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第2章 世界樹から始まる英雄への道
第9話 そり
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二時間も背負われていると体の節々がおかしい。
「少し休もう。おんぶされているだけでも疲れる」
「疲れを感じない呪いを掛けてあげましょうか」
「それ、疲れを感じないだけで、肉体にはもの凄い負荷が掛かるんじゃ」
「治癒魔法使いじゃなくて悪かったわね」
「そうだ。走り続けるんじゃなくて、止まれなくすれば良いんだ」
「ええと、どういう事」
「物には摩擦係数ってのがあるんだ。でこぼこがあると早く止まるだろ。それを呪いで軽減する」
「そりでもないと難しいんじゃないの」
「そうだなリビングアーマーの靴に掛けたら転がりまくりだろう。パーツを外して呪いを掛ける」
「角行の前面に呪いを掛けるのね。それは分かったけど誰が押すの」
「フライングソードに引っ張ってもらうのに決まっているだろう。それに飛車が押す」
「リビングアーマーに相乗りするの。凄い絵面ね。それで本当に早くなるのかしら」
「とにかくやってみよう。その前に」
俺は角行から滑っては困る足と手と背中などのパーツを外した。
「やってみてくれ」
「ええ。かの物を立ち停まれなくしたまえ。【カース】。本当につまらない物を呪ってしまったわ」
角行は膝と肘で立ち上がろうとするが、滑って転がりまくった。
俺は角行に外したパーツを押し付け魔法を使う。
「全身鎧よ、生ける死者になれ。【メイクアンデッド】パーツよ元に戻れ【アンデッドヒール】」
角行に全てのパーツがそろい角行は腹ばいになる。
滑るのを飛車が足を持って押さえた。
皮のベルトを角行の面頬に咥えさせる。
フライングソードも角行の両手に収まり準備は整った。
「よし、出発だ」
そりとなった全身鎧の上に跨って俺達は風を切って進む。
案外上手くいくもんだ。
少しそり気味の変なポーズを長時間とってもアンデッドは疲れない。
角行の手は万歳の格好で手には一本ずつフライングソードが握られている。
足は膝を折り曲げ後ろから押す飛車が掴み易いようにした。
うん、順調だ。
前方にオークが見えてきた。
「飛車よ。跳ね飛ばせ。最大出力だ。ジュサ、掴まれ」
オークの顔に焦りが見える。
二人分プラス全身鎧二体分だから重量的には負けないはずだ。
「かの者を重くしたまえ。【カース】」
「なぬ。体が重い。くそう、俺に呪いを掛けたな」
フライングソードが衝角よろしくオークの膝辺りに当たった。
足一本持っていかれて転がるオーク。
「飛車、ターンだ。止めを刺せ」
足を一本持ってかれて膝立ちしているオークに突撃。
見事討ち取った。
どんなもんだい。
アンデッドそり角行号の前には敵など無い。
それから、リビングアーマーに魔法を掛け直したりしながら、ぶっ通しで駆け続けた。
途中出てきた魔獣なんて、そりの衝角で串刺しよ。
夜が明ける頃にようやく街が見えた。
やっとか。
リビングアーマーよ、ご苦労様。
フライングソードもご苦労様。
俺達は教会の買取所に向った。
教会は街の一等地に建っている。
ちくしょう、たんまり儲けやがって。
今から絞りとってやるからな。
俺が売った世界樹の実が教会の莫大な収入になるのは言わない約束だ。
朝の参拝に訪れる人達を横目に目の下に隈をこしらえた俺は堂々と中に入った。
そこでは、神官が受付をしていたので話し掛ける。
「世界樹の実を採って来たので、買い取ってもらいたいです」
「鮮度が悪いと買い取らないよ」
「見て下さいこれです」
俺が世界樹の実を渡すと。
「おお、瑞々しい、神々しさすら感じる」
嘘ばっかりだ。
世界樹なんて言っているけど実際は樹の魔獣。
トレントみたいに動かないけど、攻撃すると魔法を使って来るのは知っているぞ。
世界樹の実を採るのは落ちた物を回収しているだけだ。
「特殊な加工をしたんで、エリクサーに出来るか確認してもらっても良いですか」
「それはご親切にどうも。急げ世界樹の実だ」
神官はそう言って下っ端の神官に壊れ物を扱うように実を渡した。
「ところで職業は何を」
「見ての通りゴーレム使いです」
「それでは道中が大変だったでしょう」
「ゴーレムには毒を塗った剣を装備させてます」
「確かに魔獣に慈悲は必要ないですからな」
「出来ました。エリクサー最上級です」
奥から下っ端神官が息を切らして駆けて来た。
「おい、走るなと何度言ったら。ちなみに、特殊な加工って言うのは」
「漬物ですよ。特殊な溶液に漬け込みます。詳細を教えると食っていけなくなるのでご勘弁を」
「そうですか。では、報酬として金貨百枚の所を金貨百二十枚支払います」
「ありがとうございます」
「いえ、このエリクサーで病の人が助かりますので、礼には及びません」
知っているぞ。
教会は治療するために法外な値段を取るってな。
貴族のみにしかエリクサーは使われない。
「また、世界樹の実を運びますのでよしなに」
そう言って俺はその場を離れた。
今から寝ると夕方に起きてしまう。
ここは眠気を堪えて起きておく手だな。
「ちょっと、散財しよう。食べたいものとかあるか」
「長い時間揺られていたので少し気分が悪いわ。軽い物とお茶が良いわね」
それじゃ散財にならないけど、なんだかデートみたいだな。
ないな。
服呪いジャンキーのジュサとデートだなんて。
「少し休もう。おんぶされているだけでも疲れる」
「疲れを感じない呪いを掛けてあげましょうか」
「それ、疲れを感じないだけで、肉体にはもの凄い負荷が掛かるんじゃ」
「治癒魔法使いじゃなくて悪かったわね」
「そうだ。走り続けるんじゃなくて、止まれなくすれば良いんだ」
「ええと、どういう事」
「物には摩擦係数ってのがあるんだ。でこぼこがあると早く止まるだろ。それを呪いで軽減する」
「そりでもないと難しいんじゃないの」
「そうだなリビングアーマーの靴に掛けたら転がりまくりだろう。パーツを外して呪いを掛ける」
「角行の前面に呪いを掛けるのね。それは分かったけど誰が押すの」
「フライングソードに引っ張ってもらうのに決まっているだろう。それに飛車が押す」
「リビングアーマーに相乗りするの。凄い絵面ね。それで本当に早くなるのかしら」
「とにかくやってみよう。その前に」
俺は角行から滑っては困る足と手と背中などのパーツを外した。
「やってみてくれ」
「ええ。かの物を立ち停まれなくしたまえ。【カース】。本当につまらない物を呪ってしまったわ」
角行は膝と肘で立ち上がろうとするが、滑って転がりまくった。
俺は角行に外したパーツを押し付け魔法を使う。
「全身鎧よ、生ける死者になれ。【メイクアンデッド】パーツよ元に戻れ【アンデッドヒール】」
角行に全てのパーツがそろい角行は腹ばいになる。
滑るのを飛車が足を持って押さえた。
皮のベルトを角行の面頬に咥えさせる。
フライングソードも角行の両手に収まり準備は整った。
「よし、出発だ」
そりとなった全身鎧の上に跨って俺達は風を切って進む。
案外上手くいくもんだ。
少しそり気味の変なポーズを長時間とってもアンデッドは疲れない。
角行の手は万歳の格好で手には一本ずつフライングソードが握られている。
足は膝を折り曲げ後ろから押す飛車が掴み易いようにした。
うん、順調だ。
前方にオークが見えてきた。
「飛車よ。跳ね飛ばせ。最大出力だ。ジュサ、掴まれ」
オークの顔に焦りが見える。
二人分プラス全身鎧二体分だから重量的には負けないはずだ。
「かの者を重くしたまえ。【カース】」
「なぬ。体が重い。くそう、俺に呪いを掛けたな」
フライングソードが衝角よろしくオークの膝辺りに当たった。
足一本持っていかれて転がるオーク。
「飛車、ターンだ。止めを刺せ」
足を一本持ってかれて膝立ちしているオークに突撃。
見事討ち取った。
どんなもんだい。
アンデッドそり角行号の前には敵など無い。
それから、リビングアーマーに魔法を掛け直したりしながら、ぶっ通しで駆け続けた。
途中出てきた魔獣なんて、そりの衝角で串刺しよ。
夜が明ける頃にようやく街が見えた。
やっとか。
リビングアーマーよ、ご苦労様。
フライングソードもご苦労様。
俺達は教会の買取所に向った。
教会は街の一等地に建っている。
ちくしょう、たんまり儲けやがって。
今から絞りとってやるからな。
俺が売った世界樹の実が教会の莫大な収入になるのは言わない約束だ。
朝の参拝に訪れる人達を横目に目の下に隈をこしらえた俺は堂々と中に入った。
そこでは、神官が受付をしていたので話し掛ける。
「世界樹の実を採って来たので、買い取ってもらいたいです」
「鮮度が悪いと買い取らないよ」
「見て下さいこれです」
俺が世界樹の実を渡すと。
「おお、瑞々しい、神々しさすら感じる」
嘘ばっかりだ。
世界樹なんて言っているけど実際は樹の魔獣。
トレントみたいに動かないけど、攻撃すると魔法を使って来るのは知っているぞ。
世界樹の実を採るのは落ちた物を回収しているだけだ。
「特殊な加工をしたんで、エリクサーに出来るか確認してもらっても良いですか」
「それはご親切にどうも。急げ世界樹の実だ」
神官はそう言って下っ端の神官に壊れ物を扱うように実を渡した。
「ところで職業は何を」
「見ての通りゴーレム使いです」
「それでは道中が大変だったでしょう」
「ゴーレムには毒を塗った剣を装備させてます」
「確かに魔獣に慈悲は必要ないですからな」
「出来ました。エリクサー最上級です」
奥から下っ端神官が息を切らして駆けて来た。
「おい、走るなと何度言ったら。ちなみに、特殊な加工って言うのは」
「漬物ですよ。特殊な溶液に漬け込みます。詳細を教えると食っていけなくなるのでご勘弁を」
「そうですか。では、報酬として金貨百枚の所を金貨百二十枚支払います」
「ありがとうございます」
「いえ、このエリクサーで病の人が助かりますので、礼には及びません」
知っているぞ。
教会は治療するために法外な値段を取るってな。
貴族のみにしかエリクサーは使われない。
「また、世界樹の実を運びますのでよしなに」
そう言って俺はその場を離れた。
今から寝ると夕方に起きてしまう。
ここは眠気を堪えて起きておく手だな。
「ちょっと、散財しよう。食べたいものとかあるか」
「長い時間揺られていたので少し気分が悪いわ。軽い物とお茶が良いわね」
それじゃ散財にならないけど、なんだかデートみたいだな。
ないな。
服呪いジャンキーのジュサとデートだなんて。
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