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chapter16 何度も君に恋をする

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「せ~の・・・・ 」

「よいしょ~!! 」

「よいしょ~!! 」





幹部団が鏡開きの樽に掛け声をかけて蓋を割っている

新オフィスビルお披露目パーティーでは
大勢のスタンド花に取引関係会社の人達で
ごった返していた




「・・・・文也・・・・
あれは何をやっているんだ? 」





竜馬が文也に聞く




さきほど
「CEOもご一緒に!」と幹部団に言われたが
何か怪しげだったので竜馬はかわりに宗一郎に行かせた


宗一郎もわけがわからず周りをキョロキョロ見ながら
木槌で蓋をコンッと軽く叩いただけで
あとはずっと突っ立っている




「鏡開きさ
お祝いの象徴といえば
酒樽に木槌で「よいしょ!」の掛け声だよ」





「何のために? 」





目を細めてどうしてもバカ騒ぎをしているようにしか
見えないと竜馬は幹部団から視線を外さず言った




「スポーツの優勝シーンや
著名人の賞受賞のニュースで見たことない?
日本ではお祝いする時に縁起をかついでするんだよ」




文也は忍耐強く答えた





「縁起とは?」




竜馬が咎める目で文也を見る





「説明するのに日が暮れるよ」



文也が肩をすくめた



文也は竜馬と宗一郎と同じく
やはり有能そうな雰囲気を出してはいるが
この二人ほど人を怖がらせるような感じではない




「それにしてもすごく身長が高くなったね
竜ちゃん・・・
みんな竜ちゃんと宗一郎がデカいからビビってるよ」




感心したように改めて竜馬を見る





「アメリカの食い物がよかったのかもな」





フッと竜馬がセドリックとマミーを思い出し
微笑んだ

慈しむことと育む事にかけては天性の才能がある女性
マミーにかかれば何でもデカくなる

現にマミーの畑のきゅうりはスイカほどある




文也がスマホを見ながら竜馬に言った





「竜ちゃん今日うちに来れる?
・・・母さんが今夜食事に寄ってくれてって
今line来た」



「気持ちはありがたいが
あまり慣れあうつもりはないよ 」





竜馬は最後に母の妹の久美子に会った時の
ことを思い出していた


あの頃の久美子は犯罪者となった
姉の子供(竜馬)と自分の子供(文也)を
あまり関わらせたくなかったのだろう




現にアメリカに渡ってから
ホームステイ先のカルロスに連絡していたがどうか
知らないが

竜馬がアメリカにいた時は久美子他竜馬の身内からは
一切連絡がなかった




ところが竜馬が日本で事業を起こそうとした時
どこから噂を聞きつけたかは知らないが
突然叔母の久美子(文也の母)から
竜馬の会社宛てに手紙が来た



その手紙には家計が苦しいから
文也を雇ってほしいと書かれていた
最初はどうしようか悩んでいた竜馬だったが
実際文也を雇ってみたら彼はよくやってくれた


新天地日本での事業興しに
やはり現地地元に詳しい文也は
良い竜馬の相談相手になり
シカゴと日本を行き来する厳しい環境の中
泣き言一つ言わずに竜馬と宗一郎のために働いてくれた


そして太陽のような希望の
ジャスティンを亡くした竜馬の心を
明るい性格の文也は癒してくれた



文也は見事メビウスのために献身的に働き
正々堂々と竜馬の信頼を仕事で得た


そして宗一郎と満場一致の意見の元
始まりは使えなくてもしょうがないと思っていた

縁故採用でも
企画部長としてメビウス幹部の地位を
見事勝ち取ったのだった







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