異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った知識は魔王級。家族に捨てられたけど、世界法則には気に入られた。プログラム的呪文で最強無双~

喰寝丸太

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第6章 特使編

第309話 国境と、力こそ全てと、情勢

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 2週間掛けてディッブ国境に到着。
 ここからは、森が少なくなってサバンナになる。
 国境には砦があるだけで、関所みたいな物はない。
 商人もほとんど通らないらしい。

「トレン、ディッブからの迎えは来ないのか?」
「来ているはずだ」

 浮いている家を下ろした方が良いのかな。
 そう考えていたら、モヒカンの男がジャンプして家の庭に着地した。
 おお、素晴らしい身体能力だ。

「出迎えご苦労」

 俺は家から出て庭で挨拶した。
 男は俺をジロジロ見て。

「強いのか? 強そうには見えないな」

 そう言って唾を吐いた。

「ええと、力を示せと言うんだな。【100万魔力火球】」

 家より大きい火球が空に浮かんだ。

「流石、国の特使だな。ディッブに入る資格があるようだ。よかろう、歓迎する」
「それはどうも」

 俺はこの国でやることは戦争回避だ。
 だが、どうやらこの国では力こそ全てらしい。
 身体強化の魔法はあるけど、肉体で語り合えなんて展開は好きじゃない。

 男を家に招いた。
 そう言えば名前も聞いてないな。

 男にマイラ達を紹介した。

「マイラか、いい女だ。俺の女になれ。俺はイーサだ」
「お断り」
「気の強い女は好きだ。丈夫な子を産む女は強くなければな」

「マイラは俺の婚約者だ。手を出すというなら、覚悟をしてもらおう」
「俺達はいつだって命がけだ。他の国のぬるい奴らとは違う」

「イカクイスネ・チソカ・リニノイ・チ・モイトトイミキイス」

 トレンがイーサを咎める口調で言った。

「イーサ、使者らしくしなさいと言っています」

 リッツが翻訳してくれた。

「クモモネ・イヒイミ・カクラナキク・ニカやト・マナトカ・コリララシ・チミシ・テイチノ」

 軽蔑したようなイーサの口調。

「ふん、血筋だけで弱いくせにと言ってます」
「ニハ・ンラナ・テニミネ・カチノイ・ニカ・チカ・チミン・カニモイ」

 トレンは受けて立つようだ。

「勝負するなら何時でも受けると言ってます。さすがトレン」
「ここは、お前の顔を立ててやろう」

 そう言うとイーサは文官に案内されて去って行った。

「イーサって強いのか?」

 俺はマイラに聞いた。

「トレンより弱い」

 トレンより弱いのか。
 それなのに虚勢を張ったのか。
 口だけ番長みたいな奴だな。

 ひょっとして俺はかまされたという奴か。
 怒ったら良いのか、軽蔑したら良いのか、迷うところだ。

 戦闘力を見せつけて誇るのは何か違う気がする。
 それだと相手の土俵に乗るということだ。
 戦いは始まったのだな。
 相手のペースに乗ってどうする。

 ここは鷹揚に構えていくのが大事だな。

「見下げ果てた奴だ。人間の価値を戦闘力でしか測れないとはな」

 俺の言葉のチョイスは間違っていなかったようだ。
 マイラ達にも落胆したような感じはない。
 頷いて賛同してくれている。

 だが、トレンは頷いていなかった。
 トレンは戦闘力が大事だと思っているらしい。
 この国で大暴れして、認めさせるのは簡単だ。
 しかし、それでは正常な国同士の付き合いとは言えない。

 戦闘力は確かに外交に必要なのは認める。
 だが、それは1部分にしか過ぎない。
 この国との付き合い方をどう決めるか考えないといけないようだ。

 マイラ達4人を集めた。

「この国とどう付き合ったらいいと思う」
「子分にしちまえばいいんじゃない」

 とマイラ。

「属国にするですよね。それですと、常に反乱の危険性を伴いますわ」

 レクティが意を唱えた。

「仲良くできたら、いいのかな」

 セレンがそう言って考え込んだ。

「戦争と決まったわけじゃにいのよね。話を聞かないことには、相手の不満がどこにあるかさえ分からない」

 リニアが意外に慎重論だ。

「最初はかまさないと」

 マイラが意気込んでそう言った。

「それは一理ある」

 納得したようなリニア。
 二人とも血の気が多いな。

「とりあえず何が不満なのか知りませんと」
「そうね。言い分を聞くのは大事」

 そう、レクティとセレン。
 そうだな。
 交渉なのだから、意見を聞いてみないとな。

 落としどころが見えてくるかも知れない。
 俺はリッツを呼んだ。

「ディッブは何が不満なんだ」

 下調べとしてリッツに聞いた。

「力があると思っているんだよ。だから、なんで貧しさを受け入れないといけないのかと思っている」
「じゃあ、何で攻めて来ない?」
「ディッブは個が基本だから、軍勢を組むことを嫌がる」
「そりゃあ勝てないよな」

「まあね。トレンもそれで悩んでる」

 暴君ばかりの集まりみたいだ。
 たぶん軍勢を組むと、喧嘩して空中分解するんだろうな。

「それでもって威力10倍の新魔法か」
「このままだとディッブはうちの国に飲み込まれるから、焦っている」

 要するに、俺の国に武力で太刀打ちができなくなった。
 属国も嫌なのだろうな。
 武力が全てなんて思っている国は俺も属国にするのは嫌だ。

 双方が属国が嫌か。
 戦争するなら、武力がなんとかなる今がチャンスと見ているに違いない。
 でも、色々あって戦争もしたくない。
 かなり複雑だな。
 たぶんこの国にも主戦派と和平派がいるのだろう。
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