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第9章 噂から始まる犯罪者狩り

第54話 切り裂き骨刀屋

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 防御を考えたが思いつかん。
 盾を飛ばそうとか色々と考えたんだけど。
 結論として出たのは攻撃は最大の防御で良いとなった。

 突然、領主から呼び出しが来た。
 今度はなんだろうな。

「今度はなんだ」

 領主の執務室で俺は切り出した。

「凶悪犯が売り込みに来たのですよ」
「詳しく話せ」
「正確には買い取りに来たのです。エイブリーの持っている妖剣が欲しいと」
「売ったのか」
「いいえ、その気になったら、連絡すると言って追い返しました」
「どの凶悪犯だ」
「切り裂き骨刀屋です」
「捕まえてしまっても良かったんだが」
「凶悪犯だと分かったのは帰ってからです」
「そうか、領主ともなると人相書きは見ないものな」

「それに変装してましたから」
「よく分かったな」
「妖剣が欲しいとなどと物騒な事を言う理由が気になったので、連絡先を張り込ませたのです。素顔が判明して凶悪犯だと分かりました」
「俺がやるから手は出すなよ」
「はい」
「並の兵士では討ち死にだろう。適材適所だ」

 切り裂き骨刀屋は表向きは刀剣商なんだが、刀剣をアンデッドにして試し切りをしまくるという奴だ。
 付いた二つ名が骨董屋ではなく骨刀屋。
 どこか、辻斬りだったデルバジルを思い出す。
 こっちの方が何倍も凶悪だがな。

 また狙撃の出番かな。
 連絡先は普通の宿だった。
 ここでやると目撃者が出るな。
 ばれても構わないと言えば構わないが。

 俺は正面から撃破する事を選んだ。
 妖剣とお前の持っているコレクションの一つと交換だと言って人気のない空き地に呼び出した。
 路地からうかがうと剣を沢山空中に浮かべて要塞と化している。
 剣が多すぎて顔どころか体も見えない。
 そうなるよな。
 エイブリーには人殺しの臭いというかそういう物があるようだ。
 そのエイブリーが内密に一人で来ると言えば切った張ったになるのは必然だと思う。
 俺は盾を構えてゆっくりと近づいた。

「おや、知らない顔です。あなたが剣をお買い上げなさる」
「ああ、全部買ってやる」
「そう言うと思ってましたよ。いいでしょう商談です。私が勝てば妖剣は私の物。あなたが勝てばコレクションは全てあげましょう」
「そう言うと思ったぜ」
「さて、まずは一振りお買い上げ」

 そう言うと剣が空中を飛び、俺の頭を貫く軌道を描がいた。
 そして、手前で進路を変え盾に激突して貼り付いた。

「ふむ、剣封じの盾ですか。盾は趣味ではないですが、貰ってお金にすると致しましょうか」

 二時間前に家でジュサを前に。

「剣に対する最高の防御ってなんだろ」
「固い事かな」
「それは強いな。でも金属をくっつける盾があって、くっつけたら最強だと思わないか」
「そうね。でも接着剤では使いづらいわ」
「磁石はどうかな」
「ふーん、どうやって作るの」
「そんなの呪いに決まっているだろ。磁力に反応する金属を全て貼り付ける盾。これで今回は決まりだな」
「呪いで再現できるかしら」
「この世界では磁石は呪いの石だからな。剣が磁力を帯びると砂鉄なんかがくっついて切れ味が鈍る。だから呪いに分類されているよ」
「なら出来るかもね」

 磁力と磁性体の事を丁寧に説明をしてしまった。

「じゃやるわよ。磁性体を引きつけて磁石にせよ【カース】。つまらぬ物を呪ってしまったわ」
「おう、ズボンのバックルが」
「ちょっと、こんな所で脱がないでよ」
「悪い、盾が腰についていると鬱陶うっとうしくてな」
「もう」
「銅のバックルなんて売っているかな」
「確か売っていると思う」
「悪いな買ってきてくれ」
「はいはい」

 そして。
 盾は剣を吸い寄せて、何十キロの重さになっていた。
 そろそろいいかな。
 剣が飛び交う隙間から顔が見える。

「解き放たれた死よ蹂躙せよ。成香なりきょうよ、飛べ」

 頭を打ちぬかれた切り裂き骨刀屋が崩れ落ちる。

「なぜ、あなたの飛び道具は吸い寄せられないのですか」
「まだ生きていたか。そりゃ、銅も鉛も磁石にくっつかんだろう」
「訳の分からない知識。錬金術師でしたか……」

「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】。解き放たれた犯罪者よ縛につけ」
「はい、領主に自首します」

 あーあ、剣もったいなかったかな。
 磁力って中々抜けないんだよな。
 俺は剣を沢山吸い付けた盾をその場に残して現場を後にした。
 いく振りかは剣を回収できたから良しとしますか。
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