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第4章 盗まれたスペルブック編

第230話 サンルームと、一人と、抹殺指令

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 季節は7月、おも研の新入生達は模擬実戦に出発した。
 模擬実戦とは魔法を使ったサバイバルゲームもどきだ。

 俺達は行かない。
 俺は魔法でガラスの部屋を、寮の部屋に隣接して作った。
 扉を魔法で隠すのを忘れない。

 暑い夏にサンルームと思うだろ。
 そこはエアコンの魔道具をつけて部屋を冷やしてある。
 魔力の無駄遣いだが、別にいいだろう。

 サンルームでくつろいでいたら、外でマイラが叫んでた。

「どうやって入るの!」
「秘密さ」
「何で意地悪するの。このなの叩けば、壊れる」

 壊して入ろうとするとは思わなかったな。
 俺はマイラをサンルームに入れてやった。

「魔法で扉を隠すなんて反則よ」
「ですね」

 レクティも入ってきた。
 精神魔法はマイラ限定だからな。
 もっともレクティの魔力の高さだと効果がないだろう。

 あれっ、扉の姿隠しはどうなった。

「扉は隠しておいたはずだが、レクティはどうやったんだ」
「壁のそこだけ存在感がなくなっていたら、誰でも気づきます」

 穴が開いたみたいになっていたのか。
 そりゃ、気づくよな。
 もしかして、姿隠しを使って部屋でくつろいでいても気づかれない?

 マイラは駄目だ。
 空気の流れでいる事が分かる。
 結局、一人にはなれないのか。

「そうか、失敗したな」
「分かります。一人になりたいのですよね。お父様もたまにそう愚痴をこぼします」

 俺の感情を読み取ったのかレクティがそう言った。

「ええー、そうなの。言ってくれれば、いいのに」

「まあ、なんだ。隠れ家を作ってみたかったんだ」
「二人だけの隠れ家。作ってみたい」

 マイラ、俺が欲しいのは一人だけの隠れ家だ。

「パニックルームは必要ですね」

 それも違う。
 シェルターが欲しいんじやない。
 一人になりたいんだ。

「あー、3人でいちゃいちゃしてる」
「私も入れてほしい」

 結局、全員が揃うんだよな。
 やっぱり、地下室か。
 湿気なら魔法で何とかなる。
 日差しも屋根から魔法で光を曲げて取り入れるのも可能だ。

 仕方ないのでサンルームは解放した。
 リニアが特に気に入り、肌を焼いている。
 半裸でサンルームの中にいるのはやめて欲しい。
 すっかりリニアに占拠されてしまった。

 地下室を作ると絶対にばれるな。
 何か一工夫が必要だ。
 いっその事、ツリーハウスでも外に作るか。

 学園内の木に勝手に作ったら怒られるだろうな。
 許可取るとばれそうだ。

 そんな事をしなくても、空いている部室を借りて、私物を持ち込めば。
 姿隠しを使って出入りすれば、部屋の位置はばれないはず。

 秘密裏にカソードに部室を借りた。
 ソファーとか本だなとか色々な物を持ち込む。
 ふぃー、やっと一人になれた。

「タイト様、アヴァランシェ様がお待ちです」

 ダイナが俺を呼びに来た。
 何でここが分かったんだ。

「私も行く」

 マイラまで現れた。

「どうやら一大事のようですね」

 レクティが現れて言った。

「荒事なら任せなさい」

 リニアも現れた。

「みんな酷い。私だけのけ者にして」

 最後にセレンも現れた。
 みんなこの部屋を知っていたようだ。
 気を使ってくれたのかな。
 休憩は終わりだ。

 どうやら戦場が待っているらしい。
 マイラとレクティとリニアの雰囲気から、それが察せられた。

 王宮に行く途中、みんなから話を聞く。

「どういう事か説明して」
「ではわたくしが、魔導師で盗みをやっていた一派が攻めてきます。透明腕と呼ばれる一派だそうです」
「なんかザコの匂いがするな」
「ええ、やっている事は盗賊ですから。魔導師でない盗賊の手下も多数いるようです」

「補足はある?」
「奴らの狙いはタイトだよ。抹殺指令が出ている」
「マイラの密偵は優秀だな。やつらの命令を調べたのか?」
「透明腕の手下はスラムにもいるから」

「リニアは何で分かったんだ」
「私の中の野生が教えてくれたの。戦いが近いってね」

 リニアも侮れないな。
 情報を整理すると、盗聴をやってたのはこの一派で間違いないようだ。
 方針転換の理由はなんだ。
 ウィルスがばれたのかな。

 だとすれば厄介だ。

「私だけ情報がない」
「セレン、落ち込む必要はないよ。俺だって何も知らなかった」
「でもタイトは戦力が桁違いだから」

「メテオ魔法完成したんだろ」
「ええ」
「屋外なら無双できるはずだ」
「頑張る」

 セレンの機嫌が直ったところで王宮に着いた。
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