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chapter16 何度も君に恋をする

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竜馬はメビウスビルの30階にいた
ジムのIDカードをスキャンし中に入る



ロッカーでトレーニングウェアに着替えて
トレーニングシューズに履き替えた





今夜は疲れているが
今や運動しないで寝ると夜中に必ず起きるのだ





今は夜中の11時・・・
こんな時間には誰もいない



トレッドミルの横に行き
動くベルトの両側の枠に足を乗せ
セイフティクリップをシャツに留める




次に運動の強度を設定する無理はなしない






キラキラ輝く全面ガラス張りの
大阪の夜景を見ながら
ゆるい傾斜で早歩きをしてみて
今の自分のレベルを知り
少しだけ負担をかける





竜馬は自分の体をチェックした





脚、 よしっ!
呼吸、よし!
心拍、よし!




もう少し・・・ペースをあげる

走りながらこれからの
メビウスの事業展開を考える



もっと事業を拡大しないと・・・







まだまだだ!
もっと!


もっと!もっと!


もっとだ!!

  




その時パチッと誰かにボタンを押された


ベルトがスローペースになり
途端に腕が四方八方に向かっていく
あわててこけないように手すりをつかみ
頭がコントロールパネルに
ぶつかるのを食い止めたものの
足はゆるいベルトに合わせて動きつづけた





「くそっ!やめろよ!宗一郎!」





竜馬は怒りの声をあげスイッチを切って
飛びおりた




「やりすぎだぞ 」




宗一郎が竜馬の横のベンチに座って
竜馬を睨む
彼はまだスーツ姿だ





「お前こそ仕事してたのか?」






宗一郎はここぞとばかりに竜馬に長々と説教をした
ここ最近でのメビウスの業績アップに伴う
無茶な組織改革、
顧客の整理、大口クライアントだけに絞る
戦略などなど





「しかたがないだろう・・・・
ジャスティンの残した会社を
潰すわけにはいかないんだ
大きくしていれば安心する 」






タオルで汗を拭きながら
竜馬は言った



そのためには何年先もの戦略がいる
今度行われる国際的な宝石商(ITOMOTO)との
チャリティーイベントもそう



宗一郎は鋭い目で竜馬を睨んだ




「洞察力のない者の眼ならごまかせるが」





宗一郎は小さくため息をついた







「今のお前は自分の手中にないものだけに
気持ちを向けすぎている
だからこそ謙虚になれるんだろうが
でも今は一歩下がって自分が持っているものを味わうべきだ」






その言葉を聞いて
竜馬は本当に欲しいものは何一つ持っていないと
叫びたかった





しかしそれを宗一郎に言うのは
間違っているとわかっていた







「竜馬・・・・ジャスティンはお前のせいで
死んだんじゃない・・・
半年の命と言われてお前と会って
一年も生きたんだ・・・」







ジャスティン・アレンは
日本の地を踏んだことは
なかったがここの頂点に立つ二人の男はたしかに
ジャスティンが残した力に包まれていた





温かく頼りがいのある手に包まれている気分だった


しかし今は宗一郎の言った言葉が面白くない
面白くない宗一郎が続ける





「お前はジャスティンを何とか生かそうと
躍起になっていた
彼の死を受け入れたくなかったんだ
でもジャスティンは・・・知っていた
死を受け入れて最後までお前の役に
経ちたかったんだ 」





「竜馬・・・・人には
自分でさえもあらがえない
神様の決めた寿命があるんだよ」  





しばらくの沈黙の後
竜馬は考え込んだ





ジャスティンが息をひきとった時は
自分は彼の横で寝ていた
  




もし・・・
あの時自分が目を覚ましてさえいれば・・・・

いや・・・
そもそも寝るべきではなかったんだ・・・・
 




自分が何年も前の出来事を
ウジウジ悩んでいるなんて思われたくなくて
宗一郎に顔を向けることができないまま言った






「わかった風な口をきくじゃないか
どうしてお前にそんなことがわかるんだよ」







二人は大阪の夜景をしばらく
じっと見つめた





宗一郎リラックスルームからとって来た
ミネラルウォーターを一口飲んで唐突に言った







「母親が・・・・癌なんだ・・・
しばらく休みがほしい」







宗一郎は無表情で言った
竜馬は口を開いたものの言葉は見つからなかった

しばらく無表情の宗一郎を見つめていたが
根ほり葉掘り聞く必要はなかった
大事なのは宗一郎の言う通りにしてあげることだ






「わかった・・・
僕に出来る事は何でも言ってくれ 」






竜馬が宗一郎のミネラルウォーターを 
取り上げて一口飲んでまた返した







「ああ・・・・
これに関しては俺は良い手本を見せてもらったからな
ジャスティンは幸せだったと思うぞ 」








だけど死なせたじゃないか・・・・







そう反論したかったが
竜馬はやめといた





しばらく二人で窓の外の夜景を見つめる
お互いの呼吸を感じていた
  

不意に切なくなった
どうして大切な人ほど亡くしていくんだろう

宗一郎が竜馬の肩をギュッと掴んだ








「お前ほど献身にできないかもしれないけど
神様が決めた寿命がつきるその日まで
母の傍にいてやるつもりだ」










:*゚..:。:.   .:*゚:.。







  .:*゚:.。






カチッ・・・・・・










二人の遭遇まであと465日・・・・・・・
:*゚..:。:.   .:*゚:.。








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