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第3章 狂戦士の守護者編

第173話 謁見と、検証と、神の力

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Side:ファラド当主
 ここはファラド一族の本拠地の最奥。
 秘密の謁見室。
 わしは円卓に着き、周りを見回した。
 席は五つあり、そのうちの二つは空席になっている。

 隣の席は空席で、その隣の席には白衣を着た男が座っている。
 そして、空席があり、盗賊風の身なりの男が座っている。

「仮面が死んだ。力なき者は淘汰される」
「お館様、お下知を」

「タイト・バラクタ、奴の情報は集まった。白衣よ、裏切り者のリニアを殺すのだ。透明腕よ、タイトのスペルブックを盗み出すのだ」
「了解しました」
「おう」

「では去れ」

 二人の幹部が去って行き静寂が辺りを支配した。
 目下の敵は、反魔導師組織レジスタ、オルタネイト伯爵、王家とそしてタイトだ。
 これにリニアが加わった。
 失敗作のリニアなど恐れるに足らん。
 やはりタイトが厄介だ。
 しかし、スペルブックを奪えば奴の知識はわしの物。
 新たな力を得れば世界征服さえ可能かも知れん。

 後ろの幻の壁をすり抜け、秘密の謁見室を出て、廊下を歩く。
 扉を開けて実験動物の部屋に入った。

 ふむ、タイトはキメラになったリニアは二つに分けたのだったな。

「実験動物をここに」
「はい、ただいま」

 ウサギの体にいくつものネズミの頭が付けられた検体が運ばれてきた。

「【神秘魔法名を用いて魂を分離せよ】。むっ駄目か」
「たぶん、魔法に抗っているのだと思われます」

「実験体は人間ではないと駄目か」
「リニア以外の人間で生きて融合を成し遂げた者はおりません」
「ふむ、相性の問題か」
「はい、そのように思われます」

「融合していない人間の魂を魔石に移す事は可能か?」
「いいえ不可能です。魔石は元々モンスターの物。人間では馴染みません」
「ふむ、モンスターではどうだ?」
「モンスターは拒絶します」

 やはり、タイトは魔導師の何歩か先を行っておる。
 口惜しいが仕方あるまい。

 部屋を出て、修練場に向かう。
 小石を目の前に置いて。

「【小石の重力を断ち切れ】。ふむ、これも駄目か」

 重力とは如何なる力なのだろうな。
 重さの力というのは言葉から分かる。
 しかし、重さが何だというのだ。

 物に重さがあるのは当たり前ではないか。
 言葉が分かっても本質を理解してなければ駄目か。
 良くも悪くも魔法はイメージ。
 イメージ出来ない現象など操れる訳もない。

 タイトが呟いた。
 プログラム的魔法。
 プログラムとは何だ。

 分からん。
 未知の概念であろうとは思うが、皆目見当がつかん。

「【電撃よ進め】。これも駄目か」

 電撃を出すところまでは上手くいく。
 電撃は冬の乾燥した時などに起こるのは知られておる。
 夏の雷もな。

 しかし、自在に動かすとなると話が違う。
 金属に流れるのは知っておる。
 人間の体にもな。

 しかし、空気中を狙った通りに動かすのは難しい。
 やはり、イメージの問題か。
 ふむ、研鑽が足りないようだ。

 階段を上がり、書斎へ。
 透明腕から報告が来ている。
 早いな。

 リニアを殺害したタイミングでスペルブックを奪う計画らしい。
 ふむ、承認しておこう。


「お爺様、なぜ星は回るのですか」

 孫のラチェッタが駆け込んできて、わしに質問をぶつけた。

「おう、ラチェッタよ。それはわしにもわからん。神々が魔法で動かしているのかも知れん」
「そうなのですか。星を動かすには一体どれほどの魔力が必要なのでしょう」
「途方もなく大きいのであろう」

 星の運行は前から気になっておった。
 惑星の動きがどうやっても説明できんからだ。
 魔力で動かしているのは良い。
 しかし、不規則なようでいて規則性がある。
 秘密があるようだが、分からん。

 日食でさえ、その原理が分からんのだから。
 この世の謎を解き明かしたい。
 叶わぬ夢だろうか。

「お爺様、聞いていらっしゃいます?」
「すまん、考え事をしておった。なんじゃ」

「星は燃えて光っているのですよね」
「そうだな」
「燃え尽きないのですか」
「人間の魔力も時が経てば回復するだろう。神々も同じだ。神々は尽きぬ魔力をもっておる」
「魔法で燃やしているのですね」

 ふむ、尽きぬ魔力か。
 魔法使いの理想だな。
 そう言えばタイトの魔力の底はどれぐらいだ。
 魔力切れになったという報告はない。

 奴の魔力も無尽蔵なのか。
 そんなはずはない。
 神ならいざしらず、人間が無尽蔵などという事は有り得ん。
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