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第6章 特使編

第335話 チューニングと、ヒュドラと、妬みの視線

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「マイラ、トレンの剣をチューニングしてやってくれないか」
「うん、タイトが言うなら」

 マイラがトレンが作ったミスリルの剣をチューニングし始めた。
 剣の腹をトントンと指で叩いていく。

「出来た」
「助かった。自分で作った剣なのにしっくり来なくってな。ずれがあるようでもどかしかったのだ」
「お礼ならタイトに言って」

「タイト、ありがとう」
「どういたしましてだ」

「よし、試し切りだ」

 そう言うとトレンは5センチはあるウロコを軽く上に投げた。
 落ちてくるところを剣で一閃。

 ウロコは真っ二つになった。

「何のウロコだ?」
「レッサードラゴンだ。たぶんこの剣ならドラゴンも斬り裂けるだろう。そうと分かれば、大佐認定試験だ」
「ああ、あのモンスターを一人で狩って来る奴」
「大佐はレッサードラゴンクラスを狩らないといけない」
「武運を祈っているよ」

 俺はそう言って送り出した。

「キララシ・リナソノ」

 リッツがミカカ語でそう言って送り出す。

「カクチミノト」

 そう言ってトレンが去っていった。
 そして、夕方になりトレンがレッサードラゴンを引きずって帰ってきた。

「トレン、おめでとう。これで大佐だな」
「おめでとう。次は俺が大佐にチャレンジする」

 リッツがホラを吹いた。

「ありがとう」
「その剣の調子はどうだ?」
「バターを切るようにレッサードラゴンが斬れた。一撃だったぞ。引きずって戻るのが大変だっただけだ」
「だが、またしっくりこなくなった」
「メンテナンスが必要なようだな。トレンの魔力が魔闘術を使って剣に流れ込み、流れが変わったのだろう」
「きっと、そうだな。私と相性の良い魔導金属を作る奴を見つけないと」

 そして、3日が経ち。

「見てくれ。女だけの戦士軍団を作った。チモチツラミイトトだ」

 女だけの戦士集団で、中にはモヒカンにしている女もいて、みんな思い思いの武器を持っている。
 翻訳するならアマゾネスだろうな。

「強いのか?」
「みんな少佐ぐらいの力はある」

 少佐かぁ、前世では赤いのに乗って三倍のスピードで動く奴がいたな。
 少佐最強説が流れたぐらいだ。

「うん、強そうだ」
「タイト、家を運ぶ時に使った魔道具を貸して」

 マイラがそんな事を言い始めた。

「いいけど」

 何に使うのか分かるレッサードラゴンを倒してくるつもりだな。
 マイラは魔道具をひったくるように奪うと、飛ぶ板に乗って飛んで行った。
 そして、一時間もしないうちにマイラが帰ってきた。
 獲物はレッサードラゴンでないな。

「クンシスチ!」

 トレンが息を飲む。
 このモンスターが何かは一目見て俺にも分かった。
 ヒュドラだ。
 頭がいくつもあるドラゴン。

 Sランククラスのモンスターだ。
 エルダードラゴンに匹敵するだろう。

 マイラは胸を張っている。

「マイラも魔王を名乗っていいかもな」
「ううん、魔道具の力を使ったから、素の力ではできないよ」
「確かに俺なら魔道具無しでもやれるかも知れない」

「とりあえず、これで私も大佐だね」
「ディッブの中でしか通用しない称号だけど、確かに大佐だ。いや元帥でもいいかも知れない」

「ミカカ語だと元帥はモチストクチリかな」
「この街を代表してマイラ殿には元帥の称号を与える」

 トレンがそう言って、斜めに手を上げた。
 敬礼の一種だろう。
 敬意を表していと思う。

「ところで、これ食えるの?」

 リッツがそう言って巨大な死骸を眺めた。

「食えるぞ。淡白だが美味いと伝わっている。ディッブでも討伐されたのは初めてだが。遭遇して尻尾をもぎ取って食ったという話はある」
「じゃあ、宴会するか」

 宴会が始まった。
 男の戦士達の視線がなんだか嫉妬を孕んでいるように見える。
 女に負けたということが我慢ならないのだろう。
 アマゾネスを見る目にも、同じ視線を感じた。
 これは衝突が起こるかもな。
 試合でもさせて、発散させるべきだろう。

「トレン、男達が不満を溜めているようだ。試合でもさせて現実を教えてやれ」
「そういう話なら大歓迎だ」

 ただし、叩きのめしたら後が大変だ。
 裏切りなどされたら堪らない。

「マイラ、五分五分になるように試合を組んでくれ」
「うん、大体の力量は分かるから、簡単だよ」

 引き分けや勝ったり負けたりすれば女戦士を認めるだろう。
 侮れないと分からせるだけでいい。
 だが、そのうち本格的に衝突するはずだ。
 どう決着をつけるかだが、上手い着地点が見つかるといい思う。
 俺が心配することでもないか。
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