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第12章 闇の神器から始まる自然保護

第73話 腐敗の剣

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 生き残った聖騎士を全員ゾンビにして湿原の現状回復の工事をさせた。
 元通りとはいかないが、何年かすればましになるだろう。

 現状復帰が終わった所で俺は聖騎士ゾンビに湿原を探らせた。
 闇の神器があるか確かめたかったのだ。
 もしあれば、湿原を埋め立てする大義名分を失う。
 獲得したら大々的に発表するつもりだ。

 湿原の奥地に入ったら病気になると言われている一角があった。
 多分寄生虫がうようよいる場所なんだろうけど、ゾンビには関係ない。
 ゾンビに探らせたところ、黒い剣を見つけ出した。

「うわ、絶対に呪いの剣だ」
「何っ、呪いを馬鹿にしてるの」
「いや、呪いの強大な力に慄いている」
「そうでしょ、そうでしょ。早く手に取りなさいよ」

 捨てたいが、これが神器だったら、捨てられない。
 恐る恐る手に取り魔力を充填させる。

 入った。
 俺の魔力が入った。

「どう、呪われた」
「体はなんともないな」

 剣を鞘から抜くと刀身もやはり黒だ。

 試しにそばにあった立木に切りつける。
 刃が当たった瞬間、立木は腐り落ちた。

「呪いの矢みたいな効果ね」

 そういう、効果の神器な訳ね。
 刃に触れた物を全て腐らせるのだろう。

「いや、百倍は強力だろう」
「私、欲しい」
「なんとなく不吉な感じもするしジュサにあげるよ」

 俺たちはドラゴンに乗ってシュジュの街に凱旋した。
 そして、シュプザム教会のお偉方を招いて式典を催した。

「神器を教会に返還する」
「おお、領主様も遂に正道に戻られのか」
「いや違う。おいやれ。手筈通りにな」

 エイブリーが闇の神器。
 名前は腐敗の剣と名付けた。
 それを持って、現れた。

 領主が支配の鞭を空中に投げる。
 エイブリーが支配の鞭を空中で切った。
 腐り果てる支配の鞭。

「なんて事を。支配の鞭が無残な姿に」
「闇の神器の力を見よ」

 顔色を変える教会のお偉方。

「偽物だ。あの神器は偽物だ」
「まだあるぞ」

 神器の盾を投げる。
 やはり空中で切られ腐り果てた。

「今度は絶対の盾が」
「最後だ」

 神器の剣が投げられ、空中で切られ腐り果てた。

「なんという事だ。鋭刃の剣までもが」

 鋭刃の剣って名前だったんだな。
 思ったんだが、鋭刃の剣が万全の状態だったら、腐敗の剣と相打ちになったんだろうな。
 何故かそんな気がした。
 下手をしたら絶対の盾とも相打ちになったのかも。
 まあいい。
 次の神器の時に調べてみるさ。

「呪われますぞ」
「生憎、呪術師は味方につけている。教会が呪術師と手を組むと言うのなら止めないがな」
「天罰があなた達に降りかかりますぞ」
「神器で神器を壊して何が悪い。闇の神器がある事じたい禁忌持ちが神に祝福されている証拠なのではないか」
「ぐっ」
「残骸を持って帰るんだな」

 領主が冷たく言い放つ。
 教会のお偉方は御付きの者に命じると残骸を集めて無言のまま立ち去った。

 闇の神器が一つ見つかったと言う事は他にもあるんだろうな。
 お土産に持って帰ったレンコンの漬物を肴に、俺達は酒場を貸し切って酒盛りを始めた。

「今回はミディに助けられたな」
「えっへん」

 いい子いい子してやった。

「何でも欲しい物を言ってみろ。買えるとは限らないが」
「情けないわね。男なら何でも買ってやるぐらい言わないと」

 ジュサからそう言われた。

「無理な物は無理さ」
「無理なはずの勇者を打ち破ったじゃない」
「今回はミディのおかげさ」

「ミディ、動く人形が欲しい」
「リビングドールぐらい、幾らでも作るさ」

「私、今回もいいとこ無かった」
「シャデリーは残党の聖騎士を始末するのに活躍しただろう」
「ええ、でも」
「あたいもちょっとな」
「ビーセスも残党の始末で活躍しただろう」

「ミディ、人数分、闇の神器が欲しい」
「それはまた難しい注文が来たな」

「男ならやりなさいよ」
「ああ、情報があったらな」

 闇の神器いくつあるんだろう。
 人数分そろうと良いが。
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