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chapter16 何度も君に恋をする
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アリスは祖父の政宗と高身長の男性が
窓際で何やら話し込んこんでいるのを
じっと見つめていた
その傍らでチャリティの招待客達が
祖父に声をかけて欲しがって二人を
チラチラ見ている
しかし祖父は目の前の若者に話をするのに
夢中で他の招待客達に目もくれない
そして二人は奥の部屋に消えて行った
しばらくは戻ってこないだろう
必然的に自分と母親たちが招待客の
相手をしなければいけない
この距離からでは祖父と話していた
相手の顔がよく見えない
もっともあと数十分もすれば
嫌でも顔を拝めるのだけど
できれば見合い写真のようにしかめっ面だけは
避けたいものだ
そこに招待客の一人でアリスの苦手な人物が
アリスを呼び止めた
その男性は祖父の知人だ
関西でも政治家にまつわる家系の出で
とても野心がありうちの家の後ろ盾を是が非でも
得たいことを微塵も隠さないあつかましい人物だ
当然ながら祖父の催すイベントがチャリティでも
美術鑑賞会や音楽会であっても
必ず出席するのが当たり前だと思っている
アリスは馴れ馴れしい彼を目の前にして
苛立ちを覚えたとしても
目を少し細めただけにして
本日の彼の鞄をさりげなく褒めた
「・・・アリスさんはお目が高い!
そうなんですよこの鞄は― 」
たとえどのような災いの種に気付いても
優雅にホスト役を務められるよう
女学院時代から学んできた
実際にアリス本人自身が
マナー講師の資格を取得しているだけに
アリスは優雅に招待客達に接する
「イタリアの現地に職人がいましてね
犬のように働いても年間十個しか作れない
なめしたての革なんです、最高級の!
ぜひおひとつプレゼントしましょう!」
アリスは上品に微笑んだ
欲しいとも要らないとも言わなかった
今夜のアリスは見事なクリーム色の
格式の高い吉祥文様の手の込んだ振袖に
芳醇なワインレッドの帯を纏っている
着物には「格」があり
今アリスが身にまとっている振袖は最高品格のものだ
さらに裕福層を象徴する伊藤家の家宝推定1億円の
ダイヤモンドの帯留めからは
アリスが静かに動くたびに天井の証明を反射して
星のようにキラキラと波立っている
招待客はアリスの顔より先にダイヤモンドの
帯留めに目が止まる
実際この嫌な祖父の知人も露骨に目線を
帯留めにやっている
当然だろうこの帯留め同様自分も
宝石商(ITOMOTO)の商品なのだ
もしかしなくても自分自身の価値は
この帯留めの足元にも及ばない
数時間かけてヘアスプレーで
ガチガチに固められたアップスタイルの
髪は頭を動かすたびにピンが頭皮に刺さって痛む
このままあと何時間もこの恰好で過ごすのが
早くも辛くなっている
大会場の大広間をふた続きにした客間は人で溢れ
このチャリティイベントは大盛況だった
アリスは祖父の有力な宝石商仲間に会うたび
帯留めの賞賛を笑顔で受け
大使や顔見知りの知人程度の人々に至るまで
挨拶を交わした
生理は終わりかけだとはいえ
頻繁にトイレに行きたくなる
ああ…ナプキンを変えたい
なのに誰もかれもがアリスに挨拶をしたがった
そして今回自分がここに呼ばれた
元凶のお見合い相手とお祖父様が
この広場に戻ってくる前に
何としてでもトイレに行っておきたかった
それなのにふと窓を見ると
正面玄関前のピロティ―に
ロールスロイスのシルバーシャドーと
黒のリンカーンが横付けされた
また新たな客が来た
アリスはため息をついた
窓際で何やら話し込んこんでいるのを
じっと見つめていた
その傍らでチャリティの招待客達が
祖父に声をかけて欲しがって二人を
チラチラ見ている
しかし祖父は目の前の若者に話をするのに
夢中で他の招待客達に目もくれない
そして二人は奥の部屋に消えて行った
しばらくは戻ってこないだろう
必然的に自分と母親たちが招待客の
相手をしなければいけない
この距離からでは祖父と話していた
相手の顔がよく見えない
もっともあと数十分もすれば
嫌でも顔を拝めるのだけど
できれば見合い写真のようにしかめっ面だけは
避けたいものだ
そこに招待客の一人でアリスの苦手な人物が
アリスを呼び止めた
その男性は祖父の知人だ
関西でも政治家にまつわる家系の出で
とても野心がありうちの家の後ろ盾を是が非でも
得たいことを微塵も隠さないあつかましい人物だ
当然ながら祖父の催すイベントがチャリティでも
美術鑑賞会や音楽会であっても
必ず出席するのが当たり前だと思っている
アリスは馴れ馴れしい彼を目の前にして
苛立ちを覚えたとしても
目を少し細めただけにして
本日の彼の鞄をさりげなく褒めた
「・・・アリスさんはお目が高い!
そうなんですよこの鞄は― 」
たとえどのような災いの種に気付いても
優雅にホスト役を務められるよう
女学院時代から学んできた
実際にアリス本人自身が
マナー講師の資格を取得しているだけに
アリスは優雅に招待客達に接する
「イタリアの現地に職人がいましてね
犬のように働いても年間十個しか作れない
なめしたての革なんです、最高級の!
ぜひおひとつプレゼントしましょう!」
アリスは上品に微笑んだ
欲しいとも要らないとも言わなかった
今夜のアリスは見事なクリーム色の
格式の高い吉祥文様の手の込んだ振袖に
芳醇なワインレッドの帯を纏っている
着物には「格」があり
今アリスが身にまとっている振袖は最高品格のものだ
さらに裕福層を象徴する伊藤家の家宝推定1億円の
ダイヤモンドの帯留めからは
アリスが静かに動くたびに天井の証明を反射して
星のようにキラキラと波立っている
招待客はアリスの顔より先にダイヤモンドの
帯留めに目が止まる
実際この嫌な祖父の知人も露骨に目線を
帯留めにやっている
当然だろうこの帯留め同様自分も
宝石商(ITOMOTO)の商品なのだ
もしかしなくても自分自身の価値は
この帯留めの足元にも及ばない
数時間かけてヘアスプレーで
ガチガチに固められたアップスタイルの
髪は頭を動かすたびにピンが頭皮に刺さって痛む
このままあと何時間もこの恰好で過ごすのが
早くも辛くなっている
大会場の大広間をふた続きにした客間は人で溢れ
このチャリティイベントは大盛況だった
アリスは祖父の有力な宝石商仲間に会うたび
帯留めの賞賛を笑顔で受け
大使や顔見知りの知人程度の人々に至るまで
挨拶を交わした
生理は終わりかけだとはいえ
頻繁にトイレに行きたくなる
ああ…ナプキンを変えたい
なのに誰もかれもがアリスに挨拶をしたがった
そして今回自分がここに呼ばれた
元凶のお見合い相手とお祖父様が
この広場に戻ってくる前に
何としてでもトイレに行っておきたかった
それなのにふと窓を見ると
正面玄関前のピロティ―に
ロールスロイスのシルバーシャドーと
黒のリンカーンが横付けされた
また新たな客が来た
アリスはため息をついた
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