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第4章 盗まれたスペルブック編

第228話 必滅矢の使い手と、抹殺司令と、疑心暗鬼

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Side:ファラド当主

 何で上手くいかん。
 何もかもだ。
 タイトのスペルブックの解析もほとんど進まん。

 魔導師は謎の病気でばたばたと死んでいく。
 末端の魔導師がいくら死んでも構わんが、それでも限度がある。

 もしかして、タンタルの報告にあった必滅矢の使い手の仕業か。
 だとすれば犯人はタイトだ。
 しかしだ、遠く離れた所に届くわけがない。
 しかも複数同時だ。

 そんな事が出来るとすれば神だ。
 だが、出来るかも知れん。

『透明腕おるか』

 わしは、伝言魔法で透明腕に声を掛けた。

『いますぜ。何か御用ですか』
『タイトの所の盗聴を、しばらくしたら切り上げて、抹殺に移行しろ』
『よろしいので?』
『構わん』

 必滅矢についての考察を読む。
 防御不能。
 そんなわけがあるか。
 絶対にカラクリがあるに決まっとる。

 分からん。
 これは特殊能力という奴か。
 姿隠し、空間転移、どれも特殊能力だ。
 他にも色々と確認されている。

 特殊能力は遺伝だと考えられておるが、絶対ではない。
 世界の秘密は解けないとでも言うのか。

 タイトめは解いているような気がする。
 特殊能力全種類、そんな能力なのだろうか。

 わしは、執務室を後にして修練場に向かった。
 防御を貫通する魔法は簡単だ。
 武術の達人は、鎧の上から殴って、内臓に衝撃を与える事が出来る。
 おそらく振動だろう。

 わしは魔法で振動を作り出した。
 頭ほどの果物を持って来させ、かぶとを載せる。
 そして魔法を使い振動で衝撃を与えた。

 果物を割ると内部は破壊されている。
 違う。
 変死した魔導師に外傷や内傷はなかった。

 むっ、どんな物でも貫通する魔法がある。
 伝言魔法だ。
 建物の中だろうがお構いなしだ。

 タイトが伝言魔法に攻撃を付与したのだろうか。
 ならばそれは精神攻撃ではないのか。

 それなら防げないのは分かる。
 外傷と内傷が無いのも納得だ。

 だが、伝言魔法に攻撃を付与など、どうすれば出来るのだ。
 分からん。

 そこは特殊能力なのか。
 では防げないという事か。
 もはや打つ手がないのか。

 いいや、伝言魔法を拒否すればよい。
 確かそんな魔法があったはず。
 何人かに試そう。

 しばらくして。

「伝言魔法禁止の魔導師が変死しました」
「何だと」

 ふむ、推察が間違っていた訳だ。
 伝言魔法は関係なかったのだな。

 もしかして、殺害手段は複数なのか。
 複数の手を用意しておくことは重要だ。
 複数なら、防ぐのは容易ではない。

 伝言魔法を禁止しよう。
 これで、一つ可能性を消せる。

 そして。

「伝言魔法を禁止するのは、お辞め下さい」
「なぜだ?」
「伝言魔法を使った魔報は、魔導師の重要な収入源のうちの一つです」

 ふむ、それは上手くないな。
 結局、魔導師殺害は防げないのか。

 まあ、いいか。
 わしが生き延びるのが、重要。
 わしだけ伝言魔法を禁止しよう。
 これで可能性が一つ減らせた。

 振動魔法に対する手は、虚空魔法だな。
 虚空を作りだせば、防げる。
 これは魔法でなくともよい。
 金属の中に虚空を作りだせば、ずっと保持できる。
 この材料で建物を覆うとするか。

 変死は病気という事も考えられる。
 狂犬病を使った攻撃が記憶に新しい。
 毒みたいにピンポイントを狙う病気があるやも知れん。

 病気は接触したり、近くにいたりするとうつる。
 近くに人を来させなければいいだけか。
 簡単な対処だ。
 話すのに大声を出さないといけないのは不便だが、致し方あるまい。

 他にはないか。
 毒は警戒しなくていいだろう。
 毒見もおるし、料理人も魔導師だ。

 恐ろしい事に気がついた。
 もしかして、魔力の病気、もしくは魔力の毒か。
 いや、他人の魔力は防ぐ。
 特に魔導師は魔力が高い。

 高い魔力で防ぐと不味いのか。
 いいや、貴族も死んでおらん。
 だが、有効範囲があるかも知れん。

 病気とて近づかなければ罹らん。
 毒も体内に入れなければ問題ない。
 魔力の病気と毒も同じか。
 人を近づけさせなければ良いのか。

 はっ、これがタイトの策か。
 疑心暗鬼にさせて、魔導師の弱体化を計る。

 仮説を試すのは容易だ。
 一つずつ検証して問題のない可能性は無視しよう。
 でないと業務に支障をきたす。

 魔導師に対する攻撃が何なのか見極めねばなるまい。
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