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chapter16 何度も君に恋をする

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「ハナ!!」




竜馬は腕を組み
1メートルの距離感を挟んで
金色の小さな小悪魔を睨んで言った




金色の小悪魔は怒られていることをわからず
茶目っ気たっぷりの目で
竜馬に尻尾を振っている


遊んでもらっていると思っているのだ




物のみごとにしっちゃかめっちゃかにされた
リビングを竜馬はため息をついて眺めまわす




ハナはこの数日間で10個のティッシュの箱の
中身を全部出し、それをぶちまけて
観葉植物をなぎ倒して床を湿った土だらけにし
おまけにその上で十分楽しく
転げまわったものだから


ソファーと床、廊下、壁のいたるところに
ハナの背中についた泥がこびりついていた



新しいインテリアで漆喰塗りだと言い通そうか





そしてソファーの背にひっかけていた
竜馬のダンヒルのビジネスワイシャツを
ビリビリに引き裂いて布状にして
それをおもちゃにして遊んだ



さらに皮のソファーと
椅子の足は全部ハナの歯形がついて
リモコンのボタンのゴムの部分が
欠けてなくなりボタンが押せなくなっていた





「どうしてこんなに悪さするんだ!
僕がかたずけている間
ゲージに入ってなさい! 」





プンプン怒って
ひょいと片手でハナのお腹をすくって
リビングの端のゲージに入れる





ハナはゲージから出たくて飛び跳ねている




「ステイ!」





竜馬はきっぱり言って棚から
ダイソンのスティツク型掃除機を出してきて
ブツブツ言いながら掃除機をかけはじめた




ハナが吠えまくる
こんな所に閉じ込められて
不愉快だと訴えているのだ





「ダメだ!今日はバツとして一日ゲージから
出さないからな! 」






ゲージにいるハナに向かって
人差し指をかかげて睨む
そして壁の土の汚れを雑巾でふき取る作業に入った




ハナが吠える



もう我慢の限界!
こんな所に私を入れるなんてひどいじゃないの!
もうここから出してくれてもいいんじゃない




と訴える吠え方だ






「ここで甘い顔をするから
コイツは同じことをするんだ・・・
ここは心を鬼にして・・・ 」






竜馬がブツブツ言いながら
あの可愛い小悪魔を見ないようにして
かたずけ作業を続ける





ハナが「いいかげんにして!」と
またひと吠えした
前とは違う声だ
竜馬を思い通りに操るための吠え方を
彼女はいろいろ揃えている




悲し気な・・・
かん高い仔犬の鳴き声はハナの奥の手の一つで






「パパ!!助けて!!」





の意味だ
悲痛な鳴き声をキャンキャン出している



操られているとわかっていても
その鳴き声を聞くとつい可哀そうで
従ってしまう




ふき取り作業中でも
ついその鳴き声に気を取られてハナを見てしまった







「キャンッッ!!パパ!こんなことしないで!!」



とハナが悲しそうな声で鳴く







竜馬とハナは見つめあった







2分後竜馬は
ハナをゲージから出した




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