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第1章 ニオブざまぁ編
第17話 計算魔法と、実技と、セレン
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勉強期間は終わり、新年を迎えた。
俺は7歳に、マイラは11歳に。
この世界には誕生日はなく新年に一斉に歳をとる。
マイラは成長期に入ったのか、頭半分ほど俺より背が高くなった。
もう、勉強は嫌だ。
魔法というプログラムに戯れている方がましだ。
魔道具は作っていたが、依頼と魔法を作る事はやってない。
俺はいったん横道に入ると勉強出来ないタイプだ。
試験勉強の合間に漫画なんか読むと、勉強そっちのけで漫画にのめり込む。
集中力は高いのだろうが、とにかく横道にそれると修正が効かない。
特に楽しい横道は駄目だ。
ずっぽり嵌って抜け出せない。
新年を超えて7日、いよいよ試験の開始だ。
最初の科目は計算。
筆算でも俺はそれなりだが今回は秘密兵器がある。
たとえば、12×6+5×4という問題があったとする。
以下の魔法で計算が出来る。
int main(void) /*最初にあるintで、整数を返すという定義づけ*/
{
return(12*6+5*4); /*計算した値を返す*/
}
魔法を実行すると俺の頭の中に答えが届く。
無詠唱でやっているので周りの人にも気づかれない。
普通に文章で『12掛ける6足す5掛ける4の答えを示せ』と魔法でやっても同じ事だが、プログラム的魔法とでは効率が違う。
それに『示せ』とやると、どこにどうやって示すのかが大変だ。
脳内に示すのならその原理が必要だ。
テレパシーとかのね。
プログラム的魔法ならそこは心配は要らない。
入出力はあって当たり前だからだ。
システムがやってくれるのが、当然になっている。
そこに疑問を挟む余地はない。
要するに俺が書いているプログラム言語のCではそういう仕様になっている。
システムがどのように動くのか確固たるイメージがある俺だから出来る事だ。
一度マイラにプログラム的魔法を教えたが発動しなかった。
『炎』という言葉を『水』という意味だと思っていれば『水』が出る。
プログラムが意味を持って動くと理解出来ていないと、文章として成り立たない。
ただの記号だ。
ただの記号では魔法は発動しない。
とにかく、計算の科目は満点で通過した自信がある。
二つ目は真理だ。
『火が燃えるのに必要な物を書け』と問題がある。
簡単だな。
『温度』、『酸素』、『燃焼物』だ。
水を熱するとどうなる。
これも簡単だ。
『一気圧の条件では100度になると沸騰して水蒸気になる』と書いた。
こんな感じの簡単な問題をすらすらと解いた。
これも満点の自信がある。
情報は暗記問題なので、今までの勉強の成果に掛かっている。
そこそこ出来た自信がある。
2科目満点で1科目そこそこなら、かなり良い方だと思う。
さあ、最後の科目の実技だ。
身体検査され、魔道具の持ち込みがないか調べられてから、会場に入った。
「呼ばれたら、的に向かって魔法を放って下さい」
試験官がそう俺達に伝えた。
「では、220番のリッツ君どうぞ」
「はい、いきます。【火球よ的を穿て】」
的が動き始める。
直線的に進む火球は、的に当たらなかった。
「はい、結構です。次は221番のセレンさん」
進み出たセレンは灰色の髪で赤い瞳の中学生ぐらいの女の子だ。
的が動き始める。
セレンはスペルブックを開くと呪文を唱えた。
「はい、【火球生成】【飛べ】【右に】【すこし左】」
おお、誘導弾だ。
火球は的に当たって的を焦がした。
「はい、結構です。次は222番のタイト君」
的を交換して、的が動き始める。
「はい」
俺はスペルブックを開くと、無詠唱で50センチほどの火球誘導弾を撃った。
的に見事命中して、どよめきが上がる。
「素晴らしい」
俺の出番は終わったので出口に行くと、先に試験を終えたセレンが待っていた。
「見てたわ。あれはどうやったの」
「教えられない」
「私の技術を教えるから、交換しない」
「それなら少しぐらい良いかな」
「私の誘導弾はね。短縮詠唱を使っているの。『火球生成』の詠唱のところで『魔力10を用いて魔力を燃料に点火。10センチの火球を生成したまえ』と無詠唱を同時にしているのよ」
「なるほど、『火球生成』という呪文は無詠唱のタイトルなんだな。詠唱しているのに、何でスペルブックなのか、合点がいったよ」
「ええ、こうする事によって無詠唱の効率が何割か上がるわ。今度はあなたの番よ」
「ループを使っているんだ」
「ループ?」
「繰り返しだよ。呪文の中に繰り返しがある。そうすれば目標が常に動いても大丈夫だろう」
「凄いわ。素晴らしい発想ね。なんか負けた気分だわ。でもここまで負けると、悔しくない。清々しい気分だわ」
「タイト、試験は終わった? その女は誰!」
マイラが俺を迎えに来てくれた。
「マイラ、失礼だぞ。こちらはセレンだ」
「セレン、覚えた。私はマイラ、よ・ろ・し・く」
「ひっ」
「マイラ、殺気を出すなよ。今日はどうしたんだ」
「タイトなんか知らない」
マイラがぷいと後ろを向いて歩き始めた。
「ごめん、マイラは機嫌が悪いようなんだ」
「いいのよ」
「セレンも試験受かっているといいね」
「あなたもね」
「じゃ、またね。マイラ、行くなよ! 一緒に帰ろう! 帰りに美味い物おごるからさ!」
マイラが振り返った。
食べ物で機嫌を直す所はまだまだお子様だな。
俺は7歳に、マイラは11歳に。
この世界には誕生日はなく新年に一斉に歳をとる。
マイラは成長期に入ったのか、頭半分ほど俺より背が高くなった。
もう、勉強は嫌だ。
魔法というプログラムに戯れている方がましだ。
魔道具は作っていたが、依頼と魔法を作る事はやってない。
俺はいったん横道に入ると勉強出来ないタイプだ。
試験勉強の合間に漫画なんか読むと、勉強そっちのけで漫画にのめり込む。
集中力は高いのだろうが、とにかく横道にそれると修正が効かない。
特に楽しい横道は駄目だ。
ずっぽり嵌って抜け出せない。
新年を超えて7日、いよいよ試験の開始だ。
最初の科目は計算。
筆算でも俺はそれなりだが今回は秘密兵器がある。
たとえば、12×6+5×4という問題があったとする。
以下の魔法で計算が出来る。
int main(void) /*最初にあるintで、整数を返すという定義づけ*/
{
return(12*6+5*4); /*計算した値を返す*/
}
魔法を実行すると俺の頭の中に答えが届く。
無詠唱でやっているので周りの人にも気づかれない。
普通に文章で『12掛ける6足す5掛ける4の答えを示せ』と魔法でやっても同じ事だが、プログラム的魔法とでは効率が違う。
それに『示せ』とやると、どこにどうやって示すのかが大変だ。
脳内に示すのならその原理が必要だ。
テレパシーとかのね。
プログラム的魔法ならそこは心配は要らない。
入出力はあって当たり前だからだ。
システムがやってくれるのが、当然になっている。
そこに疑問を挟む余地はない。
要するに俺が書いているプログラム言語のCではそういう仕様になっている。
システムがどのように動くのか確固たるイメージがある俺だから出来る事だ。
一度マイラにプログラム的魔法を教えたが発動しなかった。
『炎』という言葉を『水』という意味だと思っていれば『水』が出る。
プログラムが意味を持って動くと理解出来ていないと、文章として成り立たない。
ただの記号だ。
ただの記号では魔法は発動しない。
とにかく、計算の科目は満点で通過した自信がある。
二つ目は真理だ。
『火が燃えるのに必要な物を書け』と問題がある。
簡単だな。
『温度』、『酸素』、『燃焼物』だ。
水を熱するとどうなる。
これも簡単だ。
『一気圧の条件では100度になると沸騰して水蒸気になる』と書いた。
こんな感じの簡単な問題をすらすらと解いた。
これも満点の自信がある。
情報は暗記問題なので、今までの勉強の成果に掛かっている。
そこそこ出来た自信がある。
2科目満点で1科目そこそこなら、かなり良い方だと思う。
さあ、最後の科目の実技だ。
身体検査され、魔道具の持ち込みがないか調べられてから、会場に入った。
「呼ばれたら、的に向かって魔法を放って下さい」
試験官がそう俺達に伝えた。
「では、220番のリッツ君どうぞ」
「はい、いきます。【火球よ的を穿て】」
的が動き始める。
直線的に進む火球は、的に当たらなかった。
「はい、結構です。次は221番のセレンさん」
進み出たセレンは灰色の髪で赤い瞳の中学生ぐらいの女の子だ。
的が動き始める。
セレンはスペルブックを開くと呪文を唱えた。
「はい、【火球生成】【飛べ】【右に】【すこし左】」
おお、誘導弾だ。
火球は的に当たって的を焦がした。
「はい、結構です。次は222番のタイト君」
的を交換して、的が動き始める。
「はい」
俺はスペルブックを開くと、無詠唱で50センチほどの火球誘導弾を撃った。
的に見事命中して、どよめきが上がる。
「素晴らしい」
俺の出番は終わったので出口に行くと、先に試験を終えたセレンが待っていた。
「見てたわ。あれはどうやったの」
「教えられない」
「私の技術を教えるから、交換しない」
「それなら少しぐらい良いかな」
「私の誘導弾はね。短縮詠唱を使っているの。『火球生成』の詠唱のところで『魔力10を用いて魔力を燃料に点火。10センチの火球を生成したまえ』と無詠唱を同時にしているのよ」
「なるほど、『火球生成』という呪文は無詠唱のタイトルなんだな。詠唱しているのに、何でスペルブックなのか、合点がいったよ」
「ええ、こうする事によって無詠唱の効率が何割か上がるわ。今度はあなたの番よ」
「ループを使っているんだ」
「ループ?」
「繰り返しだよ。呪文の中に繰り返しがある。そうすれば目標が常に動いても大丈夫だろう」
「凄いわ。素晴らしい発想ね。なんか負けた気分だわ。でもここまで負けると、悔しくない。清々しい気分だわ」
「タイト、試験は終わった? その女は誰!」
マイラが俺を迎えに来てくれた。
「マイラ、失礼だぞ。こちらはセレンだ」
「セレン、覚えた。私はマイラ、よ・ろ・し・く」
「ひっ」
「マイラ、殺気を出すなよ。今日はどうしたんだ」
「タイトなんか知らない」
マイラがぷいと後ろを向いて歩き始めた。
「ごめん、マイラは機嫌が悪いようなんだ」
「いいのよ」
「セレンも試験受かっているといいね」
「あなたもね」
「じゃ、またね。マイラ、行くなよ! 一緒に帰ろう! 帰りに美味い物おごるからさ!」
マイラが振り返った。
食べ物で機嫌を直す所はまだまだお子様だな。
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