677 / 700
chapter18 竜馬の帰還
6
しおりを挟む【メビウスビル社長室】
「そうか!目覚めたか!」
文也からの吉報の電話に
宗一郎が立ち上がった
その後ろで事務仕事をしていた
真希も涙を溜めてティッシュの箱を
宗一郎に手渡した
「ありがとう」
1分ほどして宗一郎もぶっきらぼうに言い
ティッシュを目に当て
そのまま真希にスマホを渡し窓の隅に歩いていった
今は一人にした方が良いと
思った真希は宗一郎の代わりに文也の電話に出た
「もしもし?文也君?
ジェニさんは?・・・どうしてる?
うん・・・うん・・・ 」
真希が電話を切った後少し落ち着いた
宗一郎がやってきて照れくさそうに聞いた
「・・・元気なのか? 」
部屋をウロウロしながら言う
どうやら嬉しくて落ち着いていられないみたいだ
真希はうなずいた
「とても回復してるみたいですよ
今夜は軽い流動食を食べたんですって!
まだこれから沢山検査して・・・場合によっては
肺の蘇生手術をしないといけないらしいけど・・・・ 」
真希がノートパソコンのスケジュールを
確認している
「回復していくんだな 」
希望に満ちた声で宗一郎は言った
雨雲からようやく日差しが
自分に射したような顔をしている
「私達は明日行けばいいわ
今は二人っきりにしてあげましょう 」
すると真紀の携帯がけたたましく鳴った
「もしもし?藤子さん?
今出先なの?ええ・・そうですよ!!
竜馬さんが意識を吹き返しました!! 」
そう言って真希が
藤子と嬉しい報告話に盛り上がっている
とにかくよかったと宗一郎も安堵して
コーヒースタンドから
コーヒーをカップについだ
そこで気が付いた
カップを持つ手が震えている
真希も会話の途中
思わず声が詰まる時が何度かあったが
今は嬉しそうにケラケラ笑いながら話している
クスクス・・・
「ええ・・・そうみたい
文也君いわくジェニさんが大騒ぎして
守護神のように竜馬さんに張り付ているみたいなんですって」
フッ・・・
「想像できるな・・・・ 」
真希の藤子との会話のこぼれ話を
聞きながら
宗一郎は微笑み熱いコーヒーを啜った
:*゚..:。:.
.:*゚:.。
「検査お疲れ様! 」
ストレッチャーから看護婦さんの手を借りて
ゴロンと寝返りを打って
竜馬がベッドに移動する様子を
ジェニはハラハラと見守った
長い時間がかかった検査で
竜馬の体力がひどく消耗されているのがわかる
今はひどく疲れてい仰向けに寝転がって
ハァハァ言っている
引き締まった体を手術着に包み
手足と右の頬は火傷の保護シートをべたべた張り付けられている
そんな竜馬を見てジェニは心配でたまらない
「汗をかいているでしょ?お着変えする?
病院用の術着なんてもう見たくもないでしょう?」
ジェニはいそいそとシルクのパジャマと
真新しいボクサーブリーフを紙袋から取り出した
竜馬が起きたら着せてあげようと
沢山用意しておいたものだ
彼が目覚めるのを待つにはあまりにも
長い沢山の準備時間があった
ジェニは竜馬の掛け布団をめくり
体に手を伸ばして合わせ目の紐をほどこうとした
そこで竜馬の異変に気付き手を止めた
ジェニを見つめ・・・・
頬が赤くなってる
「ちょっと・・・部屋を出ててくれる?
自分でやるよ・・・・ 」
竜馬がもじもじして言う
「まぁ・・・構わないわよ
一人ではまだ難しいでしょう? 」
ジェニも頬が火照るのを感じた
「私達夫婦ですもの・・・ 」
そう言って婚約指輪が見えるようにした
なんだか息苦しくて下を向いた
「少なくとも私はそう思っている・・・」
不安な気持ちがよぎる
彼は違うのだろうか・・・・
ジェニの薬指には婚約指輪が光っている
なぜか二人は恥じらいと親しみを感じて
戸惑っていた
竜馬はそっとジェニの手を取り
小さなダイヤが散りばめられている
ルビーの婚約指輪を親指と人差し指で軽く摘まんだ
「外したことないの 」
思わすジェニが囁いた
返してくれと言われても
返す気などさらさらなかった
この指輪はもうジェニの一部だ
なくなったら変な違和感に襲われるだろう
彼は長い間じっとジェニを見つめていた
そして花が咲きほころぶ様な笑顔を見せて言った
「着替えを手伝ってくれるかな?・・奥さん? 」
ジェニは切なくて心臓が痛かった
ああ・・・また涙が出そう
彼の傍で彼のお世話が出来る事が
嬉しくてたまらない
ジェニはいそいそと竜馬の術着の前をはだけた
そして息を飲んだ
なんてひどい・・・・
術着の下は全裸だった
彼の美しい体がどこもかしこも
火傷の水ぶくれ後だらけで変色している
改めて事故の恐ろしさに身が震える
よく無事でいてくれた
体のあちこちに火傷の保護シートが貼られ
まるでつぎはぎされている
フランケンシュタインだ
あまりの酷さにジェニが言葉を失っていると
竜馬が勇気づけるように言った
「大丈夫・・・
君の好きな部分はたぶん無事だと思うから」
竜馬の指がさらさらしたジェニの髪に絡めた
彼は冗談を言ってジェニを安心させたいのだ・・・
「ちゃんと機能するかどうかは
治ってから厳選な審査をさせていただきますからね」
ジェニも方眉を上げて冗談を言ったが
声は震え涙が溢れて来た
本当に彼が意識を取り戻してくれてよかった
生きているだけで奇跡の人
:*゚..:。:. .:*゚:.。
ジェニは
彼を生かしめるすべてのものに感謝した
6
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる