異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った知識は魔王級。家族に捨てられたけど、世界法則には気に入られた。プログラム的呪文で最強無双~

喰寝丸太

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第4章 盗まれたスペルブック編

第220話 ダンスパーティと、火事と、タイト・マイラ結婚記念ホール

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 学園は5月、ダンスパーティの季節だ。
 催し物は出会った順番でパートナーを務めるという事で今回はマイラだ。

 星崇拝教団は今のところ沈黙を保っていた。
 こういうイベントの時は何か起こるような気がする。

 マイラと腕を組んで会場入りをする。
 まばゆいばかりのシャンデリア。
 ゆったりとした音楽を奏でる楽団。

 どこも異常はないな。

 俺とマイラは音楽に合わせて踊り始めた。

 突然、扉が閉められる。

「開かないぞ」
「こっちもだ。くそう、閉じ込められた」

 どうやら始まったらしい。
 そして外が明るくなった。

「きゃあ、火事よ」

 火を点けたのか。
 まったく。

 俺は扉に向かって石の砲弾を魔法で撃ち出した。
 轟音と共に扉が砕け散る。
 外にはバリケードも作られていたようだが、粉砕されたらしい。

 中に居る人間が次々に逃げ出す。
 俺とマイラが外に出ると、犯人は逃げ去った後だった。

「蜘蛛がいる」

 舌打ちしてそう言うマイラ。

「レクティ」

 俺は暗闇に話し掛けた。

「犯人ならもう分かっていますわ。星崇拝教団です。神官が次々に死ぬので、焦れたようです」

 やっぱり、レクティが出て来た。
 マイラの視線と言葉でいるのが分かったのだ。
 セレンとリニアもいる。

「お粗末な計画だ。火事ぐらいじゃ俺達は死なないのにな」
「死の恐怖に、正常な判断が出来なくなっているようです。王家の影にはもう通報済みです」

 やる事がないな。
 火事を消すか。
 魔力100万のパワーで水を生み出し火を消す。
 何度か繰り返すと、火は完全に消えた。

「パーティ会場のダンスホール再建のための寄付を出すとしようか」
「私も出すわ。もう一回やり直しをしてもらわないと」

「ずるい。次は私なのに」
「マイラ、やり直しはセレンに譲ってやれ。その代わりに建て替えたダンスホールで一番に踊ろう。観客なんかいないでもいいだろう」
「分かったセレンに譲ってあげる。こけら落としの1番最初は私よ」
「ではわたくし達も練習で」

「うん、みんなもと踊るよ。楽団も手配しよう。金を使わないと経済が回らない」

 レクティの部下が報告に来た。
 魔導師は全て死んでいたそうだ。
 原因は急死防止の魔道具だ。

 死の恐怖が訪れる→急死防止の魔道具で精神が安定する→だが同僚が死ぬ→死の恐怖が訪れる→急死防止の魔道具を追加して精神が安定する。
 こんな無限ループだ。
 精神を安定させるほど死の時期が早まる。
 俺が作っている魔道具には全てウィルスが仕込んであるから、犯罪を犯して逃れられる魔導師は少ないだろう。
 俺が作った魔道具は性能が段違いだからな。
 使わない手はない。

 そして、学園内の星崇拝教団は消滅した。

 ダンスホールの建て替えを視察していたら、逆さ五芒星のワッペンを付けた作業員を見た。
 懲りない奴らだな。

「色んな細工がされているよ」

 一緒に来たマイラがそう言った。
 ダンスホールの建て替えに細工をしているらしい。
 今度こそ俺を殺そうというのだろうか。

「レクティ、建て替えが終わったら、細工を無効化しておいてくれ」
「お任せを」

「一見無効化が分からないようにな」
「承知しております」

 レクティの所はプロの集団だからな。
 心配はしてない。

 俺は入口にあるダンスホールの名称を何気なしに見た。
 『タイト・マイラ結婚記念ホール』とある。
 何だって。

「これが金の力」

 セレンが驚いている。
 俺以上の金をマイラは出したらしいな。
 ちょっと恥ずかしいが、仕方ないな。
 外せとも言えないし。

「ちょっと手が滑って表札を壊しちゃうかも」

 と冗談を言うリニア。

「第一の表札が倒れても、第二、第三の表札が蘇るであろう」

 胸を張ってマイラがまぜっかえす。

「くっ、勇者は負けない」

 リニアよ、表札と戦うなよ。
 中に入って控室を見ると、そのうちの一つに。
 『タイト様、レクティ様、ご夫婦様の控室』とある。

 レクティもこそっと寄付したんだな。

「くっ」

 リニアが悔しそうだ。
 セレンは呆れている。

「責任者、タイトと私の控室も作って、金に糸目は付けないわ」

 マイラが責任者を呼ぶ。

「くっ。軌道に乗って来たアリの素材取引の儲けを回せば」

 リニアが迷っている。
 財力でマイラとレクティに張り合うのは、やめとけよ。

「リニアさん、諦めましょう。私達には無理よ」
「くっ、いつか」

 リニアよ、いつかリベンジが叶うといいな。
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