上 下
695 / 700
エピローグ

しおりを挟む

【4年後 聖パトリック大聖堂】




ジェニは完璧な仕立ての
タキシードを着た竜馬を見つめて

ほぅ・・・とため息をついた




肩幅が広い竜馬のサイズに合う
既製の商品などないとわかっているので
この日のためにジェニは
三着もタキシードを作らせた




サイズをきちんと測り
背丈と広い肩にもしっくり合わせている



最近伸ばしている真っ黒の艶髪を
ワックスで横は耳にかけ
前髪がセクシーに垂れるようにジェニが
渾身のテクニックでセットしたものだ




それが今は天使のように美しい彼が
緊張でカタカタ震えている





「大丈夫よ!竜馬さん!リラックスして 」

「無理だよ!」




ジェニはあたりを見回して
彼を勇気づけるように愛想笑いを振りました



妊娠7か月の割には小さく横に広がっている
ジェニのおなかが目立たないように
ジェニもオーガンジーのウエストの
切り返しがないブラックドレスにボレロを纏っている 

髪もすっきりとお団子にし
ビーズのシュシュをつけている



このお腹の広がり具合は覚えがある
三人目はきっと女の子だ




「思ったより観客が多い!
観客席と近いじゃないか」




そう言った竜馬は冷や汗を流し
一点見つめをしている




ダメだわ・・・・
緊張がピークに来ているみたい 




ジェニがぐるりと目玉を回した時
どやどやと竜馬のいる
聖パトリック教会の楽屋のドアがバンと開いた音がした



数人の靴が床を歩く音
そして犬の爪が硬い木の床にカチカチ当たる音が響く




「お~い!竜馬!
なんでそんな隅っこに隠れているんだ?」



タトゥー彫師のロックハウンドが面白そうに言った



彼はタトゥーショップをシカゴ市内に何件も
運営する経営者になっていた
竜馬がシカゴに帰って来た噂を聞いて
真っ先に会いに来てくれた人だった


彼は自分のご自慢の全身タトゥーを
見せびらかしたいので
冬でもタンクトップにカウボーイハットだ




「緊張してるのよ 」




ジェニは肩をすくめて言った




ロックハウンドの横にセドリックとマミーもいる
セドリックもフォーマルに装っていて
真っ白なシャツにマミーがあつらえた
ブラックの蝶ネクタイをしている


セドリックの両腕には竜馬とジェニの子供が抱っこされ
肩にはセドリックお手製の
マザーズバッグをかけている




彼の右腕にはジョージ(丈次 三歳)
左腕にはアイラ(愛良 二歳)



二人とも竜馬の豊かな黒髪に
ジェニの茶色の目を受け継いでいる




この二人にとって
この世で一番恐ろしい存在はママで
何をしても怒らないパパと
セドリックは大好きな存在だ



二人はセドリックの首に蔓のように腕をまきつけ
緊張して楽屋を檻の中のクマのように
うろうろしている
自分の父親を面白そうにじっと見つめていた





その横でハナが尻尾を振りながら
ドレッサーに無造作に置かれている
匂いのきついヘアセット用品を
フンフンかたっぱしから嗅いでいる





バンッと竜馬がテーブルを叩いた





「・・・っやっぱり・・・
僕には無理だよ!!
おこがましいよっっ!! 」




「そんなことないわよ
あれほど練習したじゃない! 」




セドリックマミーはスマホに自撮り棒を差して
竜馬を撮りながら元気づけた




マミーも今夜はおしゃれして
竜馬の大学の卒業式と同じ
ライムグリーンのスーツで
同じ色の帽子にはモーニングベールが
マミーの顔を半分隠している




「んだ!竜馬のチェロ!素晴らしい」




セドリックも微笑んで言った



「そうよ!あなた!
あと5分であなたのチェロコンサートが
始まるわよ!補聴器の調子は?大丈夫?」




ジェニが夫に呼びかけた



「補聴器の調子は・・・バッチリだよ
でも・・・緊張して・・・」




竜馬がブルブル震える手を見つめてそう言うと
ずっと自分をスマホで撮っている
マミーに神経質に叫んだ





「こんな所を撮ってもしかたがないよ
それにずっと僕を撮るのやめてよマミー!」



「あら!録画じゃないわよ 」






ジェニもマミーの横で言った





「ライブ配信よ!」






「はぁ?どこに配信してるっていうんだ?」








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】

衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。 でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。 実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。 マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。 セックスシーンには※、 ハレンチなシーンには☆をつけています。

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

【R18・完結】蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない〜

花室 芽苳
恋愛
契約結婚しませんか?貴方は確かにそう言ったのに。気付けば貴方の冷たい瞳に炎が宿ってー?ねえ、これは大人の恋なんですか? どこにいても誰といても冷静沈着。 二階堂 柚瑠木《にかいどう ゆるぎ》は二階堂財閥の御曹司 そんな彼が契約結婚の相手として選んだのは 十条コーポレーションのお嬢様 十条 月菜《じゅうじょう つきな》 真面目で努力家の月菜は、そんな柚瑠木の申し出を受ける。 「契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻として頑張ります!」 「余計な事はしなくていい、貴女はお飾りの妻に過ぎないんですから」 しかし、挫けず頑張る月菜の姿に柚瑠木は徐々に心を動かされて――――? 冷徹御曹司 二階堂 柚瑠木 185㎝ 33歳 努力家妻  十条 月菜   150㎝ 24歳

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

恋煩いの幸せレシピ ~社長と秘密の恋始めます~

神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
会社に内緒でダブルワークをしている芽生は、アルバイト先の居酒屋で自身が勤める会社の社長に遭遇。 一般社員の顔なんて覚えていないはずと思っていたのが間違いで、気が付けば、クビの代わりに週末に家政婦の仕事をすることに!? 美味しいご飯と家族と仕事と夢。 能天気色気無し女子が、横暴な俺様社長と繰り広げる、お料理恋愛ラブコメ。 ※注意※ 2020年執筆作品 ◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。 ◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。 ◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。 ◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。 ◆カクヨムさん/エブリスタさん/なろうさんでも掲載してます。

処理中です...