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第三部 無双編

第73話 薬草人工栽培

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「ただいま」

 ローレッタは家の中で副業をしていた。
 作業する手を止めてこちらに寄ってくる。

「王都はどんだった」
「賑やかだった。皆に伝えたい事がある」
「フィオレラとローレッタを弟子から卒業させる。と言っても扱いは変わらないが」

 少し心寂しげな様子でフィオレラが話す。

「でも弟子だった事実は変わらないですよね」
「ああ繋がりは残るから心配しないで良い」

 ローレッタはご機嫌な口調で話す。

「ゴーレム操作とゴーレム作成のアビリティにも慣れできたはんでちょんどだ」
「いつの間に覚えたんだローレッタ。分析が復活したのか?」
「クレイグさんば紹介さいでから話の種にとフィオレラから習った」

 ああ、分析を失う前だな。それなら納得だ。

「そうかりっぱなゴーレム使いだな。それからポーション工房を立ち上げる忙しくなるぞ」



 工房を借りるのはレシールさんに任せ。俺達は薬草を集める事にした。
 薬草の場所は分からないのであてずっぽうだが、分析を怪しい所にかけ数十本の薬草を採る。
 レシールさんが使えない薬草は薬師ギルドに売り払う。
 残りの薬草でポーションを作らせた。



 ふと疑問が出てくる薬草はいつも似た草に囲まれている。
 全ての薬草がそうだ。
 薬草とそうでない草はどういう関係なんだろうか。
 もしかして普通の草が突然変異して薬草になるんじゃないだろうか。
 でもそれくらい普通調べているよな。
 突然変異の条件が難しいのかもしれない。



 森に沢山あるのは魔力だよな。
 魔力が周りにあると変異しやすいのかも。
 実験してみるか。
 魔力放出の魔道具を使って一時的に魔力を濃くしてみる。
 何日か試したが駄目だった。



 魔道具の魔力が無くなったので魔力を充填する為フィオレラを呼ぼうとして居ないのに気づく。
 仕方なく魔力ゴーレムから魔力放出してみる。
 三日後に普通の草が薬草になっていた。
 なぜなんだろう。
 魔力ゴーレムと魔道具の違いは。
 そうか思念がある魔力だと駄目なんだ。



 薬草の人工栽培に成功したが、魔力ゴーレムありきでは発表できない。
 まあいいか自分の工房で使う分だけ確保できれば。
 そうすると畑が欲しい所だ。
 そうだローレッタの村で作ってもらうか。



 魔力を掛けるのは一度で良いみたいなので薬草になる草を栽培して一回魔力を掛けに行けば良い。
 工房で使う分以外は薬師ギルドに売れば村に特産品が出来る。
 良いことずくめだ。



 薬師ギルドに行って受付でギルドマスターに会いたいと告げる。
 前とちがって微笑みかけられながら、ただいま予定を聞いて参りますと言われた。



 執務室に通された。

「今日は何のようだい。大魔法使い」

 前と違って皮肉な口調ではなく歓迎している雰囲気だ。

「薬草を増やすのに成功しまして」

 もの凄く好奇心をそそるといった感じになる。

「あんた凄いね天才だよ。ところでその方法は? 早く教えておくれ」
「方法は秘密です」

 幻滅したといった表情になるギルドマスター。

「なんだいケチだね。それで」

 残念そうな顔で舌打ちをするギルドマスター。



「栽培した薬草を買い取って欲しいのですが、持込すぎて価格が暴落するのを防ぎたいのです」

 薬師ではなくギルドマスターに切り替わったのだろう。真面目な口調で話してくる。

「数をギルドの方で調整しろって。そうだね薬草を採って生活している者が飢えてはね。分かったよ」



「それと薬草の育て方の記録とかありませんか?」
「それだったら確か資料室にあるよ」
「後で見に来ます。それとレシールと言う者が薬草を持ってくる手筈にします」



「分かった承知したよ。ああ、忘れるところだった。赤いポーションの結果がでたよ」
「どうでしたか?」
「効果は申し分なかったがね。副作用が出たよ」
「酷いですか」
「飲むと一時的にスキルが使えなくなるだけさ。傷口に掛けるのは問題ないがね」



 なんで、赤いポーションはスキルが使えなくなるのだろう。
 考えられるのは魔石の思念が邪魔してスキルが使えない。
 たぶんこの推測で合っているはずだ。

「そうすると使い所が限られる?」
「少なくともハンターには使えないね。それよりも毒として使えるのが問題さね」

 毒かぁ。そうかスキルが封じられるのなら確かに毒として使えるな。

「まあそこは秘匿レシピとする事で対応する。公開前に分かってよかったさ。国と教会に問い合わせたら毒として使われるのは知ってたよ。それと薬師高ランクの何人かはこのレシピを知っていたよ」
「薬師で知っていた人がいるんですか」
「レシピを知っていた者は副作用のせいで厄介事になると思い黙っていたそうだよ」

 確かに犯罪に使われてその責任を追及されたら困る。

「そうか。やぶへびだったんですね」
「ところであんた。このポーション飲んだかい」
「いいえ副作用が怖くて飲んでません」
「味が独特なんで料理に入れても丸分かりだから、毒としての危険度は低いね。ただ悪事に使われる可能性がね」

 そうか味か。
 確かにそれなら危険度は低いな。



「知ってるかい。魔力変質のスキルが出来たのは三十年前だよ」

 そんなに経ってないのだな。
 それから世界中に広まるのに十年ぐらいは掛かると思う。
 二十年ぐらいしか研究されてないのか。
 この建物はそこそこ古い。
 ポーション以外の薬もあるから薬師ギルド自体は昔からあるんだろう。

「まだまだ使い方は未開拓分野さね」
「そうですか。また何かあれば顔を出します」

 秘匿レシピって事は皆にも口止めしとかなきゃだな。
 魔石ポーションでは儲けそこなった。
 薬草栽培があるからそっちに期待しよう。



 次はローレッタの村の村長に掛け合って薬草の栽培を了承してもらう事だな。
 帰りに店で腕輪を受け取る。

「フィオレラ、ローレッタ、弟子卒業の腕輪だ」

 涙ぐむフィオレラ対照的に笑顔のローレッタ。

「ありがとうございます。これでゴーレム使いを名乗れます」
「こった立派だ物ば頂げるなんて」

 後の二人も呼び赤いポーションについて口止めした。
 皆は何でという顔で疑問符が頭に浮かんでいるようだ。
 毒として使えると言ったら一様に絶対製法は喋らないと約束してくれた。



「ローレッタ、レシールさんと故郷に行って薬草を栽培してくるよう村長に頼んでくれ」
「フィオレラは俺と栽培記録の写本だ」



 そうだビオンダさんはどうしよう。
 写本を一緒にしてくれないかな。

「ビオンダさん俺達と写本をしてくれませんか?」
「なぜ私がそんな事をせねばいけないのだ」

 うーん駄目か。どうすれば良いんだ。

「そんなすがる様な目で見ても駄目だぞ。人を雇え」

 そうか人を雇えば良いんだ。
 雑務ギルドに頼もう。

「そうします。悪いなフィオレラ。写本はキャンセルだ」



 雑務ギルドに依頼を出し商業ギルドに寄る。

「クリフォードさん魔道具持ってきました」
「良いですね。新しいのがありますか?」
「このベルトがそうです。避妊魔道具になります。売れませんか」

 遂に売り出してしまった俺達が作っているのがばれたら確実に変態扱いされるな。
 クリフォードさんの表情はいつもと変わらない。
 軽蔑されたらどうしようかと思ったけど良かった。

「娼館あたりが高く買いそうですね」



「在庫になっている魔道具はありますか? 売れないのは数を減らして作ろうかと」
「いえ在庫は一つもありません。それにまだ秘密はばれてないようです」
「逆に人気なのはどれですか?」
「そうですね。一番は照明でしょうか。次が威圧ですね命が掛かっていますから。三番目が洗浄でしょうか。魔道具ではないですが一番人気は方位磁針です」
「では次の時はその三つを増やして持ってきます。方位磁針はなるべく沢山作ります」
 方位磁針は黒鉄の加工が大変なだけだ。
 工房に下請けに出したいけど、俺が作っているのがばれると不味い。
 当分は魔力ゴーレムで変形スキルを使って地道に作るしかないだろう。



「ちなみ不人気なのは」
「筋力強化、劇場用照明、罪状確認ですな」

 筋力強化はスキルコピーの影響だろう。
 劇場用照明は特別な場所でしか使えない。
 罪状確認も使う人が限られるといったところか。

「それらは少なくします。では魔道具ができたらまた来ます」



 ローレッタがレシールさんを連れて三日後帰って来た。

「どうだった?」
「村長に許可ばもらった」

 かなり得意満面な感じのローレッタ。



「よくやった。これからもレシールさんを護衛して何回か行ってもらう事になる」
「里帰りが何度も出来るのはのであり難てだ」
「わも頑張った。何かご褒美ばけろ」

 レシールさん褒美を要求か。ちっかりしてるな。

 そうだな。

「ローレッタ、薬草に関する仕事をしている時はレシールさんと同じだけ給料をだそう」
「それでだ」
「わにはご褒美なしだが」
「工房の利益が上がったら四分の一をボーナスとして二人に出そう」
「気力が湧いでく」

 現金だなレシールさん。やる気を出してくれたようで良かった。
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