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chapter16 何度も君に恋をする
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しおりを挟む「確認しますがこの会議には
最大限の守秘義務が課されていますか?」
「もちろんです 」
竜馬は社長オフィスで
秘書の江藤に向き合って言った
「それなら正直に言おう」
秘書歴30年秘書室長の
江藤・ユンジン・米子は
スーツ姿で目の前を歩き回る
松下竜馬をさりげなく眼鏡越しから見つめた
オフィスの壁一面の窓は遠くは淀川まで見渡せ
文句なしの背景となっている
その景色と同じぐらい自分の新しいボスは
ゴージャスだ彼も眺めも
いとこのパク・ソジュンから定年前に是非にと
推薦状をもらってこの会社に社長秘書業で
務め出したのは悪くなかった
そしてこの数か月一緒に働いた
アメリカからやってきた
若く魅力的な最高経営責任者C E Oは
仕事一筋のようだ
秘書歴30年の江藤はいつでも仕事に
プロフェッショナルを求める事業家の元で
やってきたがこれほど冷淡な提案をする人物は
お目にかかったことがなかった
「僕はこの事業で大きな成功を収めましたが
さらに高みを目指したいと思っています
考えたんですがこの度新しい部署を作る事にしました 」
「かしこまりました 」
「そのためにも(販売事業部設置)のために
ある一族に目をつけています
その一族のためにチャリティイベントを協賛したい」
竜馬の滑らかな額に皺が寄った
その事で頭がいっぱいのようだ
江藤はノートパソコンの隙間から彼を伺った
たしかこの仕事を紹介してくれた
いとこのパク・ソジュンの話ではボスは
優しい心の持ち主だと聞いていたが・・・・
今はハンサムな野心家のロボット人間のように見える
いとこは誰かと間違えているのではないだろうか
「何か問題でも?」
竜馬が江藤の方を見て
怪訝に目を細めた
「いいえ 」
江藤は眉一つ動かさず無表情で答えた
心の中で思っていることをボスに
見透かされるなんてプロの秘書として失格だ
「具体的にはどのようなチャリティをお考えで?」
江藤は話を戻そうとして尋ねた
「僕としては投資と人員削減のメビウスが
新しく販売事業部と広告マーケティング部を新設すると
世間の注目を集めるものであれば何でも構いません」
「かしこまりました、期限は?」
「二か月以内といった所でしょうか?」
驚いた江藤の眼鏡がキラリと光った
「わたくしに奇跡を起こせと?」
今度ばかりはさすがの竜馬も口元を緩めた
「そう願いたい
でないと効果が薄れます
ソジュンのお墨付きの鉄壁の秘書殿には
出来ないことなど何もないと聞いています」
ハンサムな上に口もうまいぼうやね・・・
江藤は答えた
「やってみましょう 」
その時社長デスクの電話が鳴り
江藤が一息つけると胸をなでおろした
「宗一郎か?」
インターフォンを押すと声が聞こえた
「依頼していた弁護士から
契約書が送られてきた
目を通さないといけない」
竜馬が江藤に説明した
「ちょっと失礼させてもらう
あなたはここで仕事を続けてください」
「かしこまりました」
竜馬が出て行ってから
ホッとした江藤は社長オフィスを見渡した
このCEOオフィスは簡素で
個人的なものがまったくない
家族の写真もなければ
友人と一緒の写真や
額縁なども飾っていない
観葉植物さえもなくこれほど温かみのない
環境は今まで数々のオフィスで
働いてきた江藤も珍しい
つい最近社長がオフィスに導入した
「フレキシブル・ワークスペースシステム」のせいだ
彼は仕事に個人的な情熱や感情はまったく
必要ないと考えている
それゆえに成功しているとはいえ
あまりにも無慈悲な経営者はどうしたものか・・・・
どうやらこのCEOに慣れるのは大変らしい
今夜にでもソジュンに電話しようと
江藤は思った
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