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エピローグ
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しおりを挟むロックハウンドが誰かに気付いて
椅子を横に一つずれた
するとスーツを着た
アンディ・ビームスが遅れて到着した
二人は軽く拳を突き合わせて挨拶した
牧師は大きく息を吸い
静かに話し出した
「その男性は悲惨にも
5年前に船の爆破事故に遭遇し
屈指の大手術を試みたにもかかわらず
不幸にも全身の火傷と右耳の聴覚を失いました・・
ちょうどその頃私は彼と出会いました・・・ 」
マイケル牧師は視線を一列目のジェニ達に向けた
ジェニもニッコリ牧師に微笑んだ
「それまでの彼の人生は長いこと
ひとつの分野に捧げられていました
それは
「親友が残した事業拡大に人生を費やすこと・・・」
彼は信じられないぐらい気真面目な男でした
めったに微笑むことも・・・
笑うこともせず
人々からは「堅物」や「鬼の首切り屋」と呼ばれ
ただただ事業の利益を求め
それを正義とし生きてきました・・・・ 」
シ・・・・ン・・・
とした教会のホールに牧師の声だけが響く
背筋がすっと伸びていて切り詰めた矢のようだ
「ハクチュンッ」と
ジョージがくしゃみをした
アイラがじっと兄を見つめ
すかさずセドリックがマザーズバッグから
ガーゼハンカチを取り出して
ジョージの垂れた鼻水を拭いた
「しかし事故後・・・・
なんと神は聴覚を失った彼に
音楽の才能を授けてくださったのです
ご自身のリハビリで始めたチェロ演奏がこれほど多くの
皆さんに支持されるなんて彼は思っても
見なかったと言っています
彼は事業を引退し・・・
ここシカゴで小さな不動産業を営みながら
美しい妻とお子さんに恵まれました
そして彼をとり囲む親友たちにも恵まれました」
フンッ・・・
「親友とは俺たちのことだな!」
ロックハウンドが腕をくんで反り返った
「俺だな!」
アンディ・ビームスも鼻を鳴らした
牧師が慈しみの目でウンウンと観衆を眺める
グリーンの目はこの福音を伝える喜びで
キラキラしている
「では彼は特別な人間だったのでしょうか?
映画やドラマに出てくる完璧な人間?
恋愛小説になどに登場する
誰もが憧れるヒーロー?」
一瞬の沈黙がひろがり
またジョージがしゃっくりをした
それをアイラが凝視する
セドリックが優しくジョージの背中をトントンする
「彼は言うでしょう
「僕は奇跡の人ではありません
皆さんと同じ平凡な人間です
ただ物事は何が起こってどう転ぶかは
神のみぞ知るということを心から実感した
ひとりに過ぎないと・・・」
教会のあちらこちらで共感のため息が聞こえた
ヒソヒソ・・・
『そこのカバンから充電器を取って!』
『これか?』
『思ったより話が長いわ、充電しないと・・・』
『まだ演奏も始まってないぞ』
マミーとロックハウンドがゴソゴソやっている
牧師の説法がこんなに長いとは予想していなかったのだろう
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