異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った知識は魔王級。家族に捨てられたけど、世界法則には気に入られた。プログラム的呪文で最強無双~

喰寝丸太

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第6章 特使編

第319話 首都と、市場と、機能停止

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 首都に着いた。
 外壁は石で出来ていて、ゴツゴツしていて武骨だが、城壁は厚そうだ。
 ここいらのモンスターは強いから、性能は良いのだろう。

 トゲトゲの鉄で出来た門を潜る。
 世紀末をイメージした映画に出て来そうな門だ。

 首都の家は主に木で出来ている。
 多湿の場所柄なのでこうなったと思われる。

 俺達はかなり広い家に案内された。
 家の中の壁が少ない。
 風通しが良いようにだろうな。

「荷ほどきしたら、街に出よう」
「はーい」

 マイラ達から返事があった。
 俺の荷物は収納魔法に入っているから、荷物整理は必要ない。
 手早くラフな格好に着替えた。

 飾りの付いた服は着たくない。
 特使として威厳を保つためだろうけど、動きにくいんだよ。
 歓迎の試合とかやりづらかった。

 みんなの支度も整ったようだ。

 街に出ると、露店がないのに気づいた。
 お金がないものな。
 リッツの案内で市場に行く。

 野菜や果物や肉や魚などを売っている。
 惣菜も売っているな。
 みた所、物々交換で商売しているようだ。

 人の集まりがやってくる。
 何が始まるのか見ていたら、市場に象ほどの大きさのモンスターが運び込まれた。
 解体作業と物々交換が始まった。

「ただで持っていく人がいるね」

 マイラが目ざとく見つけたようだ。

「上級戦士だよ。トレンから聞いている。市場に獲物を持って来るのは下級戦士だって」

 リッツが解説してくれた。

「貴族階級はどこも横暴だな」
「そうでもないみたいだよ。戦士は市民が手に負えないモンスターを退治するから、尊敬はされている。その証拠にただで持っていっても嫌な顔されていない」
「給料の一種なのかもな」

 貨幣経済を流行らせるとしたら、ディッブ人の分化が破壊されるのだろう。
 俺の役割と違う気がする。
 そこまでする義理はないな。
 でも文化を破壊して、色々な軋轢を解消しないといけないんだろうな。

 歩み寄るなら、俺の国のスライダーも変わる必要がある。

「リッツ、ディッブ人の苛立ちは国の格差だな」
「まあね。個々の力は優れているよ。でも全体だと敵わない。ディッブ人の上の方は頭も良い。戦争したら勝てないのが分かっている。でも戦士としての矜持が邪魔をする」

「矜持ばかり気にするチンピラは早死にする。ずるい奴が生き残る」

 マイラがそう口を挟んだ。

「そこいくとロータリは生き残れそうだな」
「商人は直接の武力では弱いですけども、しぶといですわ」
「みんな仲良くしたらいいのに」
「順列をつけたがるのは本能みたいなものだから」

 レクティとセレンとリニアも話に加わった。

「意識改革は難しそうだ」
「まあね。武力を誇示する奴は分かり易いけど、頑固なのが多いから。損得勘定じゃないので始末が悪い」

 マイラがそう言った。

「ですわね。損得勘定で動く人は操り易いですね。利点を示せばいいのですから」
「となるとディッブ人の利点という面では闘貨は良かったかもな」

「でも、それをスライダーからしか買えないとなったらまた摩擦よね」

 とリニア。
 まあな、そこが難しい。
 ただで渡すという選択肢はない。
 平等な関係を築きたいだけだからな。
 ディッブにはモンスター素材を輸出してもらいたいところだ。

「摩擦は仕方ないですわ。経済でもなんでも動きがあれば摩擦は生じます」
「なるべく摩擦の少ない仕組みが作りたいな」

「ディッブの闘貨を渡し過ぎるのはどうかな。裏切る可能性もある。でも対策は考えてあるんでしょ」
「マイラさん、たぶん停止コードが魔道具に組み込まれていると思いますわ」

「まあねそれは組み込んだ。ある言葉を言うと止まる」
「知られたら一大事ね」
「スライダーでも王族しか教えないんでしょ」

 とリニアとセレン。

「そうだよ。秘伝として伝えていくつもりだ」

 停止のプログラムはこうだ。

 char str[256]; /*音声入力の文字が入る場所*/
 voice_input(str); /*音声入力*/
 if(strcmp(str,"親亀こけたら皆こけた")==0) while(1); /*パスワード『親亀こけたら皆こけた』で停止*/

 このプログラムが闘貨には仕込んである。

「お腹すいたなぁ」

 リニアがお腹をさすった。

「俺も果物が食ってみたいな。リッツ、俺が作った魔道具と交換してこいよ」
「ラノ」

 リッツがミカカ語で返事して離れていった。
 ベーク達は市場の品物を見ている。
 珍しい物もあるからな。

 ディッブ人の不満は分かる。
 1番でないことが嫌なのだと思う。
 武力こそ全ての社会で、武力が他所より劣っている。
 その現実が苛立ちの原因なのだろう。
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