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第12章 闇の神器から始まる自然保護

第69話 環境破壊、始まる

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「お兄ちゃん、やつら酷い事してる」
「ミディ、お兄ちゃんって、まあいいや。どんな酷い事をしているんだ」
「炎の魔法を使って、焼いている」
「何を焼いているんだ」
「沼」
「酷くはないだろう。そりゃ環境破壊だろうけどさ」
「それでね。やめさせようとした村人がずばっと」
「それは酷いな」

 俺は情報収集のため村に行った。

「ハンナ、ちょうど良い所に居た。村人が切られたんだって」
「そうなの。切られたのは兄弟子よ。許せないわ」
「奴らなんだってそんな事を始めたのかな」
「何でも湿原全部を干上がらせて調べるんだって」
「そりゃ、無理だろ。どんだけ広いと思っているんだ」
「そうなのよね。そこが分からないわ。でも水の中に生える貴重な薬草もあるのよ」

「大変だ。軍隊が来て、湿原を埋め立ててる」

 村人が血相を変えて飛び込んで来た。

「やめさせないと」
「ハンナ、無謀だ。作戦を立てないとやつらの思う壺だ」
「どうしたら良いの」
「とにかく軽はずみな行動は駄目だ」
「分かったわ。見張るだけにしておく」

 扇子せんす対策は当然しているよな。
 ドラゴンで空爆もどうだろうな。
 前やったから、対策はしているだろうな。

 こういう場合はゲリラ戦だな。
 やつらも眠ったり物を食ったりするはずだ。
 奇襲しよう。
 どうやって奇襲するか。
 湿原の中にゾンビを潜ませるのは行ける手かもな

 よしそれを実行しよう。
 まずはゾンビの素材にする魔獣狩りだ。

「ビーセス。ドラゴンを使って。この谷に魔獣を追い込んでくれ」
「了解だよ」

「ジュサは呪いの矢で魔獣を仕留めてくれ」
「分かったわ」

「シャデリー、群が来たら手榴弾を投げ込んでくれ」
「やっぱり私がいないとね」

「ねぇ、ミディは?」
「ミディは魔獣の動きを知らせてくれ。この作戦の鍵はミディだ」
「うん、わかった」

「作戦開始だ」

 しばらくしてミディが叫ぶ。

「来るよ!」

 谷に猪の魔獣が飛び込んで来た。
 ジュサの呪いの矢で魔獣は死んだ。

「魔獣の亡骸よ、ゾンビになれ【メイクアンデッド】」

 猪魔獣がむっくりと起き上がり、前衛の配置についた。

「群が来る」
「シャデリー、頼む」

 シャデリーが走ってきた狼魔獣の群の中に手榴弾を投げ込む。
 狼魔獣の半分は息絶えた。

「魔獣の亡骸よ、ゾンビになれ【メイクアンデッド】。魔獣の亡骸よ、ゾンビになれ【メイクアンデッド】。魔獣の亡骸よ、ゾンビになれ【メイクアンデッド】」

 ゾンビの狼魔獣と生き残った狼魔獣が戦いを開始した。
 ジュサとシャデリーの援護もあって生きている狼魔獣は全て死んだ。

 こうなれば後は楽なもんだ。
 谷に入ってくる魔獣を数の暴力で殺してゾンビの列に加える。
 この作業を延々と繰り返すだけだ。

 ビーセスも多数の蛇魔獣を従えた。
 蛇は泳ぎが上手いから、良いゲリラ兵になるだろう。

 そして、ここら一帯の魔獣は殆んどゾンビになって、俺の兵隊になった。
 その数、2千とちょっと。

 夜の道を2千のゾンビと百匹の蛇魔獣が行く。
 途中、聖騎士の一団が野営している現場に出くわした。

「やってしまえ」

 ゾンビの群に飲み込まれる聖騎士。
 小隊ぐらいだと楽勝だな。
 聖騎士はヴァンパイアにしてスパイ行為をさせる事にした。
 ばれても痛くないからな。

 そして、妨害するものも無く湿原に着いた。

「さあ、水にひそむのだ」

 ゾンビ達は次々に水に入り、湿原中に散っていった。

「聖騎士があっちにいる」

 ミディが湿原近くででパトロールしている聖騎士を見つけた。
 ふふっ、見てろよ。
 驚くぞ。
 俺達は近くに忍び寄った。

「おい、水音がしなかったか」
「よしてくれ。ワニ魔獣じゃないだろな」
「ワニ魔獣はここいらには居ないはずだ」
「そうか、魚かもな」

 後、10センチ。
 今だ。

 水の中から狼魔獣のゾンビが躍り出て、聖騎士の喉元にくらいついた。
 もう一人の聖騎士は腰を抜かしたようだ。

「あわわわわ」

 水の中から蛇魔獣が来て聖騎士を水の中に引きずりこんだ。
 溺死確定だな。
 さて、嫌がらせぐらいにはなるだろうか。
 次の手も何か考えないと。
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