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エピローグ
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しおりを挟む【4年後 聖パトリック大聖堂】
ジェニは完璧な仕立ての
タキシードを着た竜馬を見つめて
ほぅ・・・とため息をついた
肩幅が広い竜馬のサイズに合う
既製の商品などないとわかっているので
この日のためにジェニは
三着もタキシードを作らせた
サイズをきちんと測り
背丈と広い肩にもしっくり合わせている
最近伸ばしている真っ黒の艶髪を
ワックスで横は耳にかけ
前髪がセクシーに垂れるようにジェニが
渾身のテクニックでセットしたものだ
それが今は天使のように美しい彼が
緊張でカタカタ震えている
「大丈夫よ!竜馬さん!リラックスして 」
「無理だよ!」
ジェニはあたりを見回して
彼を勇気づけるように愛想笑いを振りました
妊娠7か月の割には小さく横に広がっている
ジェニのおなかが目立たないように
ジェニもオーガンジーのウエストの
切り返しがないブラックドレスにボレロを纏っている
髪もすっきりとお団子にし
ビーズのシュシュをつけている
このお腹の広がり具合は覚えがある
三人目はきっと女の子だ
「思ったより観客が多い!
観客席と近いじゃないか」
そう言った竜馬は冷や汗を流し
一点見つめをしている
ダメだわ・・・・
緊張がピークに来ているみたい
ジェニがぐるりと目玉を回した時
どやどやと竜馬のいる
聖パトリック教会の楽屋のドアがバンと開いた音がした
数人の靴が床を歩く音
そして犬の爪が硬い木の床にカチカチ当たる音が響く
「お~い!竜馬!
なんでそんな隅っこに隠れているんだ?」
タトゥー彫師のロックハウンドが面白そうに言った
彼はタトゥーショップをシカゴ市内に何件も
運営する経営者になっていた
竜馬がシカゴに帰って来た噂を聞いて
真っ先に会いに来てくれた人だった
彼は自分のご自慢の全身タトゥーを
見せびらかしたいので
冬でもタンクトップにカウボーイハットだ
「緊張してるのよ 」
ジェニは肩をすくめて言った
ロックハウンドの横にセドリックとマミーもいる
セドリックもフォーマルに装っていて
真っ白なシャツにマミーがあつらえた
ブラックの蝶ネクタイをしている
セドリックの両腕には竜馬とジェニの子供が抱っこされ
肩にはセドリックお手製の
マザーズバッグをかけている
彼の右腕にはジョージ(丈次 三歳)
左腕にはアイラ(愛良 二歳)
二人とも竜馬の豊かな黒髪に
ジェニの茶色の目を受け継いでいる
この二人にとって
この世で一番恐ろしい存在はママで
何をしても怒らないパパと
セドリックは大好きな存在だ
二人はセドリックの首に蔓のように腕をまきつけ
緊張して楽屋を檻の中のクマのように
うろうろしている
自分の父親を面白そうにじっと見つめていた
その横でハナが尻尾を振りながら
ドレッサーに無造作に置かれている
匂いのきついヘアセット用品を
フンフンかたっぱしから嗅いでいる
バンッと竜馬がテーブルを叩いた
「・・・っやっぱり・・・
僕には無理だよ!!
おこがましいよっっ!! 」
「そんなことないわよ
あれほど練習したじゃない! 」
セドリックマミーはスマホに自撮り棒を差して
竜馬を撮りながら元気づけた
マミーも今夜はおしゃれして
竜馬の大学の卒業式と同じ
ライムグリーンのスーツで
同じ色の帽子にはモーニングベールが
マミーの顔を半分隠している
「んだ!竜馬のチェロ!素晴らしい」
セドリックも微笑んで言った
「そうよ!あなた!
あと5分であなたのチェロコンサートが
始まるわよ!補聴器の調子は?大丈夫?」
ジェニが夫に呼びかけた
「補聴器の調子は・・・バッチリだよ
でも・・・緊張して・・・」
竜馬がブルブル震える手を見つめてそう言うと
ずっと自分をスマホで撮っている
マミーに神経質に叫んだ
「こんな所を撮ってもしかたがないよ
それにずっと僕を撮るのやめてよマミー!」
「あら!録画じゃないわよ 」
ジェニもマミーの横で言った
「ライブ配信よ!」
「はぁ?どこに配信してるっていうんだ?」
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