異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った知識は魔王級。家族に捨てられたけど、世界法則には気に入られた。プログラム的呪文で最強無双~

喰寝丸太

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第4章 盗まれたスペルブック編

第242話 オルタネイト伯と、探求と、決戦

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Side:ファラド当主

 反乱が全て失敗に終わった。
 もう手駒はほとんど残ってない。
 これからは雌伏の時なのだろう。
 魔導師が1人でも生き残っているうちは負けではない。
 何度でも出直す事が出来る。

「おい、誰か」

 ローブを着た魔導師が現れて、かしずいた。

「はい、ここに」

「王国の状況はどうなっておる」
「王族は魔導師の全てを殺すつもりはないようです。罪を犯していない魔導師は赦すそうです」
「ふむ、どうするべきか」

「スナップ地方にオルタネイト伯の密偵が多数放たれました」
「何っ!」

 オルタネイト伯はわしを許すつもりはないようだ。
 たかが妻の一人を殺されたぐらいで、そうムキになる事もあるまいに。
 オルタネイト伯は理性的な男だ。
 魔導師の有用性は見抜いておるに違いない。
 だが、わしの首は欲しいのだろうな。

「タイトめの動向は?」
「こちらに一直線に向かっています」
「仕方あるまい。外国にいる魔導師をここへ集合させろ」
「はい、ただちに」

 タイトのスペルブックを手に取る。
 『void』とは何だ。
 何を意味する。

 『{』に何の意味が。
 分からん。
 対になっている『()』と『{}』は台詞に使う鍵括弧みたいなものだろう。
 スペルの中にさらにスペルがあるのか。
 どう考えても分からん。
 わしにはこれが魔法の神との会話に思えてならない。

 執務室を出て実験室に行く。

「魔導師の死因は分かったか?」

 ここでは王都で一斉に死んだ魔導師の遺体を調べておる。

「分かりません。噂では王家所蔵の神器が使われたと言われてます。大量の魔石が代償のようです」
「分かっておる。報告書は読んだ」
「死ぬ前に体重を計っている魔導師がおります。死んだ後もさほど体重は変わってません。毒の類ではないですね。魔導師のみ死んでいます。死の天使でも呼び出したのでしょうか」
「異界からの召喚は成功した事がない」

「魔導師の中には、天界には生きている者の全てが載っている名簿があって、それが操作されたと言う者もおります」
「たわごとを」

 迷信を信じてどうする。
 魔法の探求は理の探求だ。
 その証拠に、火の燃え方が分からない者には、火の魔法は使えん。
 万事がそれよ。

 わしは、魂の存在すら疑っておる。
 魂という実体のない物でなく、魂という器官があるとな。
 悪事をすれば魂が穢れると宗教家は言うが。
 神の罰で死んだ者はおらん。

 何かがあるのだろうが、分からん。
 死ぬ前から体重計に乗せて死んでも、針は動かん。
 魂が抜けているのなら、針が動くはずだ。

 魂とは何だ。
 実体のない物に魔法が影響を与えるのか。
 魂があるのなら幽霊がいるはずだ。
 幽霊を見たという人間は多いが、捕まえた者はおらん。

 この世界は神がみる夢だという説もある。
 夢なら不合理も通るのだろう。
 確かに魔法は不合理と言える理を捻じ曲げておるのだからな。
 夢に過ぎないのか。

 いや、わしは生きておる。
 こうして自分の意思で考える事が出来る。
 生きている証拠ではないか。

 修練場に場を移す。

「【神の夢を覚ませ】、ふんやっぱりな。神の夢などはない」

 そうだと思っていたわい。
 夢の世界で生きているなぞありえん。

「【魂を可視化せよ】、何も目には映らないな。この説もないか」

 死んだ者の魂が漂っていそうなものだが、やはりないな。
 実在するもので解けていない謎はまだある。

 特殊能力がそれだ。
 空間魔法使い、姿隠し、その他に多種多様な特殊能力がある。
 魔力による力でない事は分かっている。

 個性と言ってしまえばそうだが、その特殊能力は魔法にも影響を及ぼす。
 まるで天から与えられた恩恵だ。

 神秘魔法名は誰が決めているのだろう。
 重複がない事から、管理している存在か、それに類する物があるに違いない。

「【生きている全ての者の名簿を見せよ】。無いか。やはりな」

 あっても、人間には軽々しく見せられないか。

「外国にいる魔導師の手配は済みました。大急ぎでこちらに向かっています」

 部下の魔導師が報告にきた。

「ご苦労」

 決戦か。
 仕方あるまい。
 ここは聖地なのだ。
 ファラド当主の名において死守せねばならん。
 ファラドの名に栄光あれ。
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