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第9章 噂から始まる犯罪者狩り

第50話 催眠強姦魔

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 何事もないまま日々は過ぎて行く。
 禁忌持ちの極悪人やーい。
 そう思っても出てこない。
 どうやって情報を得たら良いんだ。
 困った時のボルチックさん頼み。

「ボルチックさん、禁忌持ちの極悪人の情報なんて持ってないですよね」
「なんでまたそんな事を知りたがるのですか」
「いやね、領主と仲良くなったんですよ。それでお手伝いがしたいと思いまして」
「なるほど、噂ではこの街は禁忌持ちの楽園などと呼ばれています。禁忌持ちの極悪人が来ても不思議はないですな」
「領主には門の所で人相書きと見比べるように進言したけど、防げるかどうか」
「情報屋を当たってみましょう」
「ええ、お願いします」

 これで情報はいいだろう。
 最近考えている事がある。
 フランダルとシュガイに宝石瓜の漬物を作らせるかどうか迷っている。
 要するにデュラハンが作れるようになるまで鍛えるかどうかだ。
 デュラハンの騎馬隊が居れば色々と使い所はある。
 裏切られた時はその時だな。
 俺は裏切られても平気なようにドラゴンを狩ってもっと強くなろう。

 聖水漬けは大根の他にナス、きゅうり、カブなどを作っている。
 異世界には野菜の旬という物がない。
 これはきっと魔力のせいだな。
 夏に採れる大根をみると妙な気分だ。
 試食すると聖水漬けは相変わらず美味い。
 早くシュプザム教会をぶっ潰して漬物屋に戻りたいものだ。

「何か、噂とかないか」

 俺はジュサに話し掛けた。

「女の子が襲われたらしいよ。女の子は夜出歩かないように通達が出回ってる」
「物騒だな。ひょっとすると。禁忌持ちの極悪人の仕業かもな」
「女の子を襲うなんて禁忌持ちの風上にも置けないわ」
「まだ、決まった訳じゃない。情報を待とう」

 ボルチックさんから言付けが来た。
 内容は催眠強姦魔のファルザムを見たというものだ。
 こいつが女の子を襲ったのかな。
 情報では闇魔法使いでスリープの魔法を得意としているらしい。

 対策を考えないと。

「シャデリー、闇魔法のスリープを使った時の弱点は」
「刺激に弱いわね。刺激を与えると目を覚ますのよ」
「カフェインかな。コーヒーはまだ見たことないな」
「そんなの叩きゃ良いんだ。さもなくば、スケルトンあたりに針を持たせてブスリとやれ」

 そう言ってビーセスが会話に入って来た。

「乱暴だな。もっと穏便なのはないのかよ」
「眠れなくなる呪いを掛けてあげましょうか」
「それも勘弁だな」
「ゴーストに憑依してもらったら。ゴーストって眠らないんだよ」
「ミディ、ごめんよ。体の自由は奪われたくないんだ」
「注文の多い男だな。魔獣を一体つけてやろうか。がぶりとやれば目を覚ますさ」
「俺は漬物屋だ。漬物で解決する」

 そうは言ってみたものの。どうやって。
 そうだ、わさび漬けってのがあったな。
 あれなら。
 俺は急きょ元住んでいた家に戻って、きゅうりのわさび漬けをゾンビで作った。

 試食してみる。
 つーんと鼻にわさびが抜けてものすごい涙が出てきた。
 新鮮だとわさびはこんなにも辛いんだな。
 街に持って帰りメンバーを集めた。

「さあ、シャデリーやってくれ」
「闇よ安らかな眠りを【スリープ】」

 俺は口の中にあるゼリースケルトンでパックされたわさび漬けを噛み砕いた。

「つーんと来た。水、水をくれ」
「はい、お水」
「これはたまらん。売り出すのなら、もっとマイルドにしよう」

 ボルチックさん催眠強姦魔の居所を聞いた俺は現場に駆けつけた。
 そこは、街の外に出来上がったスラムの一室だった。

「観念しろ」
「闇よ眠りに誘え【スリープ】」
「くうーっ、つーんときた。効くぅ」
「なぜ眠らない」
「こんどはこっちの番だな。吸えと金ときん。解き放たれた死よ蹂躙せよ」

 催眠強姦魔は吸血スライムに血を抜かれ即死した。
 こんな奴ヴァンパイアにしたくないんだが。
 まあ手駒の一人だ。
 悪人なら使い捨てても罪悪感がない。
 とりあえずは贖罪だな。
 それから開拓地でこき使ってやるか。

「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】」
「はい、ボス」
「ここの事はどうやって知った」
「裏の情報屋です」
「そいつには一言いっておきたいな」
「無駄だと思います」
「なぜだ」
「シュプザム教会が最初この話を持って来たと別の情報屋が言ってました」

 まったく、シュプザム教会はろくな事をしない。
 影で犯罪者を煽るなんてな。
 たぶん、犯罪者が暴れまくってから、聖騎士が必要ですよねと領主に言うつもりなんだろう。
 そうは行くものか。
 なんとしても阻止してやる。
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