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第2章 実家ざまぁ編

第118話 ディナーと、赤外線と、魔力発振

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「お招き頂き、ありがとうございます」

 招待されたディナーでマイラがランシェにぎこちなく挨拶する。
 テーブルマナーは教えたけどどこまで身についたか。

「見たように身内だけの席である。もっと砕けても構わん」
「お気遣い感謝します」

 俺はマイラの席を引いてやった。
 マイラが座る。
 まだ緊張しているな。

 俺も座り、食事が始まる。
 前菜が運ばれてきた。
 通信魔法でマイラに細かく指示を出す。
 ミスなく食べている。

 もっとも粗相したところで、ランシェが罰するような人だとは思えない。
 スープが運ばれてきた。
 マイラが音を立てて飲む。

 ランシェは笑っていて、咎めたりはしない。

「ところで、魔法陣の技術は教えてくれないのであるか?」
「オルタネイト伯爵と交渉してくれ。伯爵にもろもろの権利を譲った」
「であるか。貴族が持っている権利を侵害すると外野がうるさいであろうな」
「そうだね。手ぶらなのも何だから、今日は赤外線の魔道具を持ってきた」
「赤外線とな。初めて聞く言葉であるな。詳しく説明致せ」

 料理は魚料理に移っていた。
 マイラは骨と格闘している。
 指を使い始めたな。
 仕方ない奴だ。
 マイラに通信魔法を送り、ナプキンで指を拭いてやった。

「見えない光があるんだよ。それを見る。暗闇でも見えないから、隠密行動にぴったりだ」
「後で存分に試すと致そう」

 それから話はバリアブルの話になった。
 タンタルは相変わらず、召喚には応じていないらしい。
 バリアブル領の閉鎖は今も続いている。

 ソルベが運ばれてきて、マイラが一口で平らげる。
 落ち着いて食えよと言いそうになった。

 肉料理、デザートと続いてお茶が運ばれてきて、ディナーは終わった。

「マイラと言ったか、そちは戦闘が得意と聞いておる。どうだ、暗部の指揮をとってみないか」
「まだ若輩者なので手に余ります」

「タイト、そちが言わせておるのだろう」
「ばれましたか。戦闘能力はともかくマイラには無理だと思う」
「そうであるか。タイトが言うのであればそうであろう」

「やらせるなら、レクティの方が適任だと思うな」
「オルタネイト伯の息女であるか。政治的にはちとな」

「そんなに人材が不足しているの?」
「ひも付きでない優秀な人材がおらんのだ。滅多な者には任せられんのである」
「分かったよ。今後、候補がいたら、連れて来る」
「頼んだのである」

 王宮を後にして学園の寮に馬車で帰る。

「緊張したぁ。食事の味がしなかった」
「いい経験になっただろ」
「うん。むっ、閃いた」

 マイラは紙と絵の具と筆を収納魔法から取り出すと、魔法陣を描き始めた。

「出来た」
「機能しているかな」

 簡単な測定の魔道具で色々と計測する。
 魔力が出てるな。
 一定の波長だ。

 もっと詳しく調べないと分からないが、前世で似たような物があったな。
 そうだ、水晶発振だ。
 これは凄いぞ。

 デジタル機器が作れる。
 水晶発振なくしてコンピューターは語れない。
 前世で死んだ時はセラミック発振を使っていたらしいが、とにかく応用が広い。

 簡単なのを作るとしたらデジタル時計だな。
 他の魔法陣と組み合わせれば出来るだろうが、今はパーツが足りない。
 それは追々でいいだろう。

「マイラ、凄い物を作ったな」
「えへへ」

 本当にマイラは侮れない。
 奇想天外な事をやらかす。
 天才とはマイラみたいな人を言うんだろうな。

 いや鬼才か。
 どっちでいいや。

 カウントする魔法陣はないので、それを待つ事にする。
 オルタネイト伯爵の研究班が見事、一緒に使うとカウントする魔法陣を発見。
 表示する魔法陣と合わせて、時計が出来た。

 腕時計が銅貨10枚ほどで生産できるようになったのだ。
 腕時計は爆発的に売れた。

 魔法陣を描く絵の具の副産物である安い薬も好評だ。
 オルタネイト伯爵の名声も高まる事に。

 だが、嫌なニュースも入って暗雲が立ち込めて来た。
 地雷を街道に埋めた奴がいるらしい。
 たぶん、盗賊の仕業だと思う。

 売った奴がいるはずだ。
 国には対処してもらいたい。
 俺も出来る限りの事はするけど。
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