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第二部 成り上がり編

第32話 魔道具

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 スキルの集中訓練は今まで避けてきた。
 魔石から他人の魔力を吸収すると凄くだるいから、それを一日中やるのは精神に来る。
 フィオレラにも止められていた。
 しかし、魔力探知は便利だからスキルで覚えておきたい。
 スキルだとアビリティと違って消費魔力が少なくなって扱いも楽だからやっぱりスキル習得の努力はこれからも続けなくてはならないだろう。
 そんな訳でフィオレラに協力してもらい。なんとか四日で魔力探知のスキルを覚えた。
 フィオレラは協力の交換条件としてネックレスを要求してくる。
 仕方なく了承した。
 当分、集中訓練はやらん魔石を見るのも嫌だ。
 前の時の倍はやりすぎか。
 せめて一日置きにすべきだろう。



 宝飾店で銀のネックレスを買う。
 フィオレラに渡すと。首に掛けてと色っぽく言われた。
 後ろに回り銀のネックレスを付けてあげる。
 その様子を見ていたローレッタが文句を言ってきた。
 ローレッタによると異性にネックレスをあげるのは婚約の証だと言う。
 結局ローレッタにもネックレスを買ってあげて宥めた。
 婚約じゃないからと二人に念を押しておく。



 気分転換に副業を考える。
 スキルの多さを生かすか。
 物づくりか。
 いっその事両方狙ってみるか。
 つまり、契約魔法で物づくりだ。
 契約魔法は対象の魔力で回路を作る。
 なら魔石に契約魔法を掛けてみるか。
 この世界には存在しない魔道具が作り出せるかも。
 魔石は当分見たくないが、金になるなら話は別だ。

「フィオレラ、副業が見つかったかもしれない」
「どんな副業です?」
「まずは実験だ。契約魔法のスキルは使えるようになった?」
「はい、契約魔法、契約確認ともに使えます。ローレッタ相手に練習しました。それと味覚強化と変形も覚えてます」
「よし、魔石に魔力を充填したら、魔石に契約魔法を掛けてみろ。文言は照明のスキルを許可する触れている人に魔力を渡すのを禁止する照明のスキルを使い続けろだ」
「【契約魔法】【照明のスキルを許可する触れている人に魔力を渡すのを禁止する照明のスキルを使い続けろ】」

 やった成功だ。
 魔石は光を放っている。
 魔道具の作成に成功したぞ。
 フィオレラを見たら、なんと泣いている。

「どうした、フィオレラそんなに魔道具が出来たのが嬉しかったのか?」
「違います。いいえ嬉しいです」

 どっちなんだ。
 訳、分からん。

「今神様からお言葉を頂きました。新しいスキルを授けると」

 奇想天外な事をするとスキルが増えるのか。
 分からん。

「新しいスキルってもしかして世界で今始めて生まれたスキルって事」
「そうです。回路魔法といいます」
「もしかしてもの凄く名誉な事」
「ええ、ただ今までのスキルを授かった人は名乗りでない人も多いです」
「公表すると厄介事が押し寄せてくるって事か」
「自由は無くなるでしょうね」

「公表しないとどうなるんだ」
「次世代に新しいスキルを獲得する人間が出てきて気づくというだけです」
「フィオレラはどうするの」
「私は公表しません。有名人になったりして自由が無くなるのは嫌です」

「そうかフィオレラの好きにするさ。ところで回路魔法は契約魔法とどう違うんだ」
「魔石にしか魔法を掛けれません。それと筋力強化のスキルの場合は魔石に触れている人にスキルを掛けれたりします。条件を設定する時も融通が利くようになってます。あと魔石の魔力がなくなってもしばらく魔法が維持されます。魔力の消費も少なくなっています」
「条件の設定ってもしかして分岐したりできるの」
「ええ場合分けなどできます」
「大体分かった。ようするにプログラムだ」
「プログラムってなんです?」
「説明は無理だ。上手くできない。そういう概念だと思ってくれ」

 フィオレラから話を聞いて、一緒にスイッチ機能を持たせた照明の魔道具を作る。

「これに契約確認を掛けてくれ」
「はい、【契約確認】回路魔法は契約確認では分かりません」

 これ悪用されないか。ただ回路魔法掛けると魔石の色が本来の赤から青に変わるんだよな。
 魔道具の判別は容易いから問題ないか。

「これの名前決めなきゃ。分かりやすく魔道具でいいか。回路魔法で作った道具は魔道具と呼ぶ事にした」
「魔道具ですね。分かりやすくて良いです」
「商業ギルドに行ってくる」
「高く売れると良いですね」

 ついでだから銀の水筒をそれとローレッタの研究成果の漬物も持って行く。



 いつも通りにクリフォードさんを呼び出す。

「こんにちは、今日は水筒を買い取ってもらいたいのと新商品持って来ました」
「そうですか。そろばんは相変わらず売れていて。スキルコピー屋はもう動き始めてます。水筒はボチボチというところです。新商品は嬉しいですね」
「水筒は一日四個ぐらい作れます。けど、在庫にならないですか?」
「シロクさんの持って来た水筒は一部の人に人気があります。なんでも装飾はないが掴み易いのだとか」

 そりゃそうだ。一流の工業デザイナーの考えた物は良い物だろう。

「真似して同じ形を作らせたらどうです」
「職人にもプライドがあります。形を真似るのはどうにも許せないらしいです。一日四個ぐらいなら大丈夫なので気にせず持ってきて下さい」

 蓋は権利料払っているから真似しても良いのかややこしい。
 水筒をテーブルの上に置き買い取って貰う。

「分かりました。また持ってきます」
「早く新商品の話を聞かせて下さいよ。さっきから気になって気になって」
「今回は二つあります。まずは儲からないほうから」



 瓶を三つ机の上に出す。

「ちょっと匂いがしますが、新しい漬物です。食べてみて下さい」

 クリフォードは人を呼び瓶を持って出て行き、皿に切られた漬物を持って三人引き連れて帰って来た。

「ちょっと摘まんでみたのですが、美味しいですね」
「レシピも紙に書いて持ってきてあります」

 つれて来られた三人は皿の漬物を食べ思い思いに意見を述べる。
 どうやら飲食関係を担当している職員らしい。
 ぬか漬けを麦のふすまで作ったと言ったら、驚かれた。
 ふすまは家畜の餌だと思っていたらしい。
 浅漬けは色々なレシピを作った。
 レシピは本にして印税が入る事になる。
 本は当分商業ギルド直営の飲食店にしか売らないと決まった。



「次は凄いですよ。人払いをお願いします」

 クリフォードは三人に出て行くように言い。期待にこもった目でこちらを見ている。
 おもむろにテーブルの上に光りっぱなしの赤い魔石と回路魔法で作った青い魔石を出す。

「これは驚きました。これは何です?」
「魔道具と名づけました。実はこれ簡単に作れます。契約魔法を魔石に掛ければいいのです」
「青いのはどこが違うのです?」
「特別な技術を用いて作りました。手に持って念じると光を出したり消したりできます。光量の調節もできます。契約確認にも反応しません」

 クリフォードさんは魔道具を手に取って点けたり消したりを繰り返す。

「これは権利料を取るより独占しましょう。契約魔法を使っているのが分かるまで荒稼ぎするのが良いと思います」
「材料費を抜いた製造費はいかほどもらえます?」
「売り上げの三割差し上げます。独占できなくなった時は考えさせて下さい」

「いくらぐらいで売るつもりです?」
「金貨一枚程の魔石を使って金貨五枚で売りたいと思います」
「独占するのだったら、青い方が良いですよね」
「ええ、それでお願いします。この件は契約書は書けません。持って来た魔道具は当分全てその場で買取ます」
「分かりました。青い方はサンプルとして置いていきます。色々な魔道具を作ったら、また来ます」
「大商いの予感がします。次はなるべく早く来て下さい」

 魔石と水筒の材料を仕入れ。商業ギルドを出て高い酒を買い家に帰る。



「フィオレラ、大成功だ。新スキルの事もあるし今日は酒盛りだ」
「腕をふるって料理します。宴会しましょう」

 夕食の時間になった。



「今日は良い事があったから宴会するぞ」
「へぇどった事があったはんですか?」

 ローレッタが聞いてくる。

「フィオレラどうぞ」
「じゃじゃーん、神様から新しいスキルを授かりました」
「それって有名になるって事だが」
「いいえ、三人だけの秘密にします」
「フィオレラ、もったいない」
「ハンターは楽しいからこれでいいのよ」
「まあ、フィオレラの好きにさせてやれ。ローレッタ漬物のレシピは売れたぞ。わずかだがお金も入る。全部お前にやる」

「それはうれしだ」
「ところで副業の調子はどうだ」
「今の仕事こは一日分が銀貨一枚になった。大体三日分できるはんで安しばってけっぱる」
「そうか身体を壊さないようにしろよ」



 取り留めない話をする。また話が恋愛に向きそうだ不味いごまかそう。

「よし、宴会芸をやるぞ。こうすると親指が離れる。そして近づけると元通りだ」
「種丸分かりで面白ぐねだ。今度はローレッタがやる。手足全てでつがる図形ば描ぐ」

 ブーツを脱いで椅子に座り宙に右手は丸、左手は四角、右足は三角、左足は五角形を描く。

「器用だけど、地味だなローレッタ」
「すごいですローレッタ」
「次はフィオレラか」
「ドラゴンを出します【水魔法】」

 水のドラゴンが出現した。

「いつのまに水魔法を覚えたんだ」
「秘かに練習しました」
「ぐやしい、スキル使うなんて反則よ」

 その後も宴会はなごやかに続き。
 料理が無くなったところでお開きになった。
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