異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った知識は魔王級。家族に捨てられたけど、世界法則には気に入られた。プログラム的呪文で最強無双~

喰寝丸太

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第5章 魔戦士編

第253話 インク開発と、記憶と、催眠暗示

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 試験期間はまだ続いている。
 マーカー魔道具は抜群の売れ行きだ。
 ただ問題が幾つかある。
 魔法は召喚魔法なので、握り部分のインクが無くなっても、どこかから拝借してしまう。
 そうなると魔力を沢山消費する訳だが、気づきづらい。
 拝借された側も困るが、拝借する側も困る。

 もちろん長時間放置したようなインクでないと、召喚できない。
 この長時間放置が曲者だ。
 腐ったインクでも召喚してしまう。

 インク残量が少なくなったら、警告の光を発するようなプログラムを組む事にした。
 インクは握り部分に入れるのではなく、ガラスの瓶に入れて机の上に置くのが良いだろう。

 便利なんだか、不便なんだか、分からない物になってしまった。
 切り換えスイッチを付けて、3色ペンも出来上がった。

「タイトさん、マーカー魔道具でかなり儲けましたよね?」

 ベスは何かを期待しているような感じだ。
 奢ってほしいんだよな。

「マーカー魔道具をただで提供する」
「ケチ」
「妹よ。それでも破格だぞ。マーカー魔道具は1つ銀貨1枚はするんだからな」
「兄さん。文房具貰って嬉しいですか?」
「嬉しくはないが家計に優しいぞ」
「でもインク代は変わらないのよ。ペン代が浮いただけじゃない」
「そうだな」

「便利になってインクの消費も増えて、却って赤字かも」

 安価なインクの開発が求められるか。
 そんなの魔法の領分じゃないな。

 墨がすすにかわから作られるのは知っている。
 油性ペンキなんかだとシンナーが入っている。
 化学製品を作るのは俺の知識じゃどうにもならない。

 油絵がアマニ油と顔料で描くのも知っているが、画材屋で高かった記憶がある。
 顔料が高いんだよな。
 科学技術が発展してないこの世界では、顔料を安く手に入れるのは難しいか。
 モンスター素材も安くないし。

「オルタネイト伯に期待だな。魔法陣を描くのにインクを沢山作っている。安価なインクもそのうち出来るだろう」

「ふはぁ、僕は駄目だ」

 ベークがため息をつきながら現れた。

「ノート作戦はやったが、一夜漬けじゃどうにもならないか」
「その通りだ。何か良い方法を、哀れな僕に」

「自分で考えろ」
「そんな」

「ヒントを与えてやる。攻略ノートはあるんだから、魔法で記憶する」
「どうやって?」

 魔導師なら魂に記録するところなんだろうがな。
 ベークに神秘魔法名の秘密は話していない。
 魔導師の資格が取れたら教えてもらえるだろう。

 ベークが魂の存在に気づくか見物だ。

「考えろ」
「うーん、催眠術で暗示を掛けて覚える?」

 また、意味不明な事を言い始めたな。
 でも実現は不可能じゃないかも。

「面白い。やってみろ」
「コネクタ頼む」

「よし、【催眠暗示12+34×56-78=1838覚えろ】」
「掛かったのか」

「12+34×56-78は?」
「1838。コネクタ、正解か?」

「うん、ばっちり」
「やった。暗記に苦労せずに済むぞ」
「魔力が足りればな」
「タイトさん、良い突っ込みです」

「僕には新魔法がある」
「俺の魔法を翻訳した奴ね。魔法を自分で構築するんだな。俺は手を貸さないぞ」

 ベークは悩み始めた。

「ええと最初は『外部にありて、』でいいとして、ここからどうするんだ」
「催眠暗示の魔法に返答が必要なら作る。でなければ返答はなしで良い」
「続きは『返答はなしの催眠暗示、贄は』。ええと」
「催眠暗示に何を覚えさせるのかだ」
「となると続きは『贄は文章。応えを魔法に求めず、何も渡されず。疾く魔法開始せよ。催眠暗示、』でどう続けたら良い?」
「何を催眠暗示させるかだな」
「仮に『「覚える文章」を渡せ。』としておいて、最後に『われ魔法終了せし』で良いのか」
「よし最初からやってみろ」

「【外部にありて、返答はなしの催眠暗示、贄は文章。応えを魔法に求めず、何も渡されず。疾く魔法開始せよ。催眠暗示、「覚える文章」を渡せ。われ魔法終了せし】これでどうだ」

「良いんじゃないか。上出来だよ」
「兄さん。これはかなり秘術なのでは」
「妹よ、そうだな。ベークに感謝だ」

「よし、みんなで暗示を掛けまくろう」

 脳みそがパンクしなきゃ良いけどな。
 しかし、ベークが新しい秘術を作り出す存在になるとはな。
 まだ俺の助けがないと呪文は作れないが、そのうち自分で作れるようになるだろう。

 暗記問題はそれで良いとして、応用問題が解けないな。
 応用問題は配点が多いんだぞ。
 良い気分のところ水を差すのも悪いから言わないけどな。

 リッツは今日、ソレノとデートだと聞いている。
 出遅れているぞ。
 まあ、ベークと仲がいいから、あとでこの呪文を教えてもらえるのだろうけど。
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