上 下
80 / 84
最終章 ダンジョンから始まる解ける謎

第80話 ダンジョン

しおりを挟む
 最後の闇の神器があるダンジョンが判明した。
 その名も帰らずのダンジョンだ。
 あまりに未帰還者が多いのでこの名前がついた。

 ダンジョンは人工物ではなく元が鍾乳洞のようだ。
 乳白色の洞窟が奥に続いている。
 こんな暗闇の中で生きて行ける生物は凄い。
 だが、少し奥に進んだところ、壁に光るコケがびっしりと生えていた。
 生き物が生きるのに光はこれでなんとかなるにしても食い物がどうにもならんだろう。

「滑るから気をつけろよ」
「あたいは平気さ」
「幻想的な所に出て良かった。もう、暗くてじめじめした所は嫌」
「闇魔法使うには暗い方が都合が良いけど、美しい風景は好きだな」
「きゃ」
「誰かミディの手を引いてやれ」
「ミディ子供じゃないもん」
「この状況で迷ったら命に係わる」
「そうさね。あたいが手を結ぶ」

 もう少し進んだ所で、スライムの大群が現れた。

「爆発せよ【ダークボム】」

 スライムを一掃すると大きなトカゲの死骸が現れた。

「ゾンビになれ【メイクアンデッド】」

 これで案内人が出来たぞ。
 トカゲは蛇の様にスルスルと身をくねらせて歩く。
 洞窟に特化した歩き方になっているのだろう。
 狭い隙間の探索にも役に立ちそうだ。

 しばらく行くと地底湖があった。
 水を覗くと魚の姿が見える。
 トカゲなどはこういうのを食料にしているんだな。
 幻想的で綺麗な空間だ。
 観光地になっても良いぐらいな所なんだが。
 少しも帰らずのダンジョンらしくない。

 むっ、体に痺れが。
 やばい毒を食らった。

「みんな、貧者の楽音がくおんジュースを飲むんだ」

 毒はガスの類なのか。
 呼吸をリビングエアの空気に入れ替える。
 痺れがなくなった。
 さすが難関ダンジョン。
 毒ガストラップとはな。

 少し行くと毒の正体が分かった。
 おびただしい数のキノコが群生しており、盛んに胞子をまき散らしていた。

 シュルシュルと何かがこすれる音がして、トカゲの大群が現れた。
 シャデリーが走ってきたトカゲの群の中に手榴弾を投げ込む。

 爆発で全てのトカゲが息絶え、キノコも爆発に巻き込まれて濃密な胞子をまき散らした。
 空気に青い色がついている。
 この視界じゃ進めない。
 殺人バクテリアの扇子せんすを解き放つ。
 扇子せんすに食われて胞子はなくなった。
 ここはトカゲの狩場なんだろう。

 キノコの中で戦闘を行うと胞子がまき散らされ毒の回りが早くなる。
 人間などが死ぬとトカゲが食い、残飯をキノコが栄養にするという仕組みなのか。

 一般の冒険者はどうやってこの中を進むのかな。
 興味が少し出てきた。

「こっちよ。こっち」

 女性の声がした。

「誰か何か言ったか」
「いいえ、言ってないわ」

 幽霊のたぐいかな。
 それなら、ミディが警告してくれるはずだ。
 気になったので声のする方に進む事にした。

 油が燃える匂いがする。
 身をひそめるように手でサインを出して、辺りを窺う。
 松明を手にした聖騎士達が現れた。
 その一人の手には地図が握られている。

「こっちに行くと殺人キノコの群生地だ」
「ふう、危ない所だった」

 あの地図が欲しいな。
 殺人バクテリアの扇子せんすを解き放つ。

「うがぁ、ジェノサイドだ」
「逃げろ。本隊に知らせるんだ」

「いや逃がさんから」

 聖騎士を塵にして、地図を手に入れた。
 だが、地図は途中で終わっている。
 冒険者達から情報を買って地図を作ったと見える。
 最後までないのはそこまでしか探索が進んでいないからだ。

 地図には貴重な鉱物や薬草の採取ポイントが載っていたが、無視して声に従って奥に進む。
 声は段々と強くなって行く。

 とうとう地図に記載されていないエリアに入りこんだ。
 甘い匂いがする。
 また毒じゃないよな。
 呼吸をリビングエアの空気に入れ替えて進む。

 広間に出ると先行させていたゾンビのトカゲが一瞬で消えた。
 なにっ、何が起こった。
 敵の姿は見えない。
 立ち止まる様にサインを出す。

「ミディ、ゴーストで偵察してみてくれ」
「うん、分かった」

 少し経って。

「少し行った所におっきいカエルが居るみたい」

 さっきの攻撃は舌によるものだったのだろう。
 このまま進むと攻撃圏内に入る。

「ミディ、ゴーストを憑依させてくれ」
「うん。ゴーストさん、お願い」

 カエルの所に行くと強い甘い匂いを発していた。
 匂いでおびき寄せるという生き物なんだろう。
 止めを刺して更に進む。
しおりを挟む

処理中です...