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第4章 チンピラから始まる拠点建設

第21話 宝石瓜

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「ボス、こんど一度、開拓地に来て見てくだせぇ」
「ああ、暇を見つけて行くよ」
「それと、こんなのを見つけましたぜ」

 チンピラヴァンパイアが奥地で見つけたと言って、小振りの枕ぐらいの綺麗な果物を持ってきた。
 七色の透き通る果物だ。

「ジュサ、これなんだけどなんだか分かるか」
「それってもしかして宝石瓜じゃないの。オークションで金貨千枚の値段がつくらしいわよ」
「これが一つ見つけただけで、王都にくらつきの家が建つというあれか」

 さてとどうするか。
 売るのは簡単にできる。
 ボルチックさんに頼めば良い。
 たが待てよ。
 話では宝石瓜は鑑賞用でなくて食用だ。
 アンデッドにしてから売ってみよう。
 なんとなく格が高いんじゃないかと思った。

「宝石瓜よ塩をまとい美味しい漬物になれ【メイクアンデッド】」

 頭の中に響くファンファーレ。
 久しぶりに来たな。
 やっぱり格が高いのだな。

「あー、アンデッドなんかにして。勿体もったい無い」
「俺達は味見できないけど美味くなっているはずだ」

 それから、ジュサに宝石瓜の格を下げさせて、ボルチックさん売り渡した。
 今日はボルチックさんと会合の日だ。

「どうでした宝石瓜」
「切り分けて売ったら、もの凄い評判で」

 そりゃ金貨千枚は一括では出せないよな。
 百等分すれば金貨十枚だから、なんとか買えるだろう。

「それほどですか」
「最初に買った人がなんとグルメで評判のグレンスさんでして。クチコミで噂が広がってあっと言う間に完売です」
「それは良かった」
「ものは相談なんですが、宝石瓜の漬物をもっと作れませんか」
「作りたいのはやまやまなんです。けど、材料がなんとも」
「ではこういうのはどうでしょう。宝石瓜の漬物を売ったあなたと私のお金で商売しませんか」
「具体的にはどんな事を」
「オークションで宝石瓜を競り落とすのです。それで漬物を作る」

 なるほど俺はレベルアップが出来るので損は無い。

「是非やりましょう」
「良い商売ができた気がします」
「ではオークションで落札できたら連絡して下さい」
「ええ」

 がっちりと握手してから別れた。



 オークションで宝石瓜が落札されるのを首を長くして待とう。
 俺はデルバジルを護衛にして、森の奥の開拓地に行く事にした。
 目印の樹の傷を頼りに森を歩く。
 この辺りの魔獣もだいぶ減ったな。
 道中、魔獣の襲撃もなく目的地に着いた。

 開拓地は木が切り倒されて、切り株がゴロゴロと転がっていた。

「おい、来てやったぞ」
「どうです。広いでしょう」

 そうだな。
 百人ぐらいは住めそうだ。
 だが、まだまだだ。一万人ぐらい住める大都市にしたい。

「よくやった。これからも変わらずに励め」

 そうは言っても、まだ建物を建てる段階では無いようだ。
 しばらくしたらまた来てみよう。

 俺は今、猛烈もうれつに忙しい。
 ジュサが朝早く村から野菜を回収するので、起きた俺はそれを漬物にする。
 漬物にしたら街まで運ぶ。
 そして、街でシャデリーとデルバジルの報告を聞いて色々な対処をする。
 街から帰ったら、チンピラヴァンパイアの報告を聞くといった具合だ。

 漬物作りを別の死体術士に任せられたら良いのだが。
 待てよ。
 漬物作りは別に死体術士だけの特権だとは限らない。
 呪術で作っても良いんじゃなかろうか。

「ジュサ、呪術で漬物が作れないか」
「そんな事を考えた事が無かったわ」
「塩を染みこませる呪いだ」
「なるほど。かの物を塩と乳酸菌で苦しめたまえ【カース】。あーあ、本当につまらない物を呪ってしまったわ」
「お味はどうかな。うん、普通の漬物だ。でもこれはこれで美味いな。聖水漬けには劣るけど、売り物にはなるな」

 後はシャデリーの闇魔法で漬物か。
 えーと、腐敗魔法は別系統だし。
 精神魔法は関係ないな。
 塩を染みこませてから乳酸菌の活性化が出来れば良い。
 乳酸菌の活性化は精神魔法でなんとかなりそうだ。
 塩は魔法毒に侵すのでなんとかならないか。
 塩だって毒の一種みたいなものだろう。

 そうと決まれば街まで野菜を運んでシャデリーに試してもらおう。
 俺は店までやって来てシャデリーを呼んだ。

「闇魔法で漬物を作れ」
「ええええっ。どうやって」
「塩の魔法毒に侵してから乳酸菌を活性化だ」
「乳酸菌ってなに」
「そこからか」

 一時間掛けて細菌のレクチャーをした。

「という訳だ」
「やってみるよ。塩の毒でこの物を侵したまえ【ダークポイズン】。乳酸菌よ狂乱せよ【フレンジイ】」
「食ってみるか。ふむ美味いな。ちゃんと漬物になっている。塩加減はちょっと調整が必要だな。シャデリー、副会頭に昇格だ。代わりの店員が見つかったら漬物を作れ」
「まったく闇魔法で漬物を作るなんてね」
「ところで前から疑問に思っていたけど闇魔法はどこで覚えた」
「それね。言いたくなかったけど、禁忌持ちのコミュニティがあるのよ」
「紹介してはくれないのだろうな」
「そうね。あなたは危険すぎる。コミュニティのメンバーは平和を愛する人がほとんどだわ。そっとしておいてほしい」
「なにか困った事があったら言えよ」
「ええ、頼らせてもらうわ」

 漬物を作る必要が無くなって手が空くな。
 チンピラ狩りもほとんど終わった事だし。
 そろそろ、輝職きしょく同盟支部をなんとかするか。
 デルバジル、最後までばれなかったな。
 意外と優秀なのか。
 長く使ってやるかとも考えたが。
 禁書には記憶が動かすと書いてあった。
 たけど、魂が囚われているような気もするから、切りのいいところで死体に戻してやろう。
 早く支部を壊滅させる作戦を立てないとな。
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