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第12章 闇の神器から始まる自然保護

第71話 寄生虫ゾンビ

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 ドラゴンによる空爆を実施する事にした。
 蛇魔獣や蜘蛛魔獣に加えて闇魔法の爆弾と呪いの空気爆弾を投下した。
 聖騎士には甚大な被害が出たと思うが、勇者は死なないだろうな。
 嫌な確信だが、絶対にそうだろう。

 現在、湿原の埋め立ては三分の一ほどだ。
 闇の神器を探している雰囲気はない。
 つまり、闇の神器は口実で、埋め立て後の土地が欲しかったのだろう。

 無いのかな、闇の神器。

 眼下では聖騎士の慌てふためく姿が見えるが、それほど死んでないようだ。
 光属性の人員がかなりの数配置されているみたいだ。

「駄目だ。効果が限定的だ」
「どうするのよ。呪いは光属性には敵わないわ」
「闇魔法もよ」
「あたいの魔獣達が頼りって事かな」
「ミディも光魔法嫌い」

「魔獣の軍団では聖騎士に討伐されて終わりだろう。こうなったらドラゴンヴァンパイア達を集結させるか」

 いかんいかん、安易な策に流れている。
 ドラゴンヴァンパイアが剣の勇者に引き裂かれる未来が見えた気がした。

「こういう時は慌てずにじっくりやらないとね」

 ジュサにそう言われた。

「そうだな。焦ってはいけない。とりあえず作戦会議だ」

 ドラゴンを着地させた山の中で作戦を練り始めた。
 光属性で結界など張られると闇属性は手出しができない。
 魔獣の空爆は一定の効果があるが、来る事が分かっていれば、対処は容易い。
 考えろ俺。

「私、聞いた事があるの。沼ではアンデッド毒にやられるから遊んではいけないよと言われてる。味方に出来ないかしら」

 シャデリーがそう言った。

「そりゃ、淀んでる水にはばい菌がうようよいる。でもな、アンデッドにしても光魔法を突破できない。待てよ、食料に混ぜればいけるか」

 スパイを呼び出して、バクテリアのゾンビを食材に混ぜるように言った。
 しかし、結果は惨敗。
 なぜかというと細菌は熱に弱い。
 調理されるとバクテリアのゾンビは無効化されてしまう。
 飲料水に忍ばせる事ができると良いのだが、警戒が厳しくて駄目だった。

「熱に強いバクテリアが必要だ」
「地元の人に聞いてみたらどうかしら。極悪なばい菌がいるかもよ」
「そうだな。聞くだけ聞いてみるか」

 ハンナの家を訪ねた。

「薬師だったよな。湿原にまつわる奇病とか知らないか」
「聞いてどうするの」
「聖騎士に流行れば良いと思って」
「三日熱というのがあるわね。原因は不明だけど、罹ったら三日で亡くなるわ」
「詳しく教えてくれ」
「湿原でも淀んだ所に入ると罹ると教えられたわ。それと生で魚を食べると罹る」

 ばい菌の仕業かな。
 あっ、もう一つの可能性に気がついたぞ。
 寄生虫だ。

「ありがと、助かったよ」

 湿原に行き魚を取る。
 さて寄生中をどうやって探すかだが、簡単だ。
 獲った魚を弱火で煮る。
 そして。

「寄生虫よゾンビになれ【メイクアンデッド】」

 寄生虫に出て来いと指令をだしたら、言いたくない光景になった。
 これは酷い。
 俺は金輪際、川魚は食べたく無い。

 煮た魚にはもう寄生虫はいないのでこれは後で頂くがな。
 そうだ、商売にしよう。
 煮魚のゾンビを売り出そう。

 村に帰ると漁師に言って魚の大量注文を出した。
 聖騎士のせいで湿原に村人は近づけないが川へは行ける。
 川で魚を調達してもらった。

 そしてそれを煮た後に寄生虫をゾンビにして取り出す。
 それを集めてスパイに命じて食材に忍ばせた。
 調理したぐらいでは寄生虫ゾンビは中々死なない。
 そりゃ細菌よりタフだからな。

「どうだ。上手くいったか」

 スパイになった聖騎士を呼び出し話を聞く。

「聖騎士の八割が亡くなりました。原因は食あたりか毒だと見ています」
「そうか、今後目立つ動きはするな」
「大丈夫でしょう。毒の説は揺らいでいます。同じスープを沢山食べた人間でぴんぴんしている者もいるからです」

 ああ、寄生虫が居ない物を食べたのだな。
 運の良い奴だけが生き残ったんだな。

 ゾンビにした寄生虫には肉をとにかく食い破れと指令をだしたので、ゾンビにしてないのより凶悪になっている。
 かなり即死率が高い。

「食あたり説が有力か」
「そうですね。それと、勇者はパーティは誰も死んでません」
「ほう、なぜだ」
「勇者だけ特別な食材で別メニューを食ってるみたいです」
「ちっ、悪運の強い奴だ」

 だが、この状況はチャンスだ。
 勇者は自信があるのか引き揚げない。
 増員前に勇者を討つぞ。
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