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閑話集その1
第68話 私だけのヒーローと、下水道と、ネズミ
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Side:マイラ
久しぶりにタイトと離れて別行動。
それというのもスラムの友達に会いに行くからなの。
スラムの住人と普通の街の人ではどうしても垣根がある。
私は気にしないのだけど、これから会いに行く人はそうでもない。
別に邪険にするほどの事はしない。
ただ言動に少し引っ掛かりみたいな物を感じるのよ。
街の人はそれを感じ取ると不快に思うらしい。
タイトはそういう人じゃないと信じているけど、タイトが不快な思いをするんじゃないかと思うと、私が嫌だ。
「このお菓子を包んで」
「へいよ」
露店でお土産のお菓子を買う。
お菓子は平べったい丸いパン二つにクリームを挟んだ物。
とっても美味しそう。
勝手知ったるスラムを悠々と歩く。
友達の家に到着した。
「久しぶり」
スラムの私と同年代の友達に挨拶した。
「ごめん。弟達が下水道の中に遊びに行って帰って来ないの。探しに行かないと」
「私も手伝うよ」
「二手に別れましょ」
「ええ」
私は灯りの魔道具を起動して下水道に入った。
腐ったような臭いが立ち込めている。
好んで入るような場所ではないわね。
下水道の中は幾つも分岐している。
地図があればいいのに。
無い物を言っても仕方ないわ。
灯りに照らされて何かが動いた。
「ひっ、ネズミ!」
私は小さい頃、ネズミに齧られた事がある。
それからネズミを見ると何にも出来なくなってしまうの。
硬直した私を無視してネズミは暗がりに消えて行った。
「驚かせないでよ」
勇気を振り絞り、歩を進める。
その時、大きな黒い塊が動いた。
何っ?
それはネズミの塊だった。
「ひゃー」
パニックになって、腰に付けた魔道具を手あたり次第、起動させる。
運よく電撃1000発の魔道具を起動する事が出来た。
ネズミの半数は感電して動かなくなり、残りは逃げて行った。
もう出て来ないわよね。
あんなのが出て来るなら次は逃げよう。
硬直しなければだけど。
子供達を探して、下水道の中を彷徨う。
何か動いた。
さっきのネズミの塊より大きい。
そして灯りに照らされたのは、熊ほどもあるネズミだった。
しかも体には小さいネズミを張り付けていて、それが蠢いている。
「ひっ、ひぃー、助けて。タイト、助けて」
「はいよ。【大電撃】」
下水道一杯に電撃が広がり、ボスネズミを飲み込んでいく。
ボスネズミとネズミ達は黒焦げになって死んだ。
「えーん、怖かったよ」
私はタイトに抱きつきながら言った。
「マイラが怖がるところ初めて見たよ」
「ネズミが嫌いなのよ。あの生物は許せないわ」
「そう。ハムスターならペットとして飼っていた人がいたっけ」
私は身震いした。
ネズミをペットとして飼うなんて。
「信じられないわ」
「ハムスターってこっちには居ない。あっ、今のは忘れて」
「何だか分からないけど、忘れたわ。忘れたと言えば、お礼を言うのを忘れていたわ。タイト、ありがとう。でも何でここが?」
「SOSの魔道具を起動したじゃないか。忘れたの」
あの、パニックになった時だわ。
でも大急ぎで駆け付けてくれたのよね。
「そうだ。子供達を探さないと」
「それなら良い物があるよ【マナ痕跡探知】。魔力の痕跡を辿る魔法なんだ」
「道理で私を見つけるのが早いと思った」
「入口から追跡しよう」
入口に戻り、間違える事無く痕跡を追う。
すぐに子供達に出会えた。
「お姉ちゃんが心配してるわよ」
「嫌だ。遊ぶんだ」
「下水道にはね。熊ぐらいのネズミがいるのよ。君らなんか頭から齧られちゃうぞ」
「帰る」
「帰りたい」
「道を教えて」
「マイラ、誇張し過ぎだよ。あれはゴブリンぐらいだった」
「そんな事はない。熊ぐらいあった」
「そういう事にしておくか」
もう、気が利かないんだから。
魔法が好きでちょっと変わっているけど、いざという時は頼りになる。
タイトはやっぱり私だけのヒーローよ。
久しぶりにタイトと離れて別行動。
それというのもスラムの友達に会いに行くからなの。
スラムの住人と普通の街の人ではどうしても垣根がある。
私は気にしないのだけど、これから会いに行く人はそうでもない。
別に邪険にするほどの事はしない。
ただ言動に少し引っ掛かりみたいな物を感じるのよ。
街の人はそれを感じ取ると不快に思うらしい。
タイトはそういう人じゃないと信じているけど、タイトが不快な思いをするんじゃないかと思うと、私が嫌だ。
「このお菓子を包んで」
「へいよ」
露店でお土産のお菓子を買う。
お菓子は平べったい丸いパン二つにクリームを挟んだ物。
とっても美味しそう。
勝手知ったるスラムを悠々と歩く。
友達の家に到着した。
「久しぶり」
スラムの私と同年代の友達に挨拶した。
「ごめん。弟達が下水道の中に遊びに行って帰って来ないの。探しに行かないと」
「私も手伝うよ」
「二手に別れましょ」
「ええ」
私は灯りの魔道具を起動して下水道に入った。
腐ったような臭いが立ち込めている。
好んで入るような場所ではないわね。
下水道の中は幾つも分岐している。
地図があればいいのに。
無い物を言っても仕方ないわ。
灯りに照らされて何かが動いた。
「ひっ、ネズミ!」
私は小さい頃、ネズミに齧られた事がある。
それからネズミを見ると何にも出来なくなってしまうの。
硬直した私を無視してネズミは暗がりに消えて行った。
「驚かせないでよ」
勇気を振り絞り、歩を進める。
その時、大きな黒い塊が動いた。
何っ?
それはネズミの塊だった。
「ひゃー」
パニックになって、腰に付けた魔道具を手あたり次第、起動させる。
運よく電撃1000発の魔道具を起動する事が出来た。
ネズミの半数は感電して動かなくなり、残りは逃げて行った。
もう出て来ないわよね。
あんなのが出て来るなら次は逃げよう。
硬直しなければだけど。
子供達を探して、下水道の中を彷徨う。
何か動いた。
さっきのネズミの塊より大きい。
そして灯りに照らされたのは、熊ほどもあるネズミだった。
しかも体には小さいネズミを張り付けていて、それが蠢いている。
「ひっ、ひぃー、助けて。タイト、助けて」
「はいよ。【大電撃】」
下水道一杯に電撃が広がり、ボスネズミを飲み込んでいく。
ボスネズミとネズミ達は黒焦げになって死んだ。
「えーん、怖かったよ」
私はタイトに抱きつきながら言った。
「マイラが怖がるところ初めて見たよ」
「ネズミが嫌いなのよ。あの生物は許せないわ」
「そう。ハムスターならペットとして飼っていた人がいたっけ」
私は身震いした。
ネズミをペットとして飼うなんて。
「信じられないわ」
「ハムスターってこっちには居ない。あっ、今のは忘れて」
「何だか分からないけど、忘れたわ。忘れたと言えば、お礼を言うのを忘れていたわ。タイト、ありがとう。でも何でここが?」
「SOSの魔道具を起動したじゃないか。忘れたの」
あの、パニックになった時だわ。
でも大急ぎで駆け付けてくれたのよね。
「そうだ。子供達を探さないと」
「それなら良い物があるよ【マナ痕跡探知】。魔力の痕跡を辿る魔法なんだ」
「道理で私を見つけるのが早いと思った」
「入口から追跡しよう」
入口に戻り、間違える事無く痕跡を追う。
すぐに子供達に出会えた。
「お姉ちゃんが心配してるわよ」
「嫌だ。遊ぶんだ」
「下水道にはね。熊ぐらいのネズミがいるのよ。君らなんか頭から齧られちゃうぞ」
「帰る」
「帰りたい」
「道を教えて」
「マイラ、誇張し過ぎだよ。あれはゴブリンぐらいだった」
「そんな事はない。熊ぐらいあった」
「そういう事にしておくか」
もう、気が利かないんだから。
魔法が好きでちょっと変わっているけど、いざという時は頼りになる。
タイトはやっぱり私だけのヒーローよ。
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