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第10章 ドラゴン退治から始まる同盟の兆し

第59話 同盟の話

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 現在、俺の店のラインナップはこうだ。
 聖水漬け、野菜ゾンビ。
 祈りの声、マンドラゴラゾンビ。
 聖氷肉、塩漬け肉ゾンビ。
 宝石瓜ゾンビ。
 聖域漬け、漬物ヴァンパイア。
 聖域豆、煮豆ゾンビ。

 増えたけど新商品が欲しい。
 無難に行くなら、果物のゾンビだな。
 果物なら火にかけたりしないから、ゾンビだとばれる事はないだろう。
 ただし、リンゴなんかだと何もしなくても長い間腐らない。
 足が早い果物を狙うべきか。
 それだと、採りたてで安いのには負けるな。
 付加価値が必要だ。
 ジャムは駄目だな。
 保存食だからゾンビにするまでもない。
 ケーキはどうだろう。
 ケーキゾンビ、なかなかに行けそうだ。
 この間雇った女の子に研究するように指示をだそう。

 おっ、鳩ゾンビが手紙を運んで来た。
 手紙には救援依頼の事が書いてある。
 今度はギンブという都市だ。

 俺はペガサスで残りのメンバーはドラゴンに乗って出撃した。
 キンブに着くとそこは戦闘の真っ最中だった。
 なんで毎回ぎりぎりになって間に合うかというと、通信士という職業の人間が係わっている。
 通信士同士は遠く離れていても話をする事ができるのだ。
 便利といえば便利だが。
 通信士の依頼料は高くて、おまけに通信士ギルドに入っていて、辺鄙な所には来てくれない。

 城壁からドラゴンに向って放たれる魔法とおびただしい数の矢。
 全て跳ね返され、大ダメージには程遠い。

「ドラゴンが増えたぞ。もうお終いだ」

 そう叫んだのが聞こえた。
 俺達は敵認定なのだな。

「みんなやるぞ」
「闇よ安らかな眠りを【スリープ】」
「行け、香車きょうしゃ

 砲弾を受けて一撃で風穴が開くドラゴン。
 楽勝だな。

「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】」

 ドラゴンはヴァンパイアになると俺達と共に素早く撤収した。

 翌日。
 俺は今、領主の所に来ていた。

「えっと、同盟の話がきているって」
「ええ、私の領地のシュジュとキノルル、セイルー、ザーク、ビャック、ギンブでネオシンク同盟です」
「各領地の条件は?」
「力を示せと言うのが、各領地の共通した答えです」
「ドラゴン退治では十分じゃないのか」
「力なき正義は虚しいというのが領主の意見です。我々にシュプザム教会を打倒する力があるのか計っているのです」

「そうか。教会は動くかな」
「動くと思いますよ」
「なら撃退して領主に俺達の力を見せつけよう」

 領主の所を後にして、店に寄る。

「あっ、店長。待ってたんですよ」
「何か問題があったのか」
「孤児達が仕事をくれと詰め掛けてうるさいんです」
「悪い悪い。しばらく忙しかったからな。対処しておくよ」

 最近、放っておいたからな。
 孤児に仕事か。
 貧者の楽音がくおん工場ですり潰し作業をやってもらっているが、人数が増えたと聞いている。
 そのせいもあるのだろう。
 それにすり潰しは重労働だ。
 やりたくない子供もいるだろう。

 という事は簡単な手作業が望ましいと思う。
 ゲームのたぐいは既にある。
 リバーシなんか作っても真似されて終わりだな。
 かといって、リビングドールなんか作ったら、一発で禁忌持ちの仕業だと分かるからな。
 敬遠されて終わりだろう。
 簡単に作れて真似されない物は何か。

 お守りがいいな。
 同盟予定の各都市はネオシンクの布教は許している。
 需要は沢山ありそうだ。
 ネオシンク教のお守りなら普通の感覚の奴は真似しないだろう。
 さて、どんなお守りが良いだろう。
 ゾンビの青い葉っぱを入れて、魔力が切れて枯れ葉になったら、厄を払った事にしよう。
 永遠に需要が生まれるいいアイデアだ。
 孤児には形の良い葉っぱを集めてもらう仕事を頼めばいいな。
 それとお守り袋を作る作業だ。

 それには誰か死体術士に街に住んでもらう必要がある。
 開拓地で人を募集しよう。
 俺は孤児院に顔を出して、バートを呼んだ。

「兄ちゃん、久しぶり」
「仕事を頼みたい」
「すり潰しはもう勘弁だよ。みんな不満を口にしてる」
「今日のは楽な仕事だ」
「本当」

 俺はお守りの説明をした。

「それなら楽勝さ。女の子は繕いの仕事をスラムにいた時にやってたから、簡単な袋なんてお茶の子さいさいだよ」
「頼んだぞ」

 開拓地で死体術士は簡単に見つかった。
 街で暮らしたいという希望者がいて、葉っぱをゾンビにする仕事を頼んだ。
 そうだ、領主に任せきりの病院も一度行ってみないとな。
 それと、すり潰しの仕事を今度は誰に頼もうか。
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