かめてからですが」

 そうレクティが愚痴った。

「リッツが重要人物になるとはな。それも助平心だけで」
「愛欲で戦争を起こした例もあります」
「まあな」

 リッツに対するディッブ人女性の好意は無くなったが、リッツの求婚はディッブ人らしい作法に則っているので歓迎された。
 そろそろ帰り支度しないとな。

「リッツ、ディッブに残るのか?」
「ああ、拠点はディッブにするつもり。でもベークアンドリッツ商会で交易はするから、スライダーの王都にもちょくちょく行くよ」
「達者でな」
「同志、お別れだな」
「ああ、ラチェッタと仲良くな」

「王都に寄ったらおも研にも顔を出してくれ」
「寂しくなります」

「コネクタ、兄妹仲良くな。ベス、俺の気があるのか。気があるならどんと来いだ」
「気なんかありません」

 ベスがそっぽを向いた。

 リッツとお別れして俺達はスライダー国の帰路に就いた。
 長いようで短かったな。
 戦争は回避できたし、リッツが議員でいる間は、問題は起きないだろう。
 成果的にはまずまずだな。
 合格点は貰えるはず。
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