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第9章 噂から始まる犯罪者狩り

第53話 闇爆発魔

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 俺は闇爆発魔が約束の金を取りに来る時間の少し前、二人が潜伏している宿にやってきた。

「手はず通りに頼むぞ」
「はい、ボス」
「わかりましたわ」

 ドアがノックされる。
 俺はクローゼットに隠れた。

「どじを踏んだな」
「ああ、恥ずかしいよ」
「金は出来たか」
「もうちょっと負けてくれない」
「脅迫屋、噂ではもの凄く儲けているそうじゃないか」
「そりゃ、あんたに比べればね」
「早く出す物出せよ」
「ほらよ」
「ふっ、ありがとよ」
「中を調べなくていいのか」
「足りなければまた来るさ」

 足音がしてドアの閉まる音がした。
 ドアの外に待機していたネズミのゾンビがあとをつける。
 ねぐらはすぐに判明した。

 空家になった民家で寝泊りしている。
 どうしたものか。
 空家の隣には人が住んでいる。
 領主の権限で一時避難させても良いが。
 気づかれるだろうな。

 扇子せんすで闇爆発魔を塵にしてもいいけど、何か負けた気がする。
 しょうがない切り札を切るか。
 砲弾アンデッドの香車きょうしゃを作った時に大砲が出来るのなら鉄砲もできるのではと考えた。
 それで弾丸アンデッドの成香なりきょうを作ったのだ。
 俺は空家の入り口が見える所に携帯食を抱えて陣取る事にした。

「まだか。何時になったら出て来るんだ。もしかして俺がトイレの時に出て行ったとか」

 俺はスナイパーにはなれないらしい。
 緊張感が続かない。
 別の出入り口があるのではとか、しょうもない事を考えた。
 むっ、ドアがかすかに開いた。
 いよいよ出てくるか。

 人の良さそうな髭面ひげづらの男が出てきた。
 いけ成香なりきょう
 どんぐりほどの弾丸が空を飛び男の頭を貫いた。

 俺は急いで男を出てきた入り口に押し込んだ。
 誰かに見られたか。
 領主が暗殺部隊をもっているなんて噂になると後が厄介だ。
 よかった見られていないようだ。

 男をヴァンパイアにして、尋問を始める。

「疑問に思っている事がある。脅迫屋と殺し屋がなぜあそこにいると知っていた。仲間じゃないんだろ」
「あれは、二人を殺して賞金をせしめようと思いまして」

 情報屋から二人の情報を買ったのか。

「殺そうとして捕まっていたから、助けたのか」
「一時的に助けて金をせしめた後に殺すつもりでした」
「分かったよ」

 闇爆発魔と潜伏している脅迫屋と殺し屋を領主に突き出し今回の件は終わったかに思えた。
 街に突如、響き渡る爆発音。

 闇爆発魔は一人じゃなかったのか。
 領主の所に行き牢にいる闇爆発魔と面会した。

「おい、お前は仲間がいたのか」
「いいえ、いません」
「じゃあの爆発はなんだ」
「あれは前もって魔法を仕掛けておいて時間差で爆発させるというものです」
「解除方法は」
「今は魔法が使えないので解除不能です」

 おいおい、どうするんだよこれ。
 爆発の場所は聞きだしたから、住人の避難はできたけど、解除しないと火事になったりするだろ。
 やっかいな置き土産を残してくれた物だ。

「みんな聞いてくれ。闇爆発魔が残した魔法を封じ込めないといけない」

 フリーダークのメンバーを前に俺は言った。

「爆発が起こる所を壊しとけよ」
「そんな乱暴な」
「燃える物がなければ火事にはならないさ」

 最悪はビーセスの案を採用だな。

「どうしようもなければ、それでいくしかないな」
「闇魔法はあてにしないで。壊す事はできても、守りは苦手よ」
「ミディもパス」
「ふふふ。ジュサ様の出番って訳ね」

「何か良いアイデアがあるのか」
「燃えない呪いなんてものは出来ないわ」

「そうだ、大元の魔力をなんとかできないか。例えば魔力を殺すとか」
「無理ね」
「やる気を無くすってのはどうか」
「それなら出来るわ」
「よし、次に爆発予定の家に行くぞ」

 現場は普通の邸宅だった。

「頼むぞ」
「魔力の生きる気力を吸い取れ【カース】。つまらぬ物を呪ってしまったわ。付近に呪いを掛けたわよ」

 少し離れた所で事態を見守る。
 聞き出した時間になったが爆発は起こらない。

「ジュサ、お手柄だな。でも、これって最強能力じゃないか」
「何を考えたか分かるけど、そんな強力な呪いは使えないわ。徐々に生きる気力を奪うのよ。飛んでくる魔法に掛けたって百分の一、削れるかどうか」

 現場は魔法の効きが少し悪くなるだけか。
 なら、呪いの後始末は考えなくていいな。
 下手に呪いを解除すると爆発する可能性もある。
 魔力が自然に散るまでは放置しよう。

「よし、どんどん後の現場も回るぞ。今日中に方をつけよう」

 爆発騒ぎはなんとか収まった。
 呪いは使い方によっては最強だな。
 どうも死体術士は攻撃能力に偏りがちだな。
 防御能力もなんとか考えるか。
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