【R18】堅物敏腕ボスと初恋の君の運命的な再会~父の会社を買収した憎いアイツは幼い頃に一緒に暮らした大好きなお兄ちゃんだった~

星キラリ

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chapter16 何度も君に恋をする

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【兵庫県 芦屋 】




兵庫県は芦屋の超高級住宅街「六麓荘町ろくろくそうちょう」は
古くは近代日本の礎を築いた関西の財界人
そして現在では経営者や
弁護士医師団などが主な住人だ



誰もが知るような有名人の邸宅もあり
日本でも有数の成功者が集まるのがこのエリアだと言えるだろう



その山間地域一帯の中でも一番上のジャコビアン様式の壮大な屋敷は
日本でも歴史の古い国際的な宝石商(ITOMOTO)の四代目会長「伊藤政宗いとうまさむね(79歳)」の屋敷だった




そして今伊藤政宗の孫娘
アリスは屋敷のリビングに座り
膝に乗せた刺繍に意識を集中しているフリをして
下を向いていた



母親の「琴子」はイライラとリビングの
窓の傍を行ったり来たりしている




母の愚痴はいつものことだ
母は世の中のすべての事が気に入らない



しかしその聞きなれている愚痴も
生理二日目の今は免疫ができず
吐き気がして胃が沈み込むような
奇妙な感覚に襲われた





「姿勢が悪いわよ」
   



琴子はアリスを冷めた目で見つめ言った





「直しなさい」





下腹部が重く痛むけど
アリスは背筋を伸ばした
琴子がタブレットを取り出して画像を見せた





「お見合い当日のあなたの振袖よ
京都の呉服問屋から吉祥文様が届いたわ
この後ヘアスタイリストが3時に来るから
打ち合わせしなさい
子供っぽすぎないようにね
あなたの風貌はそれでなくても24歳にもなって
女学生みたいなのですから 」




琴子はそう言ってアリスを眺め片方の眉を上げた




生理なのに・・・
着物なんて・・・・




途端にアリスは今週末の
淡路島での父の謝恩会の付き添いという
名ばかりの「お見合い」を思って憂鬱になった





「今度のお見合い相手は珍しく
骨のある方のように見えるわね
なんでもアメリカで成功された方だとか
写真を見た所扱いにくそうだけど
お祖父様がたいそう気に入ってるわ
ここらへんで決めなさい
前回の人みたいにハゲてないだけいいじゃない 」




母琴子は50歳という年齢の割には若く美しかった
もっともかかった美容整形代は
一軒家が買えるぐらいだろうが
それでも優美な顔立ち
豊かな黒髪と白い肌は健在だ




一方アリスは父親似の髪は栗色、肌は色黒で
背は小さく母の言う通りおぼこい




母からテーブルにポンとA3の皮の背表紙の
見合い相手の写真を放られる




「私はまだ誰とも結婚するつもりはありません・・
お母様・・・  」





アリスはなるべく感情を表には出すまいと
務めて言った


 

「私があなたの年齢ではもう結婚していましたよ
結婚したい、したくないの
あなたの意見など聞いていませんよ
松下様の資産とうちの資産と合わせたら
それはそれは人もうらやむような
莫大な資産が手に入るわ」




琴子はそっけなく言う





アリスは夫選びに関しては資産など興味なかった
それなら発情したネズミと結婚するほうがマシだった





「ですがお母様・・・
労働をし汗を流して
その対価を得られる喜びがあると聞きます
私は結婚する前に世の中に出て
一度でいいから社会経験というものを経験したく―」





パシンッと部屋中に音が広がった




母がアリスの右頬を思いっきり叩いて黙らせた



あまりの驚きに
アリスの口がアルファベットの「o」の形になる





「この私わたくしに働けと言うの?アリス」





小さい頃はよくこの母親に折檻されたものだが
さすがにアリスは大人になったこの
歳にもなって右頬を叩かれることに意表を突かれた
 
 


「思いあがるのもいいかげんにしなさい!
その自分で金銭を稼ぎたいという低俗な欲望が
未来の求婚者を遠ざけているのですよ!」





アリスは叩かれた右頬を抑えて
母親を睨みつけた





「生意気な子ね・・・・
育て方を間違えたわ 」






部屋は静まり返っていた
琴子は表情を変えなかった
まばたきひとつもせずアリスを見つめていた




高圧的な中堅の母親と反抗的な若い娘との
無言の戦いが繰り広げられているかのようだった






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