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第7章 襲撃から始まる暗躍生活
第38話 宿舎襲撃
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街に納品がてら、様子を見に行く事にした。
店の倉庫に行くと、俺が置いた覚えの無い大きい木箱が二つある。
開封厳禁と札が貼ってあった。
何だこれは。
木箱を持ち上げようとした。
ずっしりと重い。
レベルアップしているから持ち上がるが、女性にはまず持ち上がらない重さだ。
俺の店で使っている倉庫に入っているのだから、俺が開けるのは問題ないよな。
糊で封をされた木箱を開けにかかる。
べりべりと音がして蓋が開けられた。
「ぎょえ!!」
俺は思わず声を出した。
中にラスモンドが入って眠っている。
俺も忘れかけていたがラスモンドは輝職同盟支部のお偉いさんだ。
じゃあ、もう一つは。
そっちは教会の小太りの男が入っていた。
隠れるようにとは言ったが俺の店の倉庫に隠れなくても。
「おい、起きろ」
「はい、ボス」
「ボス、おはようございます」
「なんでここに来た」
「路地裏でフットニー殿を見かけましてな。旧知の間柄ですし、ヴァンパイアだと一目で分かったので、盛り上がりましてな」
教会の男はフットニーというのか。
二人が顔見知りだというのは当たり前だな。
輝職同盟と教会は両輪だからな。
「ラスモンド殿が安全な隠れ家を知っていると言うのでそれに乗ったのです。魔力を温存するのに木箱で眠りにつくというアイデアを考えたのは私です」
「まあいい、魔力を注入してやるから、もう少し眠っていろ」
「はい」
「了解です」
木箱の蓋に糊をつけて再封印した。
このおっさん達はこれでいいだろう。
仕事ができたら起こせば良い。
「凄い、声がしましたけど、泥棒ですか」
店番の女の子がほうきを持ってやってきた。
「なんでもない。この木箱は危険物だから開けるなよ。開けると死ぬから」
「そうなんですか。聞こうと思っていたところだったんです」
「とにかく、そういう訳だ。このところの街の様子はどうだ」
「スラムから大量に人が居なくなったらしいですよ」
コミュニティのメンバーとネオシンクの信者が消えたからだな。
「他には」
「教会を襲撃した犯人のジェノサイドはまだ捕まっていないようですね。一昨日、鑑定士が店にも来ました」
鑑定士とかち合うと厄介だな。
門に鑑定士を派遣されたら、俺が死体術士だとばれるな。
商品の納品は人間を雇おう。
人選するのに口が堅い者を選ぶのは難しい。
ネオシンクの信者は捕まりそうだからパスしたい。
誰か良い人が居ないかな。
「お仕事中すまない。店の方に声をかけたのだが、居なくてな。こちらで声がしたものだから入らせてもらった」
やけに腰の低いこの人物は聖騎士だ。
白銀の鎧からそれが分かる。
「私が店主のサクタです。何か御用ですか」
「聖騎士の食事が不味いとの声が上がってな。聖水漬けを納入してほしい」
「売買はボルチック商店に委託しているのですが、それでは何か不味いのですか」
「貧乏性でな。こちらから直接仕入れれば安く上がると思ったのだ」
「そうですか。せっかく、足を運んでもらったので、納入させて頂きます」
「そうか、頼むぞ」
「今、聖騎士は何人ぐらい居らっしゃるのですか。それによっては増産も考えないといけませんので」
さりげなく聖騎士の動向を尋ねたが大丈夫だろうか。
「そうだな。今のところ事務方を入れて千人は居るな」
「そんなにですか」
「文句が出ているのは主に貴族出身のやつらだから、三十人ほどだな」
「それなら、なんとかなりそうです」
「よろしく頼むぞ」
そう言うと聖騎士は去って行った。
千人を皆殺しにするのは骨が折れるな。
さて、どうしよう。
理想は各個撃破だ。
扇子は現在グールで作っている。
ヴァンパイアで作ってみたらどうだろう。
格は低いからそんなには魔力は食わないはずだ。
一人を飲み込む規模できれば良い。
聖騎士が寝泊りしている建物の入り口に仕掛けて夜限定で一日一人をターゲットに狙う。
こんなのでどうかな。
血を吸えば魔力の供給なしに自立できるはずだ。
ただな、人が消えれば捜査されるだろう。
大量には殺せない。
細菌は頭脳なんてない。
食えぐらいしか命令は下せない。
選別は出来るんだが、食っても良いエリアと食っては駄目なエリアしか指定できない。
あと一応温度を感じる事は出来る。
よし計画がまとまった。
聖水漬けを納品するついでに、パワーアップした扇子を床に満遍なくばら撒いた。
細菌なんてばら撒いたら見えないからな。
温度が下がったら動き出すよう言ってある。
寝静まった頃、動き出すはずだ。
建物の中に居る人物はもれなくあの世行きのはず。
俺は疑われない様にそしらぬ顔でその場を後にした。
次の日店で。
「大変です。聖騎士の宿舎が襲われたって、もっぱらの噂です。何でも身体を溶かす化け物だとか」
「どうなった」
「苦労の末、建物に火を放って退治したそうです。夜中に火事の鐘が鳴らされて飛び起きました。火事見物しちゃって寝不足です」
「あんまり危ない所に行くなよ」
「はい」
パワーアップした扇子は上手くやったようだ。
俺は燃え落ちた宿舎を見物に出かけた。
火事の現場には鑑定士募集の立て札が立っていた。
立て札には年間金貨三千枚の報酬を約束するとある。
教会は本格的にがさ入れする為、鑑定士募集に踏み切ったようだ。
帰りに寄った無人となった教会の表にも、募集の立て札がある。
店の倉庫に行くと、俺が置いた覚えの無い大きい木箱が二つある。
開封厳禁と札が貼ってあった。
何だこれは。
木箱を持ち上げようとした。
ずっしりと重い。
レベルアップしているから持ち上がるが、女性にはまず持ち上がらない重さだ。
俺の店で使っている倉庫に入っているのだから、俺が開けるのは問題ないよな。
糊で封をされた木箱を開けにかかる。
べりべりと音がして蓋が開けられた。
「ぎょえ!!」
俺は思わず声を出した。
中にラスモンドが入って眠っている。
俺も忘れかけていたがラスモンドは輝職同盟支部のお偉いさんだ。
じゃあ、もう一つは。
そっちは教会の小太りの男が入っていた。
隠れるようにとは言ったが俺の店の倉庫に隠れなくても。
「おい、起きろ」
「はい、ボス」
「ボス、おはようございます」
「なんでここに来た」
「路地裏でフットニー殿を見かけましてな。旧知の間柄ですし、ヴァンパイアだと一目で分かったので、盛り上がりましてな」
教会の男はフットニーというのか。
二人が顔見知りだというのは当たり前だな。
輝職同盟と教会は両輪だからな。
「ラスモンド殿が安全な隠れ家を知っていると言うのでそれに乗ったのです。魔力を温存するのに木箱で眠りにつくというアイデアを考えたのは私です」
「まあいい、魔力を注入してやるから、もう少し眠っていろ」
「はい」
「了解です」
木箱の蓋に糊をつけて再封印した。
このおっさん達はこれでいいだろう。
仕事ができたら起こせば良い。
「凄い、声がしましたけど、泥棒ですか」
店番の女の子がほうきを持ってやってきた。
「なんでもない。この木箱は危険物だから開けるなよ。開けると死ぬから」
「そうなんですか。聞こうと思っていたところだったんです」
「とにかく、そういう訳だ。このところの街の様子はどうだ」
「スラムから大量に人が居なくなったらしいですよ」
コミュニティのメンバーとネオシンクの信者が消えたからだな。
「他には」
「教会を襲撃した犯人のジェノサイドはまだ捕まっていないようですね。一昨日、鑑定士が店にも来ました」
鑑定士とかち合うと厄介だな。
門に鑑定士を派遣されたら、俺が死体術士だとばれるな。
商品の納品は人間を雇おう。
人選するのに口が堅い者を選ぶのは難しい。
ネオシンクの信者は捕まりそうだからパスしたい。
誰か良い人が居ないかな。
「お仕事中すまない。店の方に声をかけたのだが、居なくてな。こちらで声がしたものだから入らせてもらった」
やけに腰の低いこの人物は聖騎士だ。
白銀の鎧からそれが分かる。
「私が店主のサクタです。何か御用ですか」
「聖騎士の食事が不味いとの声が上がってな。聖水漬けを納入してほしい」
「売買はボルチック商店に委託しているのですが、それでは何か不味いのですか」
「貧乏性でな。こちらから直接仕入れれば安く上がると思ったのだ」
「そうですか。せっかく、足を運んでもらったので、納入させて頂きます」
「そうか、頼むぞ」
「今、聖騎士は何人ぐらい居らっしゃるのですか。それによっては増産も考えないといけませんので」
さりげなく聖騎士の動向を尋ねたが大丈夫だろうか。
「そうだな。今のところ事務方を入れて千人は居るな」
「そんなにですか」
「文句が出ているのは主に貴族出身のやつらだから、三十人ほどだな」
「それなら、なんとかなりそうです」
「よろしく頼むぞ」
そう言うと聖騎士は去って行った。
千人を皆殺しにするのは骨が折れるな。
さて、どうしよう。
理想は各個撃破だ。
扇子は現在グールで作っている。
ヴァンパイアで作ってみたらどうだろう。
格は低いからそんなには魔力は食わないはずだ。
一人を飲み込む規模できれば良い。
聖騎士が寝泊りしている建物の入り口に仕掛けて夜限定で一日一人をターゲットに狙う。
こんなのでどうかな。
血を吸えば魔力の供給なしに自立できるはずだ。
ただな、人が消えれば捜査されるだろう。
大量には殺せない。
細菌は頭脳なんてない。
食えぐらいしか命令は下せない。
選別は出来るんだが、食っても良いエリアと食っては駄目なエリアしか指定できない。
あと一応温度を感じる事は出来る。
よし計画がまとまった。
聖水漬けを納品するついでに、パワーアップした扇子を床に満遍なくばら撒いた。
細菌なんてばら撒いたら見えないからな。
温度が下がったら動き出すよう言ってある。
寝静まった頃、動き出すはずだ。
建物の中に居る人物はもれなくあの世行きのはず。
俺は疑われない様にそしらぬ顔でその場を後にした。
次の日店で。
「大変です。聖騎士の宿舎が襲われたって、もっぱらの噂です。何でも身体を溶かす化け物だとか」
「どうなった」
「苦労の末、建物に火を放って退治したそうです。夜中に火事の鐘が鳴らされて飛び起きました。火事見物しちゃって寝不足です」
「あんまり危ない所に行くなよ」
「はい」
パワーアップした扇子は上手くやったようだ。
俺は燃え落ちた宿舎を見物に出かけた。
火事の現場には鑑定士募集の立て札が立っていた。
立て札には年間金貨三千枚の報酬を約束するとある。
教会は本格的にがさ入れする為、鑑定士募集に踏み切ったようだ。
帰りに寄った無人となった教会の表にも、募集の立て札がある。
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