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chapter18 竜馬の帰還
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しおりを挟む誰もいないやわらかな丸みをもつ丘の頂で
ジャスティンの墓石と向き合った
その時空からサァーっと明るい日差しが輝き出し
竜馬の背中を明るく照らした
「やぁ・・・ジャスティン・・・」
彼は足元の墓石に微笑みかけた
気持ちの良い風が吹いてきて
竜馬の髪をもてあそぶ
ゆっくり竜馬はしゃがんだ
竜馬の手が石に触れ・・・・
まるで肌を撫でるように
やさしくその文字を撫でた
文字の溝はすっかり浅くなっていたが
まだまだちゃんと読めた
「黄金の天使―ジャスティン・アレン―ここに眠る」
竜馬が声に出して読みあげる
墓地は静まり返り
聞こえるのは風がアイリスの花を揺らし
葉がこすれあう音だけだ
「元気だった?
僕は・・・・いろいろあったけど・・・元気だよ」
肩に落ちる光と影がゆっくり変化する
ここはすべてが非現実で
そんなわけがないと自分に言い聞かせても
そうに違いないと分かっていた
彼の気配を感じる
風が体を撫でる
美しい金髪の心の機微がわかる
親切で誠実な男性
その男性にそっと竜馬は話かける
「僕は・・・・
男が望むものをすべて手に入れたよ・・・・」
ここまで来るのに頭の中で何を話そうか
あれほど考えたのに・・・・
まるで何も出てこない
なので頭では考えずに
心の赴くままに口を開いた
「住む場所・・・やりがいのある仕事・・・
傍らには妻がいてくれる
そして・・・
たぶんもうすぐ子供にも恵まれるだろう 」
手を伸ばしもう一度優しく墓石を撫でる
「そして愛すべき友・・・・・ 」
何よりこれほど強く願っていたとは
自分でも意外だったが
ジャスティンのことを一緒に思い出せる人が欲しかった
彼の事を話せる人が欲しかった
神は自分にジェニを与えた
「ジャスティン・・・・僕・・・
幸せだよ・・・・
幸せなんだ・・・・
毎朝目が覚めて・・・・
この世に感謝するほど・・・ 」
竜馬の閉じた瞼からとめどなく涙があふれ
太陽の光を受けて宝石のように輝いた
遠くで自分を呼んでる声がした
気が付くと小一時間ほど
ここに佇んでいたのがわかった
グス・・・・
「そ・・・・それだけ言いたかったんだ
当分はこっちにいるから・・・
また来るね 」
竜馬はそう微笑んで
ジェニ達の所へ戻るために
ゆっくりと丘を降りて行った
太陽の日は竜馬が見えなくなっても
墓石を照らし続けた
風がさっと吹き
墓の回りのアイリスをそっと揺らした
:*゚..:。:. .:*゚:.。
良かったな
:*゚..:。:. .:*゚:.。
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