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第4章 盗賊団との対決編

第64話 暗雲の予兆

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「マガリーヌがね。両親が帰って来ないと心配してたわ」
「ふーん、何かあって遅れているだけじゃないかな。商談に手間取ったとかでさ」
「隣町から後3日で帰ると手紙が届いたそうよ」
「約束の3日が過ぎても帰って来ないのか」
「既に2日オーバーしているらしいわ」
「よし、探しに行ってやろう」

 マリーの曇った顔を見るのも嫌だったからな。

「ほんと。すぐに支度する」

 華やいだマリーの顔。
 俺は店のドアにクローズの札を掛けた。

 探索は街道沿いにする事にした。
 手紙が出された街に通ずる道を車で急ぐ。
 魔獣の仕業だと最悪の事態も考えられる。

 むっ、馬車の残骸がある。
 遅かったか。
 遺品だけでも持ち帰ってやらないと。
 馬車を見ると至る所に矢が刺さっていた。
 外された扉に書かれた紋章を見てほっとする。
 マガリーヌの親がやっている商会の馬車ではない。

 それに馬車は一台だ。
 聞いた話では馬車5台のキャラバンという事だ。

 護衛の死体を見るにどこかの騎士のように見える。
 鎧や武器は持ち去られていたが、服装が全員同じだ。
 貴族の馬車が襲われたのか。
 権力争いか、それとも身代金目当てか。
 どちらにせよ、係わり合いになりたくないな。
 ギルドに報告するだけに、留めておこう。

「マリー、先を急ごう」

 襲撃現場から一時間ほどの場所で、立ち往生しているキャラバンを見つけた。
 あの紋章はマガリーヌの親がやっている商会の物だ。
 良かった手遅れではなかったみたいだ。

「マガリーヌから話を聞いてやって来ました」
「これはこれは、私はマガリーヌの父です。マガリーヌに馬車が壊れて到着が遅れていると伝えてくれませんか」
「馬車を見せて貰えば直せるかも。こう見えて生産系のスキル持ちだから」
「ほう、それは願ったり叶ったりです」

 ポリゴンのジャッキで傾いた馬車を持ち上げる。
 ジャッキが役に立ったな。
 車軸が折れている。
 ポリゴンで車軸を作れば、応急処置にはなるかも。

 作成依頼で車軸を作って渡す。
 商会の人間がテキパキと車軸を交換して、出発の準備は整った。

「いやぁ、助かりました。商品を置いていく訳にも行かなくって。街まで換えの車軸を取りに行かせたのですが、在庫がなかったようで」
「念のため、街まで護衛するよ。途中、襲われた馬車も見つけたし」
「重ね重ね申し訳ない」
「別にお礼は良いよ。連れのマリーがマガリーヌの友達なんだ」
「あなた様はSランクのディザ様ではございませんか」
「そうだけど」
「重要人物の情報は常に掴んでいます。これを機会にぜひお付き合いを。欲しい商品などがあればお申し付け下さい」
「そうだな。用があれば寄らせてもらうよ」

 護衛に雌ライオンを10頭作った。
 雌ライオンの先導で街道を急ぐ。
 ポリゴンの車軸は十分に機能を果たしているらしい。
 壊れたりしてなくてほっとした。

 むっ、この足音はオーガだな。
 雌ライオンがオーガに突撃していき持っていたこん棒に粉砕される。
 大岩を具現化して落とす。
 やはりこん棒に粉砕される。
 これだから脳筋は。
 スタンガンを作って鎧の戦士に持たせる。
 スタンガンは見事効果を発揮した。
 筋肉では電撃は防げない。
 鎧の戦士が剣で止めを刺した。

「流石、Sランクでございますな。Aランク相当のオーガが赤子の手を捻るようです」
「先を急ごう」

 あの襲撃の現場に差し掛かる。
 馬車の列が止まり遺体を収容し始めた。

 馬車の扉の紋章を見てマガリーヌの父親の顔色が変わる。

「この紋章に心当たりが」
「ええ、やんごとなきお方です。詳細は知らない方が良いでしょう」

 厄介事の臭いがぷんぷんする。
 聞かない方がいいのなら、口をつぐんでいよう。
 報告もしてくれるらしいし、俺はこの件には係わらないと決めた。

 街までは何事もなく着いた。
 門の所で待っていたマガリーヌが両親に笑顔で飛びつくのを見たら、骨を折った甲斐があったなと感じた。
 それを見ていたマリーの寂しそうな表情が何かせつなかった。

「マリーと俺は家族だよ。いつでも甘えて良いんだぞ」

 マリーが俺に飛びついてくる。
 頭を優しく撫でてやった。
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