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第8章 領主ヴァンパイアから始まる教会排斥

第45話 領主をヴァンパイア化

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「兄ちゃん、遂に領主の趣味をつかんだぜ」
「お手柄だな」
「へへーん。なんと古銭収集が領主の趣味らしいよ」
「約束の金貨十枚だ」

 うーん、古銭かぁ。
 オークションで競り落とすか。
 いやそこまで時間に猶予はないな。
 じゃあ、あれで行くか。

 俺は宝石瓜が競り落とされるのを待った。
 もちろん漬物を領主に贈るためだ。

 何日かして待望の宝石瓜が手に入った。
 それに一円玉を付けて領主に贈る。
 もっと珍しいお金がありますという手紙と共に。

 その日のうちに会いたいと返答があった。
 今回は失敗しても良いとの気持ちでのぞんだ。
 武器が武器だけに取り上げられる可能性もあるからだ。

 俺は約束の時間に城の城門に貸し馬車で乗りつけた。
 一張羅をジュサに作ってもらい身に着けて謁見にのぞむべく門をくぐる。

「カワバネ商店のサクタか。話は聞いている。規則でな。身を改めさせて貰う」
「はい」

 上着は言うに及ばず、パンツの中まで調べられた。

「石が嵌ったペンダントにポーションが2本それに財布か」
「ポーションをめてみろ」
「はい」

 俺はポーション瓶の蓋を取って中身をめる。
 口の中に甘い味と鉄錆の味が広がった。

「毒ではないようだな。何の薬だ」
「貧血の薬です。血から作られています」
「なるほどな」

 兵士がポーション瓶の中身をめる。

「確かに血の味だ。通って良いぞ」
「ご苦労様です」

 案内の使用人が呼ばれて謁見を待つ部屋まで案内される。
 一時間待たされ謁見はかなった。

「領主のセバスター・ラモンドだ。おもてをあげろ」
「カワバネ商店のサクタです。お見知りおきを」
「宝石瓜、馳走になった。聞きたいのだがあのコインはどういう由来の物だ」
「それがさっぱり分かりません。若い時に各地を放浪いたしまして、そこで偶然手に入れたものです。なんと道端に落ちていました」
「ほうそんな事が」
「もう一つ手に入れた珍しいお金があるのですが。条件によっては献上させて頂いてもよいと思っています」
「なんだ。はよ申せ」
「領主様のコインのコレクションを見せて欲しいのです」
「なんだそんな事か。許す」

 俺は領主と二人趣味の部屋に入る。
 ここには護衛を入れないのはバートからの情報で分かっていた。
 同じ趣味を持つ人間を入れて悦に入るのが楽しみらしい。

「では約束の珍しいお金です」

 俺は一万円札を差し出した。

「なんと、紙のお金とは初めて見たぞ」

 領主はモノクルを着け仔細に一万円札を眺め始めた。
 チャンスだ。

 俺はポーションをペンダントトップに掛ける。
 ペンダントトップはポーションを纏いスライムの姿を取り戻した。
 俺はヴァンパイアスライムのと金ときんを領主の口に押し付ける。
 領主は声もなく窒息した。

「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】。解き放たれた死よ蹂躙せよ」
「はい、ボス。蹂躙開始します」
「いや蹂躙はしなくていいから。いつも通り業務をしていろ。いいか、教会とは手を切れ。理由を聞かれたら、ネオシンク教に入信したと言え」
「はい、ボス」

 ふぃー、一仕事を終えた気がする。
 後は領主を守る盾だな。
 ヴァンパイアの護衛をつけるのがよさそうだな。
 そうだとっておきがいるじゃないか。
 ラスモンドが適任だ。
 顔が知られているから、覆面をさせよう。
 剣筋から見破られそうな気もするが。
 その時はその時だ。

 店の倉庫に戻って、ラスモンドを起こした。

「仕事だ。命に代えても領主を守れ」
「はい、ボス」

 俺の予備の覆面と手紙を渡して領主に会いに行かせた。
 よしこれで良い。

 この街で領主にやらせることは。
 宗教の自由。
 税金を安くする。
 禁忌持ちの取り締まりを無くす。
 とりあえずこの辺りだな。

 教会はどう出て来るだろう。
 反教会の貴族もいる事はいる。
 でも、ネオシンク教への転身は許せないかもしれないな。

 出方を待っているだけじゃあ駄目だな。
 攻めないと。
 そうだ。
 シュプザム教会に税金を掛けよう。
 地味な嫌がらせになるかも。
 大人しく払うかな。
 いやひと悶着あるだろう。

 それと犯罪行為をしている輝職きしょく同盟の人間は多数いたはずだ。
 俺が皆殺しにしたが、調べれば犯罪証拠はでるだろう。
 それを告発してやれ。
 その事を理由に輝職きしょく同盟をテロ集団に指定させてやろう。
 教会はその辺りが上手いんだよな禁忌持ち以外は殺していない。
 何か手を考えよう。
 いや待てよ。
 汚職の罪で裁くのはどうだ。
 絶対、領主に金が渡っているはず。
 領主と相談してみよう。

 実に平穏に一週間が過ぎた。
 輝職きしょく同盟の告発も汚職の告発もまだしてないから当然だけどな。
 証拠固めは大事だし、時間が掛かる。

 一週間の間に宝石瓜が三個届いて、遂に俺のレベルが60に。
 新たに作れる事になったアンデッドはデュラハンだ。
 この辺りだとほとんど伝説の存在になる。
 ヴァンパイアより弱いという事はないだろう。

 次のレベルに上げるのは宝石瓜より格の高い存在を見つけ出さないと。
 思い当たる節はないな。
 この街が落ち着いたらゆっくり考えてみようか。
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