ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第二部 成り上がり編

第50話 霧中の襲撃

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 昨晩は襲撃もなく、順調に野営できた。
 天気はあいにくの曇り空だ。
 てきぱきといつも通り行動し狩りに向かう。

 一匹目の魔獣は牛みたいな鹿の魔獣ファルシオンムースだ
 資料によればファルシオンのいわれになっている立派な角に斬撃強化を掛けて突進してくる。

「魔力ゴーレムで突進を受け止める。二人は見ていてくれ」

 勢いを付けて突進してくるファルシオンムース。

「【土魔法】凄い音がしたな」

 ファルシオンムースの角は分厚い石の壁に阻まれた。
 石の壁を消し。
 ゼロレンジ魔法の雷で攻撃する。
 辺りに焦げ臭いが立ち込め。
 ゆっくりとファルシオンムースは倒れた。
 死んでいるのを確かめ。魔石を取る。

「よし、角と皮は換金できるから取るとして肉はどうしよう」
「昼飯と夕飯用に確保しましょう。がんばって料理します」
「お肉だの」
「よし、出来るだけ確保して悪くなったら、捨てよう」



 順調だったのはここまでで次の魔獣を探していたら、天候は悪化し雨が降りだした。

「どうする野営するか」
「雨の中の行動は危険が高いと思います」
「狩りばやってきた者の意見どしては野営すべきだびょん」
「今後雨の中の戦闘も起こる可能性があるから、この機会に挑戦してみたい」
「一戦ならやってもいいです」
「んだの。危ねぐなったら、逃げるんだどでやるべ」
「一当てしてみるか。魔獣を探そう」



 雨具を着て雨の中しばらく魔獣をさがす。
 魔獣も雨は嫌いなのかこんな時にかぎって見つからない。
 昼飯の時間になったので携帯食で簡単に済ます。
 雨の中をまた魔獣を探す。
 いつの間にか雨は小降りになってきた。

「いました一匹です」
「ワイヤーアリゲーターだ。水魔法で糸を作って飛ばしてくる」

 みんな疲れている。
 厄介だなどうするか。
 幸いワイヤーアリゲーターは遅い。
 銃で狙い撃つ。
 いいや面倒になってきた。
 加速砲で仕留めよう。
 距離が短いがなんとかなるだろう。
 念動を発動し弾を入れる。

 距離は二百メートルぐらいだったが、なんとかなったみたいだ。
 頭から血を噴いて前進が止まった。



 まずい霧が出てきた。

「やばいぞ。剥ぎ取りも無しだ。安全だと思われる場所を急いで探すぞ」

 なんとか良さそうな所を探し当て薪を馬ゴーレムから降ろし焚き火をする。
 霧が濃くなり照明用魔道具もほとんど意味をなしていない。
 鳴子型の魔道具もこの霧で正常に動くかどうか。



「フィオレラの魔力探知だけが頼りだ」
「はい、がんばります」
「経験からいうと。こった時は動がねにじっとしてら方がだの」
「霧が晴れるまで寝ないで起きていよう。魔獣が来なければ良いんだが」

 雑談しながらしばらく過ごす



「【魔力探知】何か四匹きてます。この辺の魔獣にしては魔力が小さいです」
「なんだろう。ファイヤーウルフかな」
「足音はさね」
「師匠、何か霧を晴らす秘策とか無いです?」

 霧を晴らす。思いついたのは一つある。
 はたして上手くいくか。
 試してみようかという時に霧の中から声がかかる。

「すまねぇルール違反なのはわかっちゃあいるが、火に当たらせてもらえねぇか」
「いいだろう。ゆっくり近づけ」

 四人の男が霧の中から現れる。
 罪状確認をするサインをフィオレラに送る。無罪のサインが帰って来た。



「俺は蒼炎を率いている。アリスターだ」
「俺は豪雷のリーダーのシロクです。ところで何がすまないのか教えてくれないか?」
「別のパーティは普通狩りの最中に会っても挨拶しねぇ。なるべく接触しないようにする」
「そんな事があるのかハンターになってまだ半年ぐらいなので知らなかったな」
「狩りで獲物の追跡の最中に話かけられ。狩りを台無しにされたら、たまらないだろ」
「そうですね」
「それに横取りの危険もある。ごろつきもいるから。狩りの最中に話かけるのは殺されてもしかたねぇ」
「通りで他のハンターに会わない訳だ」
「そんな訳ですまねぇ。食料も水もねぇんだ助けてくれ」

 うーん火に当るのはしょうがないか。食料は肉が有ったな。
 水は足りなくなれば魔力ゴーレムにアビリティで出させるか。

「今日獲った肉があるのでみんなで食べましょう。水も飲んで下さい」
「おうすまねぇ」



 肉を串に刺し。焚き火であぶる。
 アリスターが一人で再び寄って来たので質問してみる。

「なんでそんなに荷物が少ないのです?」
「オークの領域にベースキャンプがある。そこにかさばる物は置いてあるんだ」
「パーティの精鋭で挑んでいる訳ですか?」
「そうなんだよ。ポーターとか足手まといもそこにいるぜ」

「ゴーレム使いは雇わないのです?」
「Cランクなりたてには長期間雇えねぇ。今度は俺から聞いていいか?」
「ええどうぞ」
「あんたの職業はなんだ。全然思いつかねぇ」

 もしも魔獣が襲って来た時に攻撃方法がばれた場合の言い訳でとっさに思いついた。

「表向きはゴーレム使いですが、本当は大魔法使いなんです」
「えっ大魔法使い様でしたか。ご無礼な口をきいてすみませんでした」
「いいんですよ。前の口調で。事情があって隠しているというほどでは無いですけど、表向きはただのゴーレム使いです」
「それじゃあいつもの口調でいきますぜ。そのパーティメンバーの二人はどういう関係なんですかねぇ。女のハンターはめずらしいんで聞いてみてぇ」
「彼女達は弟子です」
「弟子てぇと。魔法使いの」
「そうなります。魔法の内容は切り札なのでご容赦願います」



 肉が焼けたのでみんなで食べた。
 食べ終わりほっとした時に狼の遠吠えがする。
 来たか腹を括るか。

「フィオレラ魔力探知してくれ」
「かまわないのですか?」
「ああ彼らは気にしないでいい」
「【魔力探知】二十匹ほどです」
「アリスターさん今から大魔法をします」

 魔力ゴーレムに生水のアビリティを実行させる。一帯の霧は水になって落ちる。



「すげぇぜ大魔法。霧が晴れちまった」
「おいおい、聞いたか大魔法だって」
「大魔法なんてのがあったか」
「生きて帰ったら、自慢してやろう」

 アリスターさんのパーティメンバーが口々に感想を言う。
 寄ってきたファイヤーウルフに魔法をお見舞いするか。



「【風魔法】うん上手くいった」

 風で特大の刃を生み出してファイヤーウルフを薙ぎ払う。

「おお風魔法すごいぜ。ファイヤーウルフが五匹もくたばった」
「魔法は見たことあるがあんなに凄くないはず」
「そうか、オーガとか火魔法の一発で倒したのを見た事あるぞ」
「馬鹿だな。風魔法は火魔法より攻撃力におとるんだ」
「まだまだ行きますよ【風魔法】【風魔法】【風魔法】」

 上手くいって良かった。まあ駄目ならトルネードがあるけど。



「おうやっこさん慌てて引き上げますぜ」
「助かった俺達だけだったら、危なかった」
「魔法使いがパーティに加入しないかなぁ」
「それにしても魔力量すごい。さすが大魔法使いだ」
「さぁ野郎共せめてものお礼に後片付けするぞ」
「「「うっす」」」



 後始末はアリスターさんのパーティがやってくれた。
 しばらくして霧も晴れ、アリスターさんのパーティはベースキャンプに引き上げて行く。

「師匠、あれは良かったのです?」
「どうせBランクに成る時に試験がある。大魔法使いという触れ込みで行こうと思う」
「それなら良いです」

 ここで野営の準備をした。
 見張りの時間までテントで横になる。
 今日も大変だったな明日は何もなければ良いけど。
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