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chapter17 この世とあの世の境界線
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しおりを挟む最近になって気が付いたことがあった
竜馬の笑いのツボはどうやら
ジェニだということだ
そして彼女の笑顔がとても好きな事にも気が付いた
なぜなら彼女が笑うと
太陽のように人に伝染していく
21階の元神崎広告代理店のオフィスでは
彼女はいつでもよく笑っている
悔しいが竜馬以外の人間には
彼女はとても愛想が良い
あの文也でさえ彼女とは
とても仲良さそうにしている
ここでの環境は彼女のリーダーシップを
すこぶる発揮されそして社員全員がジェニを
信頼し支えようとしているのが
良く伝わってくる
当然だろうこの会社を引っ張っているのは
彼女なのだから
竜馬は驚きながらもすでに
それをもうハッキリ認めていた
:*゚..:。:.
「私に言えることはジェニさんは
神崎広告代理店の社員を心から愛していて
家族そのものだと思っているということです
その思いが強すぎて時々暴走するんですけどね」
「なぜ僕にそんなことを?」
真希の向かいのデスクに座りなぜかお茶を
ごちそうになっている竜馬が聞いた
しかたがなかったのだ
神崎の財務報告書の3ページ目の裏に小さく
キティちゃんの落書きを見つけたので
きっとジェニだろうと
ひとこと文句を言ってやろうと21階に降りてきたら
ジェニどころかオフィスには誰もいなく
目の前にいる宗一郎の嫁さんだけが一人
黙々と作業をしていた
そしてジェニがいないので帰ろうとしたら
嫁さんに呼び止められ
お茶に誘われたのだ
宗一郎の嫁だけに無下に無視するわけにも
いかず竜馬は黙って
お茶を呼ばれることにした
「さぁ・・・直感かもしれませんし
神様が話せとおっしゃっているのかもしれません
いずれにしても社長には知っておいて頂きたいと
思った私の独り言ですから・・・・
お気になさらないでください」
忙しく動画を編集している彼女が
マウスを動かしながら言う
宗一郎いわく彼女は天才WEBデザイナーで
神崎広告代理店の心臓部分だそうだ
「ずいぶん苦労して
君たちはここまで来たんだね・・」
真希が優しい顔で微笑んだ
「ええ・・とても・・・
でも悪の元凶を社長が取り除いてくださったので
今はとても感謝しています
私達ではあの役員達を
どうすることもできませんでした」
竜馬は出されたモンブランケーキをフォークに
ひとかけら取って口に入れた
・・・うまい・・・
ここに来ると何かしらお菓子がある
そしてどれも凄く旨くて竜馬の
知らないお菓子ばかりだった
「ジェニ・・・コホンッ
彼女は・・・
頭が良いのにどうして大学に行かなかったんだろう」
竜馬は少し後ろめたい気持ちで真希に尋ねた
自分は一郎さんに留学資金を世話してもらったし
長男の豊も大卒だ
なのでてっきり彼女もそうだと思っていたからだ
真希からはすぐには返事は帰ってこなかった
真希の顔を見ると
彼女はぎこちなく微笑んだ
「・・・子供の頃から・・・
よく会社に遊びに行っていたと・・・聞いています
ジェニさんにとって会社は家みたいなものだったと 」
竜馬は真希を見て唇を噛く結んだが
黙ってうなずいた
「誰もいない家に帰るより
ずっと面白かったと言ってました
お父様の社長もいましたし
当時の事務員さんの仕事を手伝って
郵便物を仕分ける所から始まって・・・
ジェニさんにとって仕事も遊びのうちだったそうです
神崎の社員はとてもジェニさんに
優しくてくれたそうですし
空いた机を見つけて会計士が
数学の宿題を手伝ってくれたり
パートさんがジェニさんの分まで
お弁当を作ってくれたり
でも・・
会社は当時高校生のジェニさんにもハッキリ
わかるぐらい経営が悪化していったそうです 」
若いのに小さな女の子の母親のWEBデザイナーの彼女は
まるで自分の体の一部みたいにマウスを動かす
その横に宗一郎が子供を抱いている
写真を飾られてあった
やはり家族の写真を飾るのは仕事効率向上に
良いのかなと竜馬は思った
「・・ジェニさんはこうも言ってました
自分なら絶対に役に立てるという自信もあったと
・・・だから大学には行かず
恩返しのつもりで入社されました
社長が生きていた頃はまだよかったんですが
亡くなってからは役員達が暴走し出したんです」
「一人で会社を引っ張っていこうと思ったら
大変だっただろうね・・・
会社に寝泊まりしなければいけないほど・・・」
母親を早くに亡くした少女が
父親の会社に居場所を見つけ
社員を家族代わりにして生きて来たのか・・・
たしかに竜馬もアメリカに行って孤独を感じたが
自分にはジャスティンがいた
それに宗一郎やセドリック・・・・
ジェニは本当に一人だったんだ・・・
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