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chapter17 この世とあの世の境界線

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ジェニは素晴らしい女性に成長したということは
もう竜馬も認めざるを得なかった

長いこと求め続けていた宝物入りの
小箱を渡された気分だった



離れている時の二人の間に流れた年月に
彼女が何をし何を思い
どんな人間だったのか
日を追うごとに明かされていった
そして知れば知るほど好きになった



竜馬は本当に彼女の元へ帰ってきて
よかったと感じていたまるで映画の一コマのようだ



そしてまた
二人の間で止まっていた時も
竜馬の彼女への熱い思いも流れ出した




彼女は憎まれ口を自分に叩くけど
その輝く瞳は自分に興味津々だ
もう嫌われていないのが肌でわかる




機会がなくてまだ彼女に送っていない言葉が
あまりにも沢山あるし彼女の口から
直接聞きたい言葉がありすぎる



彼女は本当に自分のことをきれいさっぱり
忘れてしまっているのだろうか



それとも覚えているけど
あの時一緒に過ごした「大きいお兄ちゃん」が
僕だとはわかっていないだけなのか・・・




一郎さんは彼女にいったい
僕の事をなんて話したのだろう?



そして豊は?
最後に別れを告げた時には豊は「行くな」と
泣いたはずだ




それに最近ではだんだん竜馬も
彼女に好意を持っていることに遠慮は
無くなってきていた



それは周囲にもわかるほどに・・・
もうバレバレだ
それでもちっともかまわない



竜馬の中に彼女に対する気持ちを隠すことなど
これっぽっちもなかった

最近では言い争いの中にでも彼女が動揺するほどの
誘い文句を入れたりもしている




彼女は焦ったり動揺すると頬が真っ赤になる


意外にもうぶな彼女は
竜馬が迫ると髪の毛が逆立ちしそうになる
それが竜馬を大いに楽しませる
 


彼女をからかうことは新たな竜馬の趣味になっていた







―そしてスタバ事件―





彼女がカフェラテを持って振り向くと
竜馬のスーツにバッシャーンとぶちまけた





「あ~あ・・・・ 」





竜馬の言葉に辺り一面がシン・・・・となった
腹がアイスカフェオレでとても冷たい


一緒にコーヒーブレイクでもどうですか?と
誘った課長達が一斉に青ざめ

わざとではないだろうに
ジェニを全員がすごい目で睨んだ




そして一番ジェニが真っ青になっていた
竜馬はすばやくジェニを確認した
よかった彼女は汚れていないな



あたりは壮絶としていた
みんなジェニがこの会社のCEOの自分に
無礼を働いたと誰もかれもが
彼女を責める目で見ている




彼女は悪くないのに・・・・


ほら・・泣きそうになっているじゃないか


ここは自分が退散したほうがよさそうだと
竜馬は思った





クールに決めようと思ったのに
彼女が慌てて追いかけてくる



責任を感じているんだな
必死で自分に言い訳をして
ついてくる彼女がなんだかおかしくなってきた


エレベーターの前でクルリと向きを変え
彼女と向き合った





「・・・・本当に悪いと思っているのか?」


「ええ!もちろんです!
ですからクリーニング代をお支払いすると・・・」





竜馬はすぐ近くでジェニをじっと見つめた



もう彼女は竜馬が覚えているような
可憐な「女の子」ではなくなっていた

大人になり
たおやかに花咲いたジェニ
こんな薄いブラウスじゃ胸の形や揺れが
ハッキリわかるじゃないかけしからん


こういう体つきになっていたとは
ウエストから尻にかけた腰のくびれは
たまらない


20年前にも彼女は素敵だと思っていたが
どうやらその後神は本気を出したようだ



ずいぶん僕だって我慢している
努力して彼女を襲わないように
衝動を抑えているのに
だけど男の自制心には限界ってものがある





「金はいらない」





くるりとジェニの肩を回して壁に押さえつけた



「え?」



ジェニが怯えた様子で竜馬を見る
この大きな茶色の瞳に小生意気な
表情が浮かぶのを見る度

竜馬は原始人のようにジェニを担いで
持って帰りたくなる




ドンッと竜馬に壁に手をついて覆いかぶされて
ジェニは途端に形勢逆転になった自分に焦った



肩が広くてすべての視界がこの人で遮られる
まるで世界に二人っきりのよう






「その下唇を噛む癖をやめてくれないか」




竜馬がジェニをのぞき込んで囁いた




「ど・・・どうして? 」



「下半身にくる」





竜馬の目に鋭い光が宿り
口角がかすかに上を向いた

ジェニの無垢な質問を楽しんでいる



竜馬が両手でジェニの二の腕を掴んだ
手が触れている所が焼け付くように熱くなっている

竜馬はハーブの爽やかな香りがした
それとカフェラテの香り―





―またキスされる―






咄嗟にそう思ったジェニが肩をすくめて
ギュッと目をつぶった
心臓が飛び出しそうなほどバクバク言っている





「・・・・・・  」






チンッとエレベーターが二人を邪魔するように
音を立てて開いた


目を開けると閉まりかけのエレベーターに
竜馬が乗っていてジェニに中指を立てて
舌を出していた


エレベーターは竜馬を乗せたまま閉まり
ジェニをその場に置き去りにした






「なっ・・・・なによっ・・・・ 」





途端に真っ赤になったジェニは
閉じられたエレベーターに向かって
地団駄を踏んだ






「なによーーーーーーーっ(怒)」











:*゚..:。:.  





「あははははっ! あの顔ったら! 」



竜馬はカフェオレのついたシャツを脱いで
腹を抱えて笑った


竜馬が楽しそうなので
ハナが嬉しがってピョンピョン跳ねながら
竜馬の周りをワンワン吠えて騒いでいる



ソファーに飛び乗って裸の竜馬に鼻を
擦りつけたかと思うとまた飛び降りて
転がっているぬいぐるみを咥えて
ブンブン振り回している

パパが楽しいのなら自分も楽しいと言っているのだ



それでもキスされそこなった
間の抜けたジェニの顔を思い出して
竜馬はまたゲラゲラ笑った



ジェニは本当に面白い大好きだ

彼女への思いは
もうどうにもならない
魂が激しく求めているのだから仕方がない




竜馬はとうとうある事に
決着をつける時だと考えた




いつまでも先延ばしにはできない
彼女との関係を1歩進めるためには
やらなきゃいけないことだ








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